まっちうりのしょうじょ

むかーし、むかし、あるところにマッチ売りのアードウルフがおりました。


「どなたかマッチ・・・、マッチを買ってくれませんか・・・?」


行きかう人々にそう声を掛けますが、誰一人として、買おうとする人は現れませんでした。

マッチを売らなければ家に入れてもらえないのです。


今日もマッチを路上で売ります。

この日はクリスマス、雪も降っていました。


アードウルフの前をある紳士が通りかかりました。


「マッチはいりませんか・・・」


「ん??」


その紳士は目を細め彼女を見ました。


「いくらかね」


「えっと...」


アードウルフは考えました。

主人からは50ジャパリコインで売れと言われました。


(倍にして売っても・・・、バレない・・・)


「100ジャパリコインです」


「お嬢さん、私を騙そうとしても無駄だぞ」


その言葉にドキッとしました。


「この私は、歴史あるヘーゲン一家の

へーゲン=フランソワ=ヘラジカ3世だぞ」


「え...、へーゲンって...」


アードにはその名前に聞き覚えがありました。

この街でも有名な、マフィアのボスの名でした。


何をされるかわかりません。


「全箱100ジャパリコインなワケないだろう!!」


「ごめんな・・・、えっ??」


懐から札束を出し、アードに手渡しました。


「その籠を全部貰おう」


彼女の手から籠を受け取ると満足気に帰って行きました。


「あ、ありがとうございます!」


「明日もマッチを売ってくれ」



主人の元へアードは帰りました。

しかし・・・


「全部売れた?嘘でしょ?」


主人のカラカルは驚いた目でアードを見ました。


「いや、本当です。この札束が・・・」


札束だけ取ると、彼女は


「アンタがいると邪魔だから売れないマッチを売らせたのに・・・」


「えっ・・・」


そう捨て台詞を吐き、ガチャッと閉めました。





(何なの・・・、あのクソババア・・・)


アードは怒り心頭でした。


脳裏は復讐したいという気持ちでいっぱいです。


(・・・!!)


昼間マッチを売った場所に戻りました。


そこで、あの人物を待ちました。





「おや、どうしたんだい?お嬢さん」


「・・・私を入れてください」






その日を境に、アードウルフは闇の世界へと入ることになったのです。



銃の扱いや、危ない取引を何度も間近で見ました。


それは・・・、自分を見捨てた主人への復讐のためです。




「本当に・・・、やるのか?」


ヘラジカは真剣な眼差しで尋ねました。


「このためだけに私はやって来たんです。

もう・・・、後戻りはできません」


「・・・好きにしろ」




この日はクリスマス。


一年前、彼女が捨てられた日でもあります。

表通りはカップルが幸せそうに行きかいます。


ただ一人、路地裏で冷たいレンガに寄りかかり、

煙草に火をつけると、咥えたまま、廃墟のアパートの階段を登った。


その一室から双眼鏡でターゲットのいる部屋を覗く。


カラカルの姿とともに、黄色の髪の何者かが居る。


「あのクソビッチ・・・!!」




二人は■■■を行っていた。


「ハァ・・・、いいわねぇ・・・」


刹那だった。


「うみゃっ...」


馬乗りになっていたはずのサーバルが

唐突に横に倒れた。

頭部からは血を流している。


「きゃああっ!?」


バンッ


「お久しぶりです、ご主人」


アードは拳銃を構えた。


「お、お前っ...!!」


「私はずっとあなたに復讐するために生きてきました。

今ここで・・・」


懐からマッチを取り出した。

そして擦った。




「あなたの人生は終わりです」


彼女の目の前に業火が広がった。












それから数年後。

アードウルフは、ギャングの王になり裏世界を

生きることとなったとさ・・・。


皆も他人には、優しくしてあげようね!


めでたしめでたし・・・。

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