Act:1-4

 ショートブレッドの小さなカラフルな欠片。

 ドライフルーツというらしい。

 ショートブレッド、フルーツ味。超、美味。


 とっても気に入ったので1ダース(1袋2個入りを12個)もらった。

 ほくほく。

 まぁ、添加物なしらしいので、栄養はお察し。

 おやつ以外の何者でもないらしい。

 それでもほくほくだが。


---・- ・・-・・ ・・・ ・・・- ・・ -・--・ 


「いや、まぁ……ほんと……食文化やばいな。お前」

 呆れたように言うナユタ。

 それに俺は目を瞬いた。


 まぁ、確かに。

 言われてみればそうかもしれない。


 俺限定の話ではなく。

 アンドロイドの食文化全体が、である。

 つか、俺なんかはマシな方である。

 だって違法とわかってても闇露店に足げなく通ってるし。

 

 大部分のアンドロイドはショートブレッドだけなのだ。

 だって配給品はショートブレッドだけだし。


 といっても、配給のショートブレッドは栄養を添加しまくってるので、まぁ……

 健康には問題ないらしいのだけれども。


 しっかし、味にはどうも……ねぇ?

 いや、うまいよ? ショートブレッド。

 でも、ねぇ?


 飽きるのである。

 毎日3食ショートブレッドは流石に飽きるのである!


 だから、俺は悪くない。

 ……いや、悪いけど。違法としって手を出しちゃってるし。

 良いこのみんなは、法律や約束事は破ってはいけないよ?

 俺はこんなんだけど、違法に手を染めることを推奨しているわけじゃないからな!


 まぁ、其れは置いておいて。


 この施設に存在する生産プラントは脅威と。そう、一言で片づけられるものではなかった。

 なんせ、この星ではすでに絶滅したと思われていた有機生命体が存在したのだから。

 いわゆる家畜。

 牛、豚、鶏、羊……

 それに、多種多様な動物。

「え、何種類いんの」

「さぁ? 千は軽く。改暦前のこの星に存在した動物を確保したけど……まぁ、巨大な動物園程度だよなぁ……ほんとは全種類確保したかったんだけどなぁー」

「ドウブツエン、程度っすか」

「見たことあるやつもいるだろー?」

 なんて気のない声で問うナユタ。

 それに俺は肩を竦めて力なく笑った。

「いや、どれもこれも、初めて見る」

 もう、この星の有機生命体は、絶滅したらしいから。


 震えて、ちゃんと言えなかった言葉。

 それでもナユタには届いたらしい。

 目を細め、ナユタは考える素振りを見せた。

「そうか……」

 ちいさく、零して。


「そういえば」

 だが、まぁ……。

 俺は長くしょげるつもりはなかった。

 うん。やっぱ俺もアンドロイドだしね。

 基本的にはお気楽なバカたれなのである。

 つか、こんなけ動物が、いるのだから。

 書物で書いてあったアレが本当なのかめっちゃ気になる。


「ウシという動物の肉はうまいらしいけど……!」

「……あぁ、お前らってそういうやつだったよな。結局食いっ気かあ……」

 肩を落として盛大にため息を吐かれた。

 だが気になるのはしょうがない!!

「しっかし、だ。俺が思ってる以上に……この世界の食文化はアレな感じになったんだなぁ……」

「アレって言われると悲しい。……有機生命体が絶滅して久しいしなぁ。……俺とかマシな方と思うぞ」

「マシ、なのか」

 驚きというか、呆れというか、困惑じみた表情を浮かべている。

 が、まぁ。わからないまでもないんだけどな。

 ナユタにとっては、この光景が当たり前なのだろうし。と。

「そういえば、ここのドウブツって、管理してるのか? ウシとか、家畜って人の手がいるんだよな?」

 ナユタは自分で出れるとはいえシリンダーにいたんだし、そもそも文献では一人でできるようなものではなかったはずだ。

「あー。機械化してるし、機構天使もいるし、なぁ」

「キコウテンシ?」

「見た方がわかりやすいかなぁ。俺を模して作ったからくり人形……ヒューマノイドといってもいいけどなぁ……」

 なんていいつつナユタはなにかを手繰るそぶりを見競る。

 すると

「お呼びでしょうか。マスター?」

 どこからともなくアンヘルが一人、顔を出す。

「アンヘル?」

「おや、アンドロイドの方ですか」

 目を瞬かせたアンヘル……つか、ナユタが言うには機構天使か。

 ん? こいつは俺のこと知ってるのか。

「お初お目にかかります。私のことはコトハとお呼びください」

 と名乗るコトハ。

 あ、やっぱり初見だった。

 青い髪を肩に届く程度に伸ばした彼女。

 翡翠の瞳はアンヘルらしく感情が一切感じられない。

 淡々としたクールビューティー。

 なんだ、けど……

 ナユタの前だと霞むなぁ……

 意外。

「……録でもないことを考えていると思われます。マスター、射殺しますか」

「いや、殺しても肥料にできないしほっとけ」

 さらっと殺害を提案するアンヘルに見も蓋もない否定をするナユタ。

 こいつらコワイ。

「肥料にできるなら殺されてたのか……」

「ん? 死にたい?」

「死にたくないですごめんなさい」

 速攻で否定しなきゃ殺られる。

 そんな予感のもと俺は平謝りするしかなかった。


「つか、アンヘル……じゃないか。機構天使ってお前の配下なのか」

「んー……別に、俺が統括してるわけじゃないんだけどな。機構天使を作ったのが俺ってだけで。あー……アレだ。お前らにとっての神みたいな位置じゃないのか? 創造神ってやつ?」

「神、なのか?」

「元、神様だよ」

 ウケケ、と笑んでナユタがくるりと身を回した。

 元、神様? なんじゃそりゃ。

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