第58話 好と三鶴城輝夜
「巫山戯んなよマジで殺すぞお前」
「直球だなお前」
「当たり前だろ。何で騙した」
俺の自室にて。
腕組みをした火矢と一対一で話していた。
目をクワッとさせてマジで殺すという感じの目をしている、火矢。
かなりおそろc。
「.....いや、騙すつもりは無かったんだ。マジですまん。いつかこの事は話すつもりだった」
「いつかは話す?だけど遅いと思うんだが?」
「いや、うん。そうだな.....」
火矢に思いっきり責められる様にガン見される俺。
いやまあ確かに言われればその通りだな。
俺はその様に思いながら、火矢を見る。
って言うかオイオイ。
男子小学生に問い詰められる高校生って。
何と言うか、立場逆転だな。
しかし.....。
「....火矢。でもな」
「.....何だ」
「どれをどうとってもお前の事を瑠衣は好きになった様だ。だから.....頼むぞ。お前は良いやつだから.....な?」
「.....和樹に言われなくても.....大切にする。瑠衣の事は.....」
赤面で話す、火矢。
俺の自慢の義妹なんだから当たり前だそれは、と俺はツッコミを入れる。
すると、火矢は窓の外を見てから話し出した。
「.....俺を瑠衣が好きになったって事が信じられない」
「.....俺も瑠衣がお前を好きになったという事が信じられない」
マジでな。
と付け加える。
火矢は俺に向いて、そして俺の目を見据えた。
「.....この中でいちばんに感謝するべきはお前だな。和樹。瑠衣の事を好きにならせて、じゃ無い。これまでの事を有難うな」
「.....は?お前が感謝の気持ちを言うなんて珍しいな。気持ちが悪い」
「マジでぶっ殺すぞ和樹」
それは困る。
俺は苦笑しながら、火矢を見た。
すると.....いきなりだ。
ドアがドドドと開いて。
思いっきり人がなだれ込んで来た。
俺達は驚愕する。
「押すなって言ったのに」
「押してないから!」
「何もしてないからね!?和樹くん!」
真っ赤に赤面した、莉緒と瑠衣。
そしてみんな正座する。
よく見ると、火矢は震えていた。
「.....る、瑠衣に聞かれた.....!?」
真っ赤の真っ赤に赤面する、火矢。
瑠衣はモジモジしながら、見上げつつ火矢を見ていた。
「.....あー、何だ。その」
「.....あ、合わせる顔がねぇ.....」
逃げたい様だが、逃げる場所が無い。
その様な感じだ。
俺は苦笑しながら、聖良を見た。
「趣味が悪いな」
「.....まぁ、瑠衣がどうしても不安だからって」
「.....そうか。聞いた感じだ。火矢を真面目に好いている感じだ」
「わ、私、この場に居ても良いの?」
まさかの事態に莉緒は小っ恥ずかしい様だ。
俺はその姿を見ながら、聖良と苦笑し合った。
そして目の前を見つめる。
「.....改めて、宜しく。火矢くん」
「.....いや、うん.....」
「あはは」
瑠衣と。
恥ずかしがる、火矢。
こうして、俺の義妹は俺の手下の火矢と付き合う事になった。
全ては順調にいくかと思われたが。
病院に居た未知瑠さんから電話が掛かってきた。
その内容を聞いて俺はゾッとする。
まさかの内容だった。
『好が.....病院から居なくなったんです!』
☆
直ぐに俺は家を飛び出した。
火矢と聖良、瑠衣、莉緒も状況を理解してくれて探してくれる。
しかし。
ちょっと待ってくれよ。マジで何がどうなっている。
俺はその様に思いながら、好の居場所を探す。
マジでどうなっているのだ。
この様な事態は初めて過ぎて頭が追いつかない。
「.....いきなり失踪するなんてどういう事なんだ.....好!」
「おい!和樹!」
「何だ谷!俺は忙しいんだが!」
向こうの方から谷がやって来た。
その谷に怒り気味に答える。
谷も焦っていた。
病院を抜け出す様な奴じゃ無かったと。
その様な感じで、だ。
「日が沈んで.....もう時間が無いんだよ.....谷.....!」
「.....大丈夫だ。最終手段を取ったから」
「は?最終手段.....」
谷の背後を見ると。
大勢のクラスの女子が居た。
ちょっと待てコラ。
こんな時にこのバカは何をやってんだ?
「.....取り敢えず、クラスの女子全員を集めてきた。人手を多くした方がいいかと思ってな」
「.....は?」
すると、少女達は手を上げてそして叫んだ。
三月、聡美、.....よく見れば里奈も居た。
俺は其奴らに見開く。
「「「「「協力するよ!みんな!」」」」」
「「「「「おー!」」」」」
一体、どういうこった?
俺はその様に思いながら、谷を見る。
女子達の連絡網作戦だぜ!
と呟いた。
「.....久しぶりだね。和樹くん」
「.....里奈.....」
「でも焦っても見つからないよ。ここは.....急ぎつつ焦る気持ち無く探す。それが大事だから」
そして全員、忍びの様にバラバラに散った。
俺は驚愕しながら、頷く。
こんな事で女子達が強力になるとはな。
「.....谷。有り難う」
「なんの。取り敢えず日没までには探し出すぞ」
☆
「見つけた!」
「こっちだよ!」
好と誰か居るその場所は.....所謂、河川敷。
俺達の通学路だ。
だけどもう真っ暗だ。
「.....ハァハァ.....」
「.....和樹.....」
「.....何故、一緒にお前が居る。三鶴城」
ちょっと待ってくれ。
これは謎の展開だ。
何故か、河川敷には三鶴城輝夜が好と一緒に居る。
どういう事なんだこれ?
輝夜はその場から立ち上がった。
「.....私が見つけたから.....連絡しただけ。ただそれだけだから」
「.....でもお前なりには協力してくれたんだよな。輝夜」
「.....違う」
その様に呟きながら、去って行く。
そんな去って行く肩を掴んで、有り難うと呟いた。
三鶴城輝夜はそのまま去って行く。
「.....その.....気が付いたら.....この場に居たの.....」
「.....多分、治療薬で幻覚を.....見たんだよな。だけど.....マジで良かった.....」
俺は病院着の華奢なその身体を抱きしめて。
そして涙を溢れさせて号泣した。
マジで良かった.....。
「.....ゴメンなさい.....帰ろうと思ったら輝夜ちゃんが居たから.....」
「.....一体、何を話していたんだ?」
「.....良い子だよ。あの子。和樹の事を、輝夜ちゃんの事を話していたんだ」
「.....だけど遅くなったら戻って来いよ。マジで心配だった」
御免なさい。
その様にポツリと呟く。
好の顔に付いた、身体の泥を拭きながら叱責する。
頼むから、と。
「マジでどうなるかと思ったぞ.....」
「.....ごめんなさい.....ごめんなさい.....!」
俺は再び強く抱きしめた。
彼女の身体を、だ。
好は静かに泥だらけの手で俺の背中に手を回してきて抱き締めてくる。
涙を流しながら、
「和樹!」
河川敷をドダダと滑り落ちながら音を立ててやって来る、泥だらけの谷。
俺は谷に直ぐに向いた。
此方に駆け出して来てああ良かったと呟いている。
「谷か.....ようやっと見つかったぞ.....」
「.....ごめんね.....谷くん」
「.....流石に突然居なくなるのは困るぜ.....な?好」
谷も流石にかなり苦笑気味。
俺は好の顔を見て、そして頷く。
間も無く、好の両親の車がドタバタとやって来た。
乗せる時に俺は河川敷の道を見てから。
訝しげな目で遠くの先の方を見た。
三鶴城輝夜の事を気にしながら、だ。
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