第51話 ラブラブコンテスト

恋実神社(こいみじんじゃ)。

可愛らしい名前でこの街に古来から有る、恋が実るとされる神社の事を指す。

その神社に向かっている、俺達。


あの潮風に当てられている桜の木が樹齢1000年。

600年の差が有るが、恋実神社は長く有る。

恋実彦摩呂という人間が愛しき者の為に建てたそうだ。


「.....叶わなかった恋か.....」


「.....でも私達はきっと叶う恋だよね」


「.....そうだな」


そうであってほしい。

俺達もこの恋に差が有るから。

差というのは、好の記憶喪失だ。


だけどそれが無い様にするのが役目だと思う。

俺は.....いや。

みんなと一緒の、だ。


「.....好。どれだけあってもお前と一緒なら乗り越えられそうだ。だから.....頑張ってくれよ」


「.....うん。絶対に私は回復するからね。和樹。貴方の為に、みんなの為に!」


好は笑顔を見せた。

例え、傷が有ってもこの笑顔は.....壊したく無い。

そう思える様な可愛い笑顔だった。


「.....マップではあと何分?」


「5分だな。まだ歩けるか?」


「うん。全然余裕だよ」


そんな好の言葉に若干、不安を覚えた。

周りの視界に映る全てを好の脳が取り込み.....情報オーバーになるんじゃ無いかって不安だ。

気を付けないと。


疲れた所を見逃す訳にはいかない。

俺はその様に思いながら、気を配る。


「わ!白い鳩!」


「.....本当だな」


目の前に白い鳩が居る。

アルビノか。

俺はその様に思いながら考える。

その様にしていると横に居た好が突然、鳩に話し掛けた。


「.....君も.....苦労しているんだよね?」


鳩は何も言わずに好を見る。

クルックーと鳴き声を発して、だ。

好は歩道の脇で屈んで、鳩を見つめる。


「.....好。どうしたんだ?」


「.....いや、苦労しているんだろうなって思って。それが私みたいって思って.....なんでかって?白いからね。身体が」


「つまり.....ボッチの点とか、か」


「.....そうだね」


好は少しだけ苦笑しながら、鳩を見る。

飛んで行ったその鳩はよく見ると。

家族が居た様で。


灰色の鳩。

それが家族という事だろう。

仲良くしている。


「.....凄い.....家族が.....!」


好は目を丸くする。

その様子に俺は笑みを浮かべて、飛んで行った白い鳩を見た。

そして好の肩を掴む。


「好。お前もきっと、家族が出来る。一人じゃ無いんだからな」


「.....和樹.....」


すると。

そんな俺の肩に置いた手を好が優しく握ってきた。

そしてナデナデしてくる。


「.....そうだね」


「.....ああ」


俺達は去って行く鳩を見る。

そして手を繋いで、頷きあって笑みを浮かべて。

恋実神社まで歩き出した。



「.....この階段の上か」


「久し振り.....って事かな。私の.....アルバム見てるとね」


「.....久し振り?」


「.....うん。和樹の事が好きだったみたいだよ。昔の私も」


俺は、少しだけ恥じらいの笑みを浮かべる。

そうなのか、と思いながら。

すると、好が俺の腕に腕を絡めてきた。


「.....今も昔も君とは運命だったんだと思う。有難うね。和樹」


「.....その点は俺は何もしていないからな.....」


「.....君の存在だけで.....もう色々とお世話になっているよ。和樹」


好はその様に話して、俺の頬にキスをした。

そして俺を赤くなりながら見てくる。


「.....愛してる」


「.....有難う」


「.....えっと、じゃあ、行こうか」


俺達は恋人繋ぎのまま歩き出す。

そして俺達は神社に辿り着く。

目の前に賽銭箱などが有る、神社。


「.....此処だね。絵馬を買いたいな」


「.....俺が.....」


「だーめ!絵馬は自分で買わないと.....効果が出ないんだから!」


アングリーの好。

頬を膨らませて、腰に手を当てる。


そ、そうだっけ?

長い間来てなかったから.....忘れてたわ。


「.....それに和樹にお金を出して奢ってもらうなんて以ての外だよ。ダメダメ」


「.....まぁ、そう言う、規則なら仕方が無いな」


「そうそう。.....だから、和樹には恋が成就する様に祈ってほしいな.....なんて」


「.....ああ」


俺は柔和に笑む。

その事にモジモジしながら立っていた好は、じゃ、じゃあ絵馬を買ってくるね。

と言って、去って行った。


「.....好.....」


かつて、俺は好に告白して。

瑠衣に告白されて。

全てが複雑になり、今に至った。


まだ複雑に思っている俺は.....どうにかしたいもんだな。

この思いを、だ。

瑠衣とかの事を.....だ。


みんなサポートしてくれているのに俺は。

まだ瑠衣の事も時折思う。

それが駄目だとは思うんだが。


「お待たせ!」


「.....お帰り」


「ハート形に近い絵馬!」


「良かったな。俺達の関係を書こうな?」


うん!と笑顔で俺に向いてくる、好。

俺はその笑みを受け止めながら。

神社を見つめる。


「.....恋成就.....か」


「.....どうしたの?」


「.....どうも。大丈夫だ」


「.....うん。それなら良かった.....」


俺たちはクスクスと笑み合いながら。

恋を成就する為に絵馬に書いていった。

そして、絵馬を括り付けて.....。


「.....じゃあ、お賽銭.....を、と」


「.....そうだな」


お賽銭を入れて、恋を成就する様に祈った。

そしてニコッと笑み合っていると。


「もし」


「.....はい?」


突然、向こうからやって来た神主の様な中年の女性に声を掛けられた。

というか、神主って女性の方なんだな。


その様に思っている俺と好を各それぞれ見る。

俺は首を傾げた。


「.....お二人は恋人同士ですかな?」


「.....あ、はい」


「では、神社の大会に参加しませんかな?」


「へ?」


俺は目をパチクリする。

神主さんが何を言っているのか、分からない。

だが、それを気にせず俺達を見て、そして言葉を続ける神主さん。


「お姫様抱っこで.....その後にそれなりのイチャイチャ度を参加者に見せつけて.....旅行を当てるというもの.....この神社と商店街の企画です。やりませんか?」


「え?ちょっとそr「やります!!!」


俺の声が勢い良く遮られた。

好が興奮気味に参加を言っている。

いやいや、好さん!?


「.....ね?和樹。私達の.....ラブをみんなに見せよ?」


「いやしかし.....!?」


「では、参加希望ですね。有難う御座います」


「え?!いや、俺はまだ何も.....?!」


そして何故か。

俺達は本日開催される、ラブラブコンテストに参加する羽目になった。

ちょっと小っ恥ずかしいのだが。

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