第43話 女子会幹事 和樹

結局、瑠衣は部屋から出て来てくれた。

俺はひたすらに安心したが、俺の顔を見ながら赤面を止めない。

ちょっと俺も恥ずかしいんだけど。


「.....ラブラブだねー」


「棒読みをすんなよ.....聖良」


「ふーんだ。良いなぁ。偶然とは言え、キスって」


「あのな.....」


何つうか、誤解が生まれるから止めてくれ。

と言うか、もう瑠衣は赤面でモジモジしているし!

いや、本当にからかうの止めて、マジで。


谷が帰った後、そして好も休みに入って。

俺は聖良にイジメられていた。

酷いわ!私.....イジメられてる!シンデレラの様よ!

と、乙女風に言える様な感じだ。


「.....聖良。あのな。あれは緊急事態なんだから.....」


「.....ツーン」


「面倒臭い.....」


「.....」


この二人と親父達が帰って来るまで一緒ってのもキツイな。

部屋に籠りたいもんだ。

そういや、アニメを観たいな.....久々に。


「でも.....お兄、楽しめた?私達が邪魔しちゃったんじゃ.....」


「.....デートは十分に出来たよ。お前のお陰と聖良のお陰とかも有ってな有難う」


「良かった。じゃあ.....私達にここまでさせた対価を払ってもらわないとね」


「..........は?」


た、対価って何.....?

俺はその様に思いながら、青ざめつつ聞く。

んー?とニヤニヤする、聖良。


「あ、でも聖良さん。私は.....対価.....」


声がだんだん小さくなっていく。

また、ボッと赤面した、瑠衣。


まぁ確かに.....対価は払われた様なもんだしな。

という事は聖良だけだが.....対価?

対価って何よ?


「.....対価。それはつまり.....クワッ!.....カラオケ屋でたまにやっているクラス女子会の幹事をしなさい!!!」


あー、何と言うか。

クワッとか効果音を言うやつを初めて見た.....って何?


今何つった聖良は。

俺が女子会の幹事って何だ!?


「.....お前は何を言っているんだ.....!?」


「ちょ、ちょっと待って下さい!聖良さん!?どういう事ですか!!!?」


「女子会の幹事。楽しみでしょ?それも.....えっとね.....和樹くんは女子にもかなり優しいから女子のお世話をする執事になってもらいますよ!」


何を言っているのだ聖良は?

ちょっと、全く理解出来ないんだが?

冷や汗がブワッと吹き出す。


「聖良さん!お兄には好さんという彼女が.....!」


「勿論、知ってます。でもただのお手伝い。だから何も起きない.....筈」


そこしっかりしてよ。

滅茶苦茶に困るんだが.....って言うか。

こんな事、絶対に好が認めないと思うんだが!?


「聖良さん!あまりにも曖昧過ぎますよ!駄目です!」


「.....でも、お手伝いだけでも。.....駄目?和樹くん」


「.....対価は対価。払わないといけないから.....やるよ。聖良」


ヒーローにはお世話になったしな。

取り敢えず、恩返しは必要だと思うし。

やるしかない様な気がする.....うん。


「.....分かった。でも女子会の幹事で、手伝いとかだけだぞ。俺には好が居るからな」


「有難う。和樹くん」


「お、お兄.....」


対価を払わないのは何だか申し訳ない気がする。

そう、何も起こらない筈だ。

好への説明にも問題は無いと思うぜ!



「.....で?OKしちゃったんだ?ふーん.....ふーーーーーん.....」


「.....あ、はい」


「.....私みたいな彼女が居るのに?ふーん。女子会。ふーーーーーん」


「.....あ、はい」


翌日に好の病室へ向かった時の事。

俺は床に正座させられ、好は目の前に鬼神の如く立っていた。

目を捕捉しながら、俺を見てくる。


い、威圧感を取り戻しつつ有るな、好ちゃん.....。

俺はその様に思いつつ、青ざめる。


「.....何も起きないんだよね?他の女の子に惚れたりしない?」


「.....や、約束します」


「.....じゃあ、約束のキスして」


「.....ま、マジですか」


そのまま、ピンクの可愛い唇を差し出してくる、好。

俺はその好の頬に触れ、好の唇に唇を重ねた。

暫く抱き合って、唇を離す。


「.....これでお土産買ってきたら許してあげる」


「.....お土産?」


「.....頭に着ける新しいカチューシャが欲しい。.....また、和樹から貰いたいんだけど.....駄目?」


「.....駄目じゃ無いに決まっているだろ。分かった。絶対に買って来るよ」


そうだね.....あ、あと寒いから.....もう一度。

と言って今度は好から俺の唇に背伸びして唇を合わせてきた。

そして離して、俺を赤い頬で潤んだ目な感じで見てくる。


「.....愛してる。だから.....お願いね。絶対に」


「.....ああ。約束だ」


そして俺達はハグした。

好の肩に触れる。

実の所、好の頭に手を触れるのは禁止されているので、だ。

頭を撫でてやりたいんだけどな。


「.....和樹。大好き」


「.....俺もだ」


そして見つめ合い、俺達は笑い合った。

それから数日後の5月25日。

俺は執事として近所のカラオケ店に聖良のご要望で呼ばれる事になった。


「.....滅茶苦茶に緊張するんだが」


「気楽にやったら良いよ。大丈夫。人数はね.....十五人!」


カラオケ店の別の部屋で俺は聖良が用意したコスプレ執事服に着替える。

谷も来たいという事だったが、許可されなかった。

つまり、この場に男は俺しか居ない。


ってか、ちょっと待ってくれ、十五人もクラスの女子が居んのかよwww

俺はその様に唖然と思って冷や汗をかく。

そんな感じで居ると、聖良が柔和に俺を見てきた。


「.....でも、今日は有難う。良い子達ばかりだから.....ね」


「.....まぁ.....うーむ.....」


「.....じゃあ、落ち着いたら来てね」


その様な言葉を残して、聖良は行った。

俺はその聖良を見ながら、盛大にため息を吐いてドアを開ける。

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