第42話 瑠衣、まさかの籠城

二日後の話で5月20日の事。

数週間安静で数ヶ月はあまり過激な運動が出来ない。

それが瑠衣の今で有るが今はその問題は良い。

問題はそこでは無い。


「.....おーい。瑠衣さん?」


瑠衣の自室に瑠衣が籠城した。

その理由は俺の顔を見るのが小っ恥ずかしいという理由。。

何故ならキスをしたから。


俺と瑠衣が、だ。

何処でと言われたら人工呼吸の際に瑠衣は微かに俺を見ていた様で。

確かに呼吸の際に何度も何度もキスをする羽目にはなった。

しかし、瑠衣の命を救う為で有る。


つまり、どう考えても仕方が無かったのだ。

俺はその様に説明したが、瑠衣は恥ずかしいと籠城した。

学校の点とか有るかも知れないが、安静なのでそれは良い。


だが、何時迄も籠城していては健康に悪い。

だから出て来てほしいのだが何かしら方法は無いものか。

と言うか女子って難しいな、俺に平然とキスをする好と同じ様に取り敢えずは大丈夫と思ったのだが。


と思っていると、小さく呟き声が聞こえた。

その声は微かな感じで。

耳をドアに近付けないと聴き取れないぐらいだった。


「.....じ、地震さえ無かったら.....」


「それは確かに分かる。だけどよ、仕方が無いだろお前が池に落ちたんだから」


「でも.....聖良さんでも良かった.....のに」


「だから。俺しか知らなかったんだよ。人工呼吸の事を!」


どうしようも無いでしょうこればっかりは。

その様に思いながら、ため息を吐きつつ頭を掻く。

取り敢えず、瑠衣を部屋から出す作戦を考えないといけない。


この2日、一回も会話せず俺達は過ごしたという有様だ。

つまり.....俺もそれなりに寂しいのだ。

顔もあまり見てないし。


「瑠衣。出て来て顔を見せてくれ」


「.....それはちょっとゴメン.....」


「いや.....ゴメンは通用しないぞ。火矢も心配するぞお前の事」


火矢は結構、聖良の事を恐れていた様だ。

つまりこの前、怖がって逃げたのはそれが原因なのだが。

俺は火矢から100回程コールを受けた。


瑠衣の事が余りにも心配な様だ。

俺はその桁違いのコールに盛大にため息を吐いたが。

しかし、それだけ心配してくれているのにこの様は如何なものか。


「.....火矢くんは.....別に良いもん」


「よく無いけどな」


「火矢くん.....は別に顔を見れるけど、お兄は恥ずかしいもん」


「.....ハァ.....」


良く無いスネップ(良く言う引きこもり)だなこれは。

俺は頭に手を添えながら、取り敢えず下に降りた。

下では、谷と聖良が待っている。



「結局、大丈夫.....じゃ無いよな」


「そうだな」


「.....うーん.....乙女心か.....」


「そうだな.....」


今日は学校が早いので、好、俺、谷、聖良の四人で緊急会議を繰り広げていた。

俺が理事長で有るが.....うーむ。

方法が全く思い浮かばない。


『ゴメンね.....私が池!なんて言ったから.....』


「別にそれは然程問題では無い。だけど.....うーんなんつったら良いかな」


「えっと.....私からもゴメンね.....」


「問題は無い。聖良」


困った.....。

こんな経験は初めてだ。

まさかキスが原因で女の子が部屋に籠城するなんて。


俺は顎に手を添えて、考える。

そして手を叩いて結論を出した。


「.....無理矢理にドアをこじ開けよう。.....肋骨の件が気になるし」


「『駄目に決まっているでしょ』」


「和樹.....多分それはタブーだ」


そんなに怒るなお前ら。

でも、じゃあ作戦でも有るのか。

俺は非常に困っているんだぞ。


そんな感じで居ると、聖良がうんと言った。

そして俺の方を見てくる。


「取り敢えず.....時間になったら降りて来ると思うから」


「.....そんな気楽な.....」


『多分、お腹が減って降りて来るよ!大丈夫』


「でもその前にやってみたい作戦が有るんだが」


谷に作戦?

俺は谷の方に向く。

すると、谷は俺を見てタブレットを取り出した。


「.....これで部屋をのぞ.....」


「「『何考えてんだ』」」


「ですよね」


俺の義妹の部屋で、尚且つ女の子の覗くとか殺すぞお前。

俺はその様に谷をかみ殺す勢いで見る。

それから俺は仕方が無く、俺は携帯を使ってみた。


プルルルと鳴って、通話体制になる。

そうしていると、瑠衣が出た。


『はい。どうしたの』


「みんな心配しているんだが、降りて来ないか?瑠衣」


『.....でもお兄の顔を見るのが恥ずかしいんだけど』


「.....だよなぁ」


じゃあどうするか、と思っていると。

一つ、作戦を思い付いた。

確かアレは俺の部屋に.....有ったよな?



「.....えと、ごめん.....何やってるの?お兄.....」


「これならマシだろ。お前にとっては」


今、俺達は瑠衣の部屋の前に居る。

俺は瑠衣の姿をあまり確認出来ないが。


何をしたのか?それは簡単だ。

俺がひょっとこ、のお面を顔に着けたのだ。


これはこの前の祭りの土産品だ。

この作戦なら如何かと思った。

顔も見れないしよ。


「.....か.....和樹よ。幾ら何でも.....は.....腹が.....痛い.....」


「.....ブッ.....クスクス」


『アハアハッハ!和樹最高www』


「笑うなお前ら!真面目な作戦だぞ俺の!俺はな!瑠衣と話したいのだ」


その様な感じで暫く居ると、瑠衣がプッと吹き出した。

そして^^の目をして指を口元に当てて笑い出す。

クスクスと、だ。


「おに.....い.....何やってんの.....お腹痛い.....」


「.....あ、ようやっと笑ったな」


「.....え?」


「俺は笑うお前の顔が一番、この世で大好きなんだ。だから.....な?」


暫くフリーズして、瑠衣はボウッと火が点いた様に赤面した。

そして自らの部屋にバターンと音を立てて閉じ籠る.....って嘘だろ!

何でだよ!!!


「.....あーあ。やっちゃった」


『そういう所が.....和樹はアホだねー』


「全く同感だわ」


何でだよ!

俺なんかしたか!?

今すごく交渉が上手くいってたよね!?


「もう.....お兄のバカ.....」


甘ったるい声でその様に聞こえた。

俺はますます???を浮かべるしか無い。

何がどうなっているのだ。

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