第36話 三つ巴(聖良、好、瑠衣)の戦い
お祭りに向かう事は中止になった。
そして、俺の家。
聖良の目の前に俺、瑠衣と座っている構図。
「.....聖良さんが来るのは歓迎だけど.....大丈夫かな?」
「.....分からん。だけど聖良は帰りたく無いと言っているからな」
「.....あんな場所なんてもうこりごり!絶対に許さない!」
震えながら怒る聖良。
聖良の親父に殴られた傷は治療し、ガーゼが目立つ。
仮にも女の子を本気で殴るとは結構最悪だと思うのだが.....。
「.....聖良さん。えっと.....その.....お風呂入ります?」
言い出せる言葉がそれしか無かったのだろう。
俺はその様に思いつつ瑠衣を見る。
その言葉に聖良は手を叩いた。
「あ、じゃあ一緒に入らない?瑠衣ちゃん」
「はい」
「.....じゃあお前ら入って来い。俺は家事をするから」
「.....覗かないでね」
ジト目の聖良に、するかアホと話し、立ち上がる。
そして風呂場に向かう二人を見送ってから家事をし始めた。
取り敢えず、昼飯でも作ってやろう。
☆
「わ。聞いたけど、本当に家事も出来るんだ」
「たらこパスタだけどな。腹減ったろ」
「お兄。.....有難う」
和かに見てくる、ホカホカした二人。
きょうの料理はたらこパスタにバター乗せだ。
これまた美味しいんだわ。
瑠衣の作る、明太ペペロンチーノの方が美味しいけど。
「取り敢えず.....食うか」
「そうだね。瑠衣ちゃんも座って」
「はい」
そして手を合わせて、頂きますと話してから食べ出した。
口に合えば良いんだがな。
と思っていると、目を輝かせて聖良が言った。
「とっても美味しい!凄い!!!」
「そこまで凄か無いけどな。有難う」
「いや。美味しいよ。お兄」
「有難う、瑠衣」
飯を食いながら、俺は質問を投げかける。
かなり考えた質問で、悩んでいたが。
何故なら両親の事についてだから、だ。
「聖良。お前は.....親父さん.....と言うかあの人とはやっぱり武道の関係で悪くなったんだよな?」
「.....うん。そうだね。私をいつも厳しい目で見てきて.....期末テストも中間テストも総合テストも.....100点満点じゃ無いと何も言わないし.....凄い悲しかった」
「.....かなり.....その.....複雑な親ですね.....」
「.....そうだね」
手を止めて、下に手を置きながら、聖良は話す。
俺はその姿を見ながら、複雑な思いを抱えた。
本当に悲しいなそれは。
「それで.....兄に変わる.....と言うか、女じゃ務まらないと後継を求めているみたいなんだけど.....もう嫌気が指して.....ね」
「.....そいつは悲惨だな。確かに宗家は全ての分家の模範だからな.....」
「だから逃げたの。もう嫌だったから。あんな暴力な親は許さない!」
俺に対して、ただポロポロと涙を流す聖良。
そんな聖良を見ながら、横の瑠衣を見た。
瑠衣が頷いて、そして話し出す。
「.....落ち着くまで居て良いですからね。聖良さん」
「.....うん。本当に.....御免なさい.....有難うね.....和樹くん、瑠衣ちゃん」
「.....大丈夫だ。そんな親は俺も許しがたいよ。ある意味。お疲れ様」
で、と話をする聖良。
そして俺を少しだけ赤くなりながら見てきた。
俺は首を傾げる。
「後で話が有るんだけど.....良い?和樹くん」
「別に良いけど.....どうしたんだ?」
「うん。後でね」
「.....?」
ちょっと分からないが、まあ後でと言うなら後にしよう。
その様に思いながら、俺は少しだけ冷えたパスタを口にほっぽり込んだ。
☆
自室にて。
俺は目の前のベッドに腰掛けている聖良を見た。
勉強机の椅子に俺は腰掛ける。
「.....どうしたんだ?聖良」
「.....えっとね.....その.....和樹くん」
「.....?」
「私と結婚しない?」
まさかの言葉だった。
俺は椅子から崩れ落ちる。
って言うか、話がぶっ飛び過ぎている気がする。
何故、そんな事になるのだ!?
「ちょ、ちょっと待て、聖良。.....お、お前.....結婚だと!?」
「.....うん。結婚だよ。私と」
「.....何を考えているんだ。俺はお前と釣り合わないぞ!?それ以前に!」
「.....実は私.....結局その、私には色々な事情で.....同じ武道者の婚約者が居るんだけど.....その人と婚約するなら私は.....私が好きと思っている貴方と結婚したいんだ。君は優しくて、私の事を守ってくれる。だから好きと思ってる。だから結婚したいって思う!私と結婚して下さい!」
無茶苦茶だ!俺はその様に思いながら驚愕する。
って言うか、聖良まで俺の事を好きだったのか!?
嘘だろう!ヒーローが俺を?
「.....せ、聖良.....しかし、それは.....!!!」
『あげない!!!』
突然の女の子の叫び声だった。
俺のスマホが勝手に起動して.....通話状態になっている。
相手は好.....え!?!!?
『私の恋人を取らないで!!!』
「.....こ、恋人.....!?」
驚愕する俺を他所に、目を丸くする、聖良。
だが、それを他所に更に叫び声は続く。
『和樹!私が愛しているってキスしたの.....忘れたの!?私は.....貴方が大好きだって.....!お願い.....お願いだから見捨てないで.....!』
泣いている様にグスグスと音がする。
つーか、ぎゃあああ!とんでもない暴露だぁ!
俺はその様に頭を抱える。
聖良は目を更に丸くして驚愕した。
「キス.....!?え!?和樹くん!?」
「.....これには事情が有る。ドン引きするな。聖良」
にしても何で勝手に電話が!?
俺はその様に思っていると、ガチャッとドアが開いて。
そして厳つい顔付きの類が入って来た。
「.....それは認められないよ。お兄。.....好さんを見捨てちゃ駄目だよ」
「お前か!好に電話して電話を.....通話にしたのは!?」
多分、瑠衣に電話を渡した時だ。
その時に恐らくこの電話に細工でもしたのだろうけど.....。
後は隙をみてやったかどちらかだ。
「.....聖良さん。ごめんね。それだけは許せないよ。私」
「.....!」
衝撃を受けた様に聖良は見開く。
その間にも電話は更に続いた。
必死の叫び声が聞こえる。
『和樹.....!』
三つ巴の戦い。
一番に感じたのは、それだ。
俺はどうしたら良いのだろうか。
その様に思いながら、瑠衣、聖良、好の電話を見た。
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