第36話 三つ巴(聖良、好、瑠衣)の戦い

お祭りに向かう事は中止になった。

そして、俺の家。

聖良の目の前に俺、瑠衣と座っている構図。


「.....聖良さんが来るのは歓迎だけど.....大丈夫かな?」


「.....分からん。だけど聖良は帰りたく無いと言っているからな」


「.....あんな場所なんてもうこりごり!絶対に許さない!」


震えながら怒る聖良。

聖良の親父に殴られた傷は治療し、ガーゼが目立つ。

仮にも女の子を本気で殴るとは結構最悪だと思うのだが.....。


「.....聖良さん。えっと.....その.....お風呂入ります?」


言い出せる言葉がそれしか無かったのだろう。

俺はその様に思いつつ瑠衣を見る。

その言葉に聖良は手を叩いた。


「あ、じゃあ一緒に入らない?瑠衣ちゃん」


「はい」


「.....じゃあお前ら入って来い。俺は家事をするから」


「.....覗かないでね」


ジト目の聖良に、するかアホと話し、立ち上がる。

そして風呂場に向かう二人を見送ってから家事をし始めた。

取り敢えず、昼飯でも作ってやろう。



「わ。聞いたけど、本当に家事も出来るんだ」


「たらこパスタだけどな。腹減ったろ」


「お兄。.....有難う」


和かに見てくる、ホカホカした二人。

きょうの料理はたらこパスタにバター乗せだ。

これまた美味しいんだわ。

瑠衣の作る、明太ペペロンチーノの方が美味しいけど。


「取り敢えず.....食うか」


「そうだね。瑠衣ちゃんも座って」


「はい」


そして手を合わせて、頂きますと話してから食べ出した。

口に合えば良いんだがな。

と思っていると、目を輝かせて聖良が言った。


「とっても美味しい!凄い!!!」


「そこまで凄か無いけどな。有難う」


「いや。美味しいよ。お兄」


「有難う、瑠衣」


飯を食いながら、俺は質問を投げかける。

かなり考えた質問で、悩んでいたが。

何故なら両親の事についてだから、だ。


「聖良。お前は.....親父さん.....と言うかあの人とはやっぱり武道の関係で悪くなったんだよな?」


「.....うん。そうだね。私をいつも厳しい目で見てきて.....期末テストも中間テストも総合テストも.....100点満点じゃ無いと何も言わないし.....凄い悲しかった」


「.....かなり.....その.....複雑な親ですね.....」


「.....そうだね」


手を止めて、下に手を置きながら、聖良は話す。

俺はその姿を見ながら、複雑な思いを抱えた。

本当に悲しいなそれは。


「それで.....兄に変わる.....と言うか、女じゃ務まらないと後継を求めているみたいなんだけど.....もう嫌気が指して.....ね」


「.....そいつは悲惨だな。確かに宗家は全ての分家の模範だからな.....」


「だから逃げたの。もう嫌だったから。あんな暴力な親は許さない!」


俺に対して、ただポロポロと涙を流す聖良。

そんな聖良を見ながら、横の瑠衣を見た。

瑠衣が頷いて、そして話し出す。


「.....落ち着くまで居て良いですからね。聖良さん」


「.....うん。本当に.....御免なさい.....有難うね.....和樹くん、瑠衣ちゃん」


「.....大丈夫だ。そんな親は俺も許しがたいよ。ある意味。お疲れ様」


で、と話をする聖良。

そして俺を少しだけ赤くなりながら見てきた。

俺は首を傾げる。


「後で話が有るんだけど.....良い?和樹くん」


「別に良いけど.....どうしたんだ?」


「うん。後でね」


「.....?」


ちょっと分からないが、まあ後でと言うなら後にしよう。

その様に思いながら、俺は少しだけ冷えたパスタを口にほっぽり込んだ。



自室にて。

俺は目の前のベッドに腰掛けている聖良を見た。

勉強机の椅子に俺は腰掛ける。


「.....どうしたんだ?聖良」


「.....えっとね.....その.....和樹くん」


「.....?」


「私と結婚しない?」


まさかの言葉だった。

俺は椅子から崩れ落ちる。

って言うか、話がぶっ飛び過ぎている気がする。

何故、そんな事になるのだ!?


「ちょ、ちょっと待て、聖良。.....お、お前.....結婚だと!?」


「.....うん。結婚だよ。私と」


「.....何を考えているんだ。俺はお前と釣り合わないぞ!?それ以前に!」


「.....実は私.....結局その、私には色々な事情で.....同じ武道者の婚約者が居るんだけど.....その人と婚約するなら私は.....私が好きと思っている貴方と結婚したいんだ。君は優しくて、私の事を守ってくれる。だから好きと思ってる。だから結婚したいって思う!私と結婚して下さい!」


無茶苦茶だ!俺はその様に思いながら驚愕する。

って言うか、聖良まで俺の事を好きだったのか!?

嘘だろう!ヒーローが俺を?


「.....せ、聖良.....しかし、それは.....!!!」


『あげない!!!』


突然の女の子の叫び声だった。

俺のスマホが勝手に起動して.....通話状態になっている。

相手は好.....え!?!!?


『私の恋人を取らないで!!!』


「.....こ、恋人.....!?」


驚愕する俺を他所に、目を丸くする、聖良。

だが、それを他所に更に叫び声は続く。


『和樹!私が愛しているってキスしたの.....忘れたの!?私は.....貴方が大好きだって.....!お願い.....お願いだから見捨てないで.....!』


泣いている様にグスグスと音がする。

つーか、ぎゃあああ!とんでもない暴露だぁ!

俺はその様に頭を抱える。

聖良は目を更に丸くして驚愕した。


「キス.....!?え!?和樹くん!?」


「.....これには事情が有る。ドン引きするな。聖良」


にしても何で勝手に電話が!?

俺はその様に思っていると、ガチャッとドアが開いて。

そして厳つい顔付きの類が入って来た。


「.....それは認められないよ。お兄。.....好さんを見捨てちゃ駄目だよ」


「お前か!好に電話して電話を.....通話にしたのは!?」


多分、瑠衣に電話を渡した時だ。

その時に恐らくこの電話に細工でもしたのだろうけど.....。

後は隙をみてやったかどちらかだ。


「.....聖良さん。ごめんね。それだけは許せないよ。私」


「.....!」


衝撃を受けた様に聖良は見開く。

その間にも電話は更に続いた。

必死の叫び声が聞こえる。


『和樹.....!』


三つ巴の戦い。

一番に感じたのは、それだ。

俺はどうしたら良いのだろうか。

その様に思いながら、瑠衣、聖良、好の電話を見た。

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