第34話 お祭りに行くか
玉鋼という聖良の侍女に会ってから、俺達は学校に登校して、そして4時限目の授業を受けていた。
何つうか複雑なもんだな、その、家庭ってのは。
交通事故で兄を失った故に.....多分責任が全て聖良に押し付けられているのだろう。
辛いよな、キツイよな。
俺はその事を考えながら呆然と横を見ていた。
その時だ、谷の呼び声が。
「オイ.....和樹!」
「ハッ!」
「グッドモーニング。羽柴?呆然として何をやっているんだ?」
目の前に現文の田中テーチャーが額に#を浮かべて立っていた。
そして教科書でバシッと上から下に思いっきりに頭を引っ叩かれ。
クラスでどっと笑いが起こった。
☆
4時限目の終わりの昼休み。
俺はため息を吐いて、外を見ていると。
コロッケパンを食っている谷に苦笑された。
「お前、呆然と何を思ってたんだよ?好か?」
「.....好も好だが.....まぁ、聖良の事も考えていた」
「.....あー。あれか。朝の?お前も心配性だな.....」
「こんにちくわ!えっと、何を話しているの?」
聖良がこっちにニコニコしながらやって来る。
その聖良に俺達は顔を見合わせて、そして小さな声で話す。
聖良が耳を貸してくる。
「聖良。朝の事だが.....」
「え?あ、成る程ね。でもその、そんなに気にしなくても.....」
「.....でもな、お前の事だ、気になるんだ」
「.....あはは、有難う。優しいね和樹くん。本当にごめんね。.....余計な心配をさせて.....」
少しだけ複雑そうな笑みを浮かべる、聖良。
俺はその笑顔を見ながら顎に手を添えた。
すると、そんな複雑になった空気の中、谷が手をパチンと叩く。
「そういやさ。確か地元祭りが無かったっけ?今週」
「.....いやいや、突然何だよ。お前」
「いや、みんなで行かね?地元祭り。何つうか、気晴らしに」
「あ!良いね!行きたい!」
お祭りねぇ。
成る程.....確かに有るな。
それに気晴らしに行ってみるってのも楽しいかも知れない。
好が喜ぶと思うし.....うん。
「.....じゃあ、何だ。今週の土曜日に集合するか?」
「屋台!」
「飯!」
「現金過ぎるだろお前ら」
笑いしか出ませんわ。
俺はその様に思いながら、外を見る。
そして聖良を見た。
「.....大丈夫か?宗家の問題は.....」
「うん。おと.....うん。あの人の許可は取れると思うから」
「.....そうか。だったら行こうか」
「よっしゃ決まりや!そうなると瑠衣ちゃんも!」
火矢と、りん、も誘って連れて行くか。
付いて来るか分からんが、取り敢えずは、だ。
アイツらもそれなりには楽しみたいだろうしな。
「じゃあ、全員でレッツゴーだ!」
「気が早いっつってんだろオメーは.....」
「アッハッハ!楽しい!」
ハイタッチすらする、聖良と谷。
意気投合だなお前ら。
その様に思いながら、俺はため息を吐いた。
そして、瑠衣特製の弁当を.....卵焼きを奪われた。
谷!この野郎!
☆
『あ?祭りだ?お前らガキかよ』
「そりゃお前もだろ」
自宅にて、俺は火矢に電話していた。
火矢は何だか面倒臭そうな反応を見せる。
後ろに、りん、も居る様だが。
『ったく。瑠衣も来るのか』
「おう。お前の好きな瑠衣の浴衣が見れるぞ」
『ぶっ殺すぞテメー。調子に乗んな』
「ワハハ」
そして、じゃあなという感じで電話を切った。
取り敢えず、暴言は相変わらずだが、仲としては角が取れた様な感じだな。
よし、これで誘う事が出来たので後は.....準備をしよう。
「楽しみだね。お兄」
「そうだな.....久々にゆっくり出来るかな.....」
「私、フライドポテトが食べたいなぁ」
それも良いかも知れないが、まさかのフライドポテトかよ。
俺はその様に思いながら、苦笑する。
普通はりんご飴とかだろ。
「.....まぁ、好きなモノを食えよ。お小遣いを使い果たすなよ」
「うん。お兄」
その時だ、リビングから去ったと思った瑠衣が俺の胸に手を回してきた。
そして俺に対して、呟く。
「.....お兄。大好き」
「.....いきなりなんだ」
「.....私の別れたけど、初恋の人はやっぱり今でも私が憧れる人だなって思っただけ。ごめんね」
「.....」
瑠衣は赤くなりながらはにかんだ。
俺はその瑠衣を見ながら、笑みを浮かべる。
作り笑いだが。
瑠衣が今でも俺を諦めて無い。
それはつまり、いつかは.....と思った。
俺は複雑に思いながらも、瑠衣の頭に手を添える。
「.....お前の事は好きだ。義妹としてな」
「.....今はね。でもいつかは見返すんだ。私」
「やってみろ。待っているからな」
一段と成長していく、瑠衣。
俺はその瑠衣を見ながら言った。
「洗濯しようか」
「.....そうだね。お兄。あ。そうだ」
突然と瑠衣は手を後ろに回して、そしてニコッとして。
俺に言葉を柔和に発して来る。
「.....えっと、看病、有難う」
「.....気にすんな」
「.....それと.....看病中の記憶は.....忘れて.....!恥ずかしい」
「.....ですね」
有難うね、お兄と言って。
洗面所を見て、春子さんと親父が帰って来る前に片そうと言った。
俺は頷いて動き出す。
「.....好さん元気そうだよね。ここ最近」
「そう言えばそうだな。ここ最近は元気だ。まだあまり下手には動けないけどな」
「.....やっぱり頑張れるのはお兄の存在感かな」
「それはどうかな.....まぁ分からんが」
絶対にそうだと思うな、私。
その様に嫉妬の声色で洗濯をする瑠衣。
俺は苦笑ながら、手伝う。
それから食事の用意など、家事をし出した。
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