第34話 お祭りに行くか

玉鋼という聖良の侍女に会ってから、俺達は学校に登校して、そして4時限目の授業を受けていた。

何つうか複雑なもんだな、その、家庭ってのは。


交通事故で兄を失った故に.....多分責任が全て聖良に押し付けられているのだろう。

辛いよな、キツイよな。

俺はその事を考えながら呆然と横を見ていた。

その時だ、谷の呼び声が。


「オイ.....和樹!」


「ハッ!」


「グッドモーニング。羽柴?呆然として何をやっているんだ?」


目の前に現文の田中テーチャーが額に#を浮かべて立っていた。

そして教科書でバシッと上から下に思いっきりに頭を引っ叩かれ。

クラスでどっと笑いが起こった。



4時限目の終わりの昼休み。

俺はため息を吐いて、外を見ていると。

コロッケパンを食っている谷に苦笑された。


「お前、呆然と何を思ってたんだよ?好か?」


「.....好も好だが.....まぁ、聖良の事も考えていた」


「.....あー。あれか。朝の?お前も心配性だな.....」


「こんにちくわ!えっと、何を話しているの?」


聖良がこっちにニコニコしながらやって来る。

その聖良に俺達は顔を見合わせて、そして小さな声で話す。

聖良が耳を貸してくる。


「聖良。朝の事だが.....」


「え?あ、成る程ね。でもその、そんなに気にしなくても.....」


「.....でもな、お前の事だ、気になるんだ」


「.....あはは、有難う。優しいね和樹くん。本当にごめんね。.....余計な心配をさせて.....」


少しだけ複雑そうな笑みを浮かべる、聖良。

俺はその笑顔を見ながら顎に手を添えた。

すると、そんな複雑になった空気の中、谷が手をパチンと叩く。


「そういやさ。確か地元祭りが無かったっけ?今週」


「.....いやいや、突然何だよ。お前」


「いや、みんなで行かね?地元祭り。何つうか、気晴らしに」


「あ!良いね!行きたい!」


お祭りねぇ。

成る程.....確かに有るな。

それに気晴らしに行ってみるってのも楽しいかも知れない。

好が喜ぶと思うし.....うん。


「.....じゃあ、何だ。今週の土曜日に集合するか?」


「屋台!」


「飯!」


「現金過ぎるだろお前ら」


笑いしか出ませんわ。

俺はその様に思いながら、外を見る。

そして聖良を見た。


「.....大丈夫か?宗家の問題は.....」


「うん。おと.....うん。あの人の許可は取れると思うから」


「.....そうか。だったら行こうか」


「よっしゃ決まりや!そうなると瑠衣ちゃんも!」


火矢と、りん、も誘って連れて行くか。

付いて来るか分からんが、取り敢えずは、だ。

アイツらもそれなりには楽しみたいだろうしな。


「じゃあ、全員でレッツゴーだ!」


「気が早いっつってんだろオメーは.....」


「アッハッハ!楽しい!」


ハイタッチすらする、聖良と谷。

意気投合だなお前ら。

その様に思いながら、俺はため息を吐いた。


そして、瑠衣特製の弁当を.....卵焼きを奪われた。

谷!この野郎!



『あ?祭りだ?お前らガキかよ』


「そりゃお前もだろ」


自宅にて、俺は火矢に電話していた。

火矢は何だか面倒臭そうな反応を見せる。

後ろに、りん、も居る様だが。


『ったく。瑠衣も来るのか』


「おう。お前の好きな瑠衣の浴衣が見れるぞ」


『ぶっ殺すぞテメー。調子に乗んな』


「ワハハ」


そして、じゃあなという感じで電話を切った。

取り敢えず、暴言は相変わらずだが、仲としては角が取れた様な感じだな。

よし、これで誘う事が出来たので後は.....準備をしよう。


「楽しみだね。お兄」


「そうだな.....久々にゆっくり出来るかな.....」


「私、フライドポテトが食べたいなぁ」


それも良いかも知れないが、まさかのフライドポテトかよ。

俺はその様に思いながら、苦笑する。

普通はりんご飴とかだろ。


「.....まぁ、好きなモノを食えよ。お小遣いを使い果たすなよ」


「うん。お兄」


その時だ、リビングから去ったと思った瑠衣が俺の胸に手を回してきた。

そして俺に対して、呟く。


「.....お兄。大好き」


「.....いきなりなんだ」


「.....私の別れたけど、初恋の人はやっぱり今でも私が憧れる人だなって思っただけ。ごめんね」


「.....」


瑠衣は赤くなりながらはにかんだ。

俺はその瑠衣を見ながら、笑みを浮かべる。

作り笑いだが。


瑠衣が今でも俺を諦めて無い。

それはつまり、いつかは.....と思った。

俺は複雑に思いながらも、瑠衣の頭に手を添える。


「.....お前の事は好きだ。義妹としてな」


「.....今はね。でもいつかは見返すんだ。私」


「やってみろ。待っているからな」


一段と成長していく、瑠衣。

俺はその瑠衣を見ながら言った。


「洗濯しようか」


「.....そうだね。お兄。あ。そうだ」


突然と瑠衣は手を後ろに回して、そしてニコッとして。

俺に言葉を柔和に発して来る。


「.....えっと、看病、有難う」


「.....気にすんな」


「.....それと.....看病中の記憶は.....忘れて.....!恥ずかしい」


「.....ですね」


有難うね、お兄と言って。

洗面所を見て、春子さんと親父が帰って来る前に片そうと言った。

俺は頷いて動き出す。


「.....好さん元気そうだよね。ここ最近」


「そう言えばそうだな。ここ最近は元気だ。まだあまり下手には動けないけどな」


「.....やっぱり頑張れるのはお兄の存在感かな」


「それはどうかな.....まぁ分からんが」


絶対にそうだと思うな、私。

その様に嫉妬の声色で洗濯をする瑠衣。

俺は苦笑ながら、手伝う。

それから食事の用意など、家事をし出した。

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