第33話 聖良のお世話係、玉鋼

その後、谷や、りん、もやって来た。

そんなみんなの看病のお陰か、みるみる瑠衣は回復していった。

そして回復の会みたいなのが開かれた日曜日、今現在。


「瑠衣ちゃん。回復して良かったね」


「瑠衣さん.....良かったです」


「お、ケーキ一個、残ってんじゃん。もーらい」


「テメーコラ!!!勝手に食うんじゃねーよ!!!」


この場所に、瑠衣、俺、りん、火矢、谷、聖良.....と好が居る。

好は何時もの様に中継だ。

向こうの病室でクスクス笑っている。


『楽しそうだね。良いなぁ』


「お前にもいつかパーティーを開いてやるよ。好」


『うん。期待してるよ。和樹』


でも、あの、なんつうか。

この前のキスがあったせいで.....か、かなり気まずい。

俺はその様に思いながら、画面の奥の好を見る。


『.....』


好も同じ様で、俺を見ながら赤面していた。

頭を掻きつつ俺はジュースを飲む。

すると、谷が肩に手を回して来て好を見た。


「.....楽しんでるか?好」


『うん。谷くん』


「ははっ。.....でもさ、気になったんだけど.....お前ら、何か有ったのか?」


「.....」


ポーカーフェイスってのはこの時に使うんだなと思いました。

俺はそう、思いながらそっぽを見る。

瑠衣が怪しい!と言った。


「何か有ったの!?お兄!」


「何もねーから大丈夫だ.....」


「滅茶苦茶に怪しい.....」


美少女2名にジト目で追い詰められている、俺。

勘弁して下さい、良い香りでクラクラする。

好は外を見て完全無視だし!


「.....白状してもらうぜ?和樹」


「.....何もねぇよ.....だから」


「.....よし、火矢。金蹴りだ」


ちょ、お前らマジで巫山戯んな。

死ぬわそんなん。

俺は暴れながら、逃げる。


『うふふ、楽しそうだね〜』


「完全に他人事だな!」


『だって私は病人だもーん』


「ひでぇ!クソッ!覚えてろ!」


そして日曜日の楽しい時間はどんどんと過ぎて行き。

翌日になってしまった。



「.....ふあ.....」


欠伸をしながら、瑠衣と共に玄関を開ける。

その目の前に聖良が立っていた。

そして、よっ、と手を上げる。


「どうしたんだ?聖良」


「.....私も一緒に登校しようと思ってね」


「じゃあ、三人で」


その様な感じで、家から歩いて行く。

直ぐに聖良は瑠衣に向いて言葉を発した。


「でも本当に治って良かったね。瑠衣ちゃん」


「はい。有難う御座います。ご心配をお掛けしました」


「瑠衣ちゃんが居ないと何だか寂しいから良かった」


「そうだな」


その様な会話をしながら、河川敷を歩いて行く。

そして超えて暫くして目の前を見ると、火矢が立っていた。

頬を掻きながら、俺達を見てくる。


真っ先に瑠衣が火矢の手を握った。

そして笑顔で挨拶する。


「.....おはよう。火矢くん」


「.....お、おう?でもちょっと待て、火矢くんって.....」


「うん。もう高島くんは止めるね。火矢くんって呼ぶよ。これから」


わー、嬉しそうだなー(棒)

その様に思いながら、苦笑しつつ見る。

火矢が怒りながら俺に向いてきた。


「何だよお前」


「あ?何もねぇよ。嬉しそうだな」


「.....う、嬉しかない!」


真っ赤で否定する、火矢。

ほうほう、嬉しそうですな。

その様に感じつつ、火矢をニヤニヤしながら見つめる。


「.....でも、お前には本当に助けられた。瑠衣も喜んでいる。有難うな。火矢」


「.....そうかよ。.....それは良かった」


「ところで、りん、はどうした」


「りん、なら先に行ったぜ。なんか日直だとよ」


火矢の言葉に、ああ、そうか成る程、と納得した。

そして歩き出す、俺達。

俺は首をコキコキ鳴らす。


「.....眠い.....」


「金蹴りしてやろうか?」


「止めろっつってんだろボケ」


その事にハハハと乾いた笑いをする、火矢。

全くコイツという奴は。

感じつつ、歩く。


そして、河川敷を出て直ぐの事。

いきなり背後から大声がした。


「聖良様!」


と、だ。

俺達は驚愕しながら、背後を見る。

そこには、ボブヘアーのとても可愛い女の人が立っていた。

横に黒い高級外車?が止まっている。


律儀な服を着込んだ、女の人。

その人に困惑した様に一歩を踏み出した。

誰がと言えば、聖良が、だ。


「.....玉鋼.....もう追い掛けて来るなって.....」


「私.....聖良様が.....花園学園を転学なさられた事が信じられません!聖良様は転学なさるべきでは無いと思います!差し出がましいですが.....!貴方様のお父様は貴方様に相当な期待をしていたかと思われます!」


「.....それは無いわ。玉鋼」


「でも.....私は.....!今直ぐに花園学園に戻りましょう!」


玉鋼って、かなり凄まじい名前だな。

俺はその様に思いながら、その人を見ていると。

その玉鋼という女の人が俺を見てギョッとして睨んできた。


「まさかとは思いますが男の為に転学を!?冗談ですよね!?聖良様!」


「.....私には人生を選ぶ権利は有るわ。玉鋼。私は.....どんな人生でも歩んでみたいの。お父様と例え対等する事になろうとも」


「.....」


渋い顔をする、玉鋼という人。

そして俺に近づいて来た。

近くで見ると、一学年下、という感じの少女の様にも見えるが。


「.....貴方が.....聖良様を.....!」


「玉鋼!もう下がって!」


「はい.....申し訳有りません。.....聖良様」


いそいそと去って行く、玉鋼。

最後に俺達を恨む様な目で見て去って行った。

直ぐに俺は聖良に聞く。


「.....お前の家の話か?」


「.....ちょっと悩んでいる問題が有ってね。ごめんね。変に巻き込んじゃって」


「それは問題無いが、彼奴は何だ」


火矢が面倒臭そうに聞く。

確かにそれは知りたい。

一体、誰なんだ?


「.....あれは私の.....えっと.....その、身の回りのお世話係の侍女長みたいな感じ。あれでも30歳は超えてるんだよ。えっとね、美魔女ってやつかな。.....それからえっと、かなり鬱陶しい。.....何時も私の将来を案じているから」


「.....30って.....え?マジでか。.....大変なんだな。お前も」


「.....うん」


うーんと考えていると、瑠衣が時間が無いと言った。

俺達は聖良のため息を見てから学校に急いだ。

また遅刻してしまうのはゴメンだからだが.....そんな中で複雑な家庭なんだな、と俺は考えながら走った。

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