第21話 動かぬ絶望
「何つうか.....色々だなぁ」
「.....そうだな」
まさか、りん、の兄とは思わなかった。
俺はその様に考えながら、顎に手を添える。
学校は現在、4時限目終了して昼休みである。
「.....そう言えば、お前、彼女に電話しなくて良いのか?」
「.....いやいや、彼女ってオイ」
「.....でも好はお前の彼女だろうよ?間違っては無いだろ?」
でも改めて言われるとかなり小っ恥ずかしんだが。
俺は頭をボリボリ掻きながら反応する。
間違っては無いんだが.....うん。
「.....電話、出来るのかな」
「分からんな。でも.....望んでいるんじゃねーのか」
「.....でも問題は.....電話を取れるかだな」
「あーそうか.....そりゃ問題だな」
谷は苦笑しながら俺に話す。
まあ、放課後に必ず会いに行くから多分大丈夫だろ。
俺はその様に谷に笑んで言った。
谷はそうだな.....うーむとか言いながら首を傾げている。
取れないならどうしよも無いからな。
と俺は焼きそばパンを齧った。
「.....取り敢えず俺は好に毎回会いに行く事にしている。.....それがアイツの最大の望みだと思うからな」
「いやぁ.....ラブラブだなぁ.....このクソラブコメ野郎め.....」
「ついさっきまで応援してただろお前.....」
全く.....ね、コイツと言う奴は面白い。
その様に思いながら、俺は谷を見て外を見る。
桜も完全に散ってしまい、季節は4月が終わろうとしている。
あっという間の4月だったなと俺は思ってしまった。
それから、本当に色々有った4月だな、と。
俺はその様に思いながら、目を閉じる。
「.....でも取り敢えず、お前と好が付き合ってくれて.....俺もまぁ安心.....とは言えないが.....うーん.....まぁ一応はおめでとう.....なのかな.....」
「.....すまんな。お前にも色々と迷惑を掛けちまって.....」
それから、おめでとう、でも良いと思うぞそこは、と俺はその様に苦笑しながら言葉を谷に発する。
うーん。まぁ、そうだよな.....?と無理に納得した様に谷は首を捻って言った。
今はその様に俺は思いたいからな。
「.....瑠衣は大丈夫だ。.....多分だが」
「.....万が一、何か有ったら相談しろよ。.....仮にも俺はお前の友人なんだからな」
「勿論だ。有難うな」
そうしていると、チャイムが鳴った。
そして教員が入ってくる。
糞真面目な数学教師が、だ。
教室の動く生徒全員を見ながら目線を下にずらした。
谷は慌てながら俺に手を上げて去って行く。
「.....じゃあまた」
「そうだな」
授業が始まる。
そして、また時は進む。
止まる事の無い、船が漕いで動き出す時だ。
☆
「好に会うのはこれが初めてだな」
「.....そうだな」
「.....」
俺、谷、りん、瑠衣の4人で病院のエレベーターに乗っていた。
そして会話しながら病室に向かう。
その病室では慌ただしく動いていた。
医師や看護師が真剣な顔付きで引っ切り無しに動いている。
ちょっと待て、一体何事だ?
思っていると病室から好の母親の水瀬未知瑠(みちる)さんが飛び出して来た。
「.....あの.....」
俺が一言、声を掛けると直ぐにハッとした様にその中年の女性は声を上げた。
黒髪の茶髪が少し混じった、白髪で、好に似て美人だと思う人。
身長も俺とそう変わらない程だ。
そんな未知瑠さんだが、希望に縋る様に俺達に向いてくる。
それから、震えながら言い出した。
「あ!えっと.....皆さん.....!」
「.....どうかしたんですか?」
「.....その.....好が.....倒れちゃって!」
俺達は顔を見合わせて病室に直ぐに入ろうとした、が。
看護師に邪魔!と止められてしまった。
俺は一瞬だけ、好を見たがかなり具合が悪そうに見える。
白目を剥いて、泡を吹いて倒れているからだ。
ちょっと待ってくれ、どういう事だ!
薬の副作用か!?
ちょ、マジで何だよ一体!!!?
と思っていると病室が閉められて。
そして医師が出て来た。
食い付く様にその医者に話を伺う、未知瑠さん。
「その.....好は.....!?」
白衣の胸ぐらを掴む勢いなのを谷が瑠衣が必死に静止した。
未知瑠さんが不安そうに声を震わせながら言葉を吹き出す様にする。
俺は呆然と目の前を見ていた。
「.....落ち着いて聞いて下さい.....もしかしたらですが、悪性リンパ腫が再発したかも知れません。ので、只今より検査室へ運びます」
「.....ちょっと待て。.....転移はしないって.....」
「違います。転移では無く、再発です」
「どっちだって同じだろうが!!!.....好は助かるのか!?」
瑠衣の制止の声も届かない程に焦った。
言葉が暴言になりつつ有る。
あまりにも心配だった。
手に持っていた、お菓子を落として必死に俺は医者に聞く。
「.....この方は確か.....」
「えっとこの子は.....親戚です.....その!好は.....助かるですよね!?ね!?」
中年の医者は、ごほん、えっと、と言いながら眼鏡を上げて言葉を発する。
俺に向いて、そして未知瑠さんに向いて、だ。
りん、が不安そうに泣きそうになっている。
「.....かなり悪性かと思われます。.....えっとですが、最善の手は尽くします。ですが、それでも.....その...言い出しづらいですが、余命の話になってくるかも知れません」
『余命』という言葉で遂に俺の膝が折れた。
それから俺は地面を何十発も殴る。
そして血が噴き出すのを必死に谷が止める。
こんな人生に終止符を打ちたくなった。
「おい!止めろ和樹!」
「.....谷。もう嫌だ.....こんな人生.....俺を殺せぇ!!!」
その様に捻り出す様に言葉を発して俺は号泣した。
好が死んだら俺はもう死ぬしか無い。
その様に思いながら。
母さんの時よりも遥かにキツかった。
申し訳無いが。
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