第19話 瑠衣に恋している同級生
結論から言って、俺と好は付き合う事になった。
しかし、複雑な思いは抱いたままで.....駄目だ、根性が無いな俺は。
この決断に至ったのは良いが、瑠衣の事が心配で.....仕方が無い。
「.....お兄。折角付き合ったんだから.....顔を上げて。お願い」
「.....でも.....お前.....」
「私は.....その.....えっと、チャンスを狙うから!大丈夫だよ!性悪女にはなりたく無いから奪ったりはしないから」
笑みを浮かべる、瑠衣。
俺は取り繕った様な笑みを浮かべた。
気にしては駄目なのだ。
瑠衣は恋の為に戦うと宣言した。
俺と瑠衣はライバル同士という事になる。
その様に思いながらの帰り道。
谷と驚いて見開いたままの、りん、はこっちだからと別れた。
その決断に谷も応援してくれる様な感じで、それでも複雑な感じで。
とにかく、頑張れ、と俺に言ってくれた。
「.....頑張らないといけないな.....俺は」
「折角付き合ったんだからね。当たり前だよ。大切にしてあげて、好さんを」
「.....そうだな」
こんな結末になるとは予想もして無かったが本音が聞けて良かった。
好のその胸の内をすべて描いてくれたお陰で.....俺は。
気にせずって訳では無いが、好の顔を見れる。
大丈夫だよな?と不安は有るが.....2人なら立ち向かえる筈だと。
その様に思いながら、恋物語の始まりを心で書き始める。
そうだ、絶対に何も起こらない。
「.....好.....ごめんな、でも」
好は俺と瑠衣がくっついて欲しかった。
そう願っていたのだ。
それを裏切る形になったのは間違いない。
つまり、俺は.....好に謝らないといけない。
でも、好の為なんだ。
瑠衣も協力してくれている。
もう時計の針は戻せない。
だから前を見るしか無いと思う。
俺は.....そうだ。
「.....好を大切にしよう」
「あったりまえだよ。お兄」
ニコッと笑む、瑠衣。
そんな様子を見ながら、俺はこの前を思い出した。
俺の部屋での絶叫だ。
『当たり前だよね!?他の女の子に取られるって誰だって嫌だよね!?』
恋ってビターチョコの様に苦いな。
あまりにも苦すぎる。
どうして俺達は一つしかカップルを作れない。
何故、護れないんだ。
「.....お兄。また変な事を考えてない?」
「.....いや.....」
「顔に出てるから。嘘は言わないでね」
「.....そうか。お前は.....本当に凄いな、瑠衣」
どうしようも無い笑みを浮かべる。
これに対して、ニヒヒと無邪気に笑う瑠衣。
俺は苦笑しながら返した。
「私はお兄の事は諦めてない。だけど、手を出すつもりは無いからね?お兄」
「.....ああ」
その様に、話していると目の前に人影が見えた。
俺は見開いて、人影を見る。
その人影は一生懸命にこっちに向かって来た。
背中に何か見えたが、ランドセルの様だ。
ランドセルがバタンバタンと音が鳴る。
ん?ランドセル?
「.....瑠衣.....」
「.....えっと.....確か、高島くん?」
その言葉に、誰だ?と俺は背中に瑠衣を隠しながら、警戒心を露わにして目の前の小学生を見る。
高学年の、単発の黒髪、更に少し厳つい顔付きだが、少なくとも俺よりかは成長すればイケメンになりそうな童顔の顔立ち。
そして身長は150センチは有りそうだ。
身長高いのか高く無いのか分からないが.....とにかく、誰だ?
「.....お前、誰だ?」
「あ?お前こそ誰だ」
「.....いきなりお前、呼ばわりか?大人に対して。口が悪いな。年上だぞ俺は。俺の義妹に何の用だって聞いてんだ」
俺達は火花を散らす。
目の前のこのガキ、口が悪いな。
まさに不良の様な感じだ。
俺は眉を顰めて、そのガキを見る。
すると、瑠衣が困惑しながら、話した。
「この前から.....も、もう諦めてよ.....私、好きな人が居るの」
「.....諦めれっかよ。マジで好きなんだから。つーか、好きな人って誰だ」
「.....」
そういう事かと俺は納得しながら光景を見る。
すると、そのガキはハッとした様に俺を見てきた。
そして眉を顰めて、瑠衣を見る。
「.....まさか.....コイツか!?」
「.....え、あ.....えっと.....そ、そうだけど.....」
「.....お前ら.....兄妹なんじゃねーのか!?」
「.....兄妹じゃ無い。.....だけど兄妹だ。瑠衣は.....俺の義妹だ」
そういう事かよ、と吐き捨てる様に話す、ガキ。
って言うか、高島。
俺はその高島を警戒しながら見つめる。
「.....義妹って事は.....お前が兄貴か」
「.....あのな、年上だぞ。教育するか?」
「舐めんな。年上に舐められる程、俺は弱くねぇよ。お前の様なヤツを.....なんで瑠衣が.....」
「高島くん!」
瑠衣の叫び声が響いた。
俺達は驚きながら、見る。
瑠衣は怒っていた。
「.....いい加減にして。私のお兄を悪く言わないで」
「.....俺は.....こんなヤツより絶対に.....高スペックだぞ!瑠衣!」
「.....そんな事、関係無いから。私はこの人が好きなの」
「.....この.....クソッタレ.....」
青筋を立てながら、高島はイラついた様に俺を見てくる。
俺はそんな高島をジッと見る。
高スペックを自ら言うヤツはあまり強く無いと思うが。
「.....はっ。所詮は.....弱者のくせに!」
「.....高島くん。それ以上言ったら本気で殴るから.....アンタの事、嫌いになるから!」
「.....!」
アンタ、嫌い、という直球の言葉にショックを受けた様な感じを見せて、そして高島は一歩引いて、俺をキッと涙目で睨んできた。
そして盛大に舌打ちして、走って行った。
何だ、所詮はガキか。
思いながら、俺は瑠衣を確認する。
本気でキレている。
「.....瑠衣、何か有ったら話すんだぞ。高島とか.....絡まれたら」
「.....うん。お兄.....許せない。あんな.....汚ったない言葉!弱者って.....!」
「.....分かる。怒りたい気持ちは.....だけど、手を出すなよ。こっちから手を出したら負けだからな」
俺は瑠衣の頭を撫でる。
そして額と額を合わせた。
瑠衣の怒りを鎮める為に、だ。
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