第14話 そうだ、花見をしよう

俺は期待しているが、好の回復は時間が掛かると思う。

そんな中でも複雑な思いを抱きつつ別れた瑠衣のその勇気を無駄にしてはいけないと思うのだ。

俺はその様に思いながら学校で顎に手を当てて考えていた。


瑠衣に.....好にどの様に笑顔を見せれば良いのだろうか。

全てのハッピーエンドを迎えるにはどうすれば良いのだろうか。

その様に、考えなくていけない気がする。


俺を好いてくれている二人の花束に応えるには?

全てに応えるには。

花束を枯らさない為にはどうすれば良い。


「.....悩みすぎんなよ」


「.....谷.....」


「好の反感を買うぞ。多分。好は.....お前に幸せになって欲しいが為にわざわざ用意して.....それすらも覆したんだからな。.....そして悩んでいたら好に殺されるぞ」


「.....俺は二人の幸せを考えたい。だから俺は.....俺は.....悩まなくちゃいけないんだ」


その花束を枯らさない様にする為には。

水を与える為には?

栄養を与える為には。

どうすれば良いのだろうか.....?


「好は.....俺が好きだと思う心を持つ事を嬉しいと思ってくれるかな」


「.....それは思うとおもうが.....かなり怒ってはくるだろうな」


「.....だよな.....」


好が俺は好きだ。

だけど、俺を好いてくれる瑠衣も好きだ。

日本の法律っておかしいよな。


女性と一人だけしか結婚が出来ないのはおかしいと思う。

俺の様な奴はどうすりゃ良いのかってなるだろ。


「.....瑠衣の気持ちにも応えるべきだ」


「.....でもな.....」


「例え無理でも、頑張る。俺は.....だから先ずは.....好が起きるのを待とう」


「.....それで良いと思うぞ。焦るな」


谷は俺の背中をぶっ叩いてきた。

そして、んでさ、と話す。

俺は?を浮かべつつ、谷に向いた。


「.....花見しようぜ」


「.....お前はアホなのか?4月ったってもう花見の時期じゃ無いぞ」


「.....いや。花見は今やるべきだ。皆んなが落ち込んでいる今こそ、だ」


「小テストが終わってからな」


もちよ。

その様に会話していると、担任が入ってきた。

チャイムも鳴り、静かに授業が始まる。



この地球について考える。

ある意味、70億人ぐらい人間が住んでいる筈なのに俺達を絶望が襲ってくる。

だけど俺達はそれでも、歩み出している。


ようやっと静かに歩み出せたのだ。

だけど、俺はそんな絶望を許せずに居た。

天に居る神様を恨んだ。


だけど、周りは違うよ、と言ってくる。

倒れて入院している好も俺を説得してくる。

俺はどうするべきなのか。


「.....好」


目の前でゆっくり休んでいる、好を見る。

頭に包帯を巻いている、好。

この姿を見る度に痛みが、怒りが襲ってくる。


好だけが何故、こんな目に遭っているのか、と、だ。

そう、思っていると後ろから缶コーヒーが俺の頬に当てられた。

あったかい缶コーヒーだ。


「.....すまないな。瑠衣」


「ううん、良いんだよ。お兄」


制服姿の、ランドセル姿の瑠衣。

俺はその瑠衣を柔和に見ながら缶コーヒーを受け取る。

そしてカコンと音を立てて開けた。


「.....瑠衣」


「何?お兄」


「聞いても仕方が無い悩みだってのは分かる。俺って.....馬鹿だよな。お前が諦めてくれたのにまだお前に.....だけど.....ごめんな。学校で1日考えたけど、無理だと思った。その.....解決策を出すのが、だ」


「.....君は本当に良い人だね。お兄」


俺に対して、瑠衣は微笑む。

そして俺の手を握って、話してきた。

目の前を見ている、俺の手を横から、だ。


「.....必死に悩んでくれて有難うね。だから貴方の事が私は好きなんだと思う。でも.....今は好さんの事だけを悩もう。それで良いじゃん」


「.....お前は.....良いヤツだな本当にお前という義妹が.....居てくれて.....」


涙が溢れてしまう。

俺にこんな良い義妹が居てくれる、支えてくれている事に.....涙が。

瑠衣はその事に笑みを浮かべて手を持ってくれる。


「.....有難う、瑠衣」


「有難うね、お兄」


そして俺達は目の前の好を見ながら手を握り合った。

ただ、一つ。

どれだけあっても.....好を支える。

その一心で、だ。

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