第13話 顔に出る感情

俺は好の事が多分、忘れられないんだと思う。

だが好は体調が悪くなるのを感じ取って、その全てを見通し、俺に対して貴方を大切に思ってくれる人を。

という事で、瑠衣が現れた。


俺は瑠衣を愛していたが、瑠衣やはり好さんには勝てないと話して。

そのまま俺達は別れてしまった。

そして時間が経ち、俺達は家に帰って来てから今に至る。


俺は自室で悩んでいた。

これまで感じた事が無い程に.....と言うか。

久々に鬱状態だ。


母親が亡くなって俺が呆然と時を過ごして以来か。

何だろうか、フワフワしている感じで有る。

俺はどうすれば良いのだろうか。


だが、イジイジしていては情けないと思う。

だから俺は強くなる。

瑠衣の気持ちにも答えなくてはいけない。


だが、瑠衣と別れてしまったら.....好が、と悩むのだ。

俺は弱いな、本当に、弱い。

強くなりたい。


コンコン


「.....瑠衣か」


「.....お兄。起きてる?」


「.....今答えたろ。起きてるよ」


取り敢えずは悩むのを止めて、俺は瑠衣に答える。

俺の部屋に瑠衣が入って来た。

ピンクのパーカーの様なパジャマで。


そして、入って来てから早速と言わんばかりに瑠衣は言った。

俺に対して、満面の笑顔で。


「.....もう悩まないで。お願い」


「.....お前は.....俺の心を見透かしているのか?」


「.....分かるに決まっているじゃん。お兄は直ぐ顔に表情が出るから。それに私達は.....血繋がって無いけど、今は兄妹なんだよ?だから分かるんだよ」


「.....お前には勝てないな」


満面の笑顔だが複雑な感じに見える。

俺はその事を思いながら、ベッドに腰掛ける瑠衣を見る。


「お義父さんとかお母さんには話したからね。別れたって」


「.....」


「.....そんなに悩まなくても良いじゃない。私が別れてって言ったから.....お兄がそんなに悩む必要は無いんだよ?」


「.....そうだな.....」


笑顔でニヒヒ、と言う瑠衣。

俺はその笑顔に笑みをかべる事が出来なかった。

すると、父親の話をしない様な性格の瑠衣が俺に向いて。


そして真剣な顔で俺に父親の話をしても良い?と話してし始めた。

俺は驚きながら、見開く。


「お父さん.....私の.....うん。父親ね。そのお父さんは.....愛人を他に作って出て行ったの。でね、私達を見捨てた」


「.....そんな.....お前、父親は失踪したってだけで.....」


「でも私は続きを知っている。私だけ.....ね。見たんだ。私。お父さんに他の愛人が居るって。でね、何が言いたいかって言うと」


また俺に向いて来た、瑠衣。

そして真剣な顔付きだったが、少しだけ崩しながら俺に言葉を発した。

その顔はこれまで見た事の無い顔だ。


「貴方の様な真剣に考えてくれる人がお兄ちゃんで、恋人で本当に良かったなって。お父さんと違って。.....あ、えっとね.....表現が下手でごめんね。.....また悩まないでね。お願い」


「.....お前が俺の義妹で良かった。俺はお前と一心同体だと思う。これからも」


この言葉にパチクリした、瑠衣。

それから、俺に首を振った。

そしてベッドから立ち上がる。


「.....それは好さんに言ってあげて。一心同体じゃ無いよ。私達は。私とお兄は.....相棒だよ」


「.....そうか.....そうだな」


「.....私達は.....もう恋人じゃ無い。兄妹だからね。相棒同士。これからも宜しく!」


これまで話を聞いて俺は瑠衣の弱点を発見した。

瑠衣は隠しきれてない。

何をって、簡単だ。

顔に、本当は別れたく無いって全て出ている。


「無理するな」


「.....無理って?」


「お前は俺をこれっぽっちも諦めて無いんだろ?性悪女だと.....思っているだろ?悩んでいるんだろ?だから顔に出ているだろ?」


「.....そ、そんな事無いもん」


子供の様に頬を膨らませたが、そんな事では誤魔化せない気持ちも有る。

俺はその様に思い、瑠衣を見つめる。

瑠衣は我慢し切れなかったのか、俺に対して涙を遂に流した。


「..........本当は嫌だよ?だって他の女の子に好きな人を取られて.....嫌だよ?誰だって嫌に決まっているよね!!!?」


「.....瑠衣.....」


「嫌だよ!私は和樹さんが好き.....だけど諦めないといけない!!!私は.....好さんには勝てないんだから.....もう.....ね.....」


「.....」


感情を遂に爆発させて泣き叫ぶ瑠衣に対して。

俺は何も出来ない様な気持ちだった。

だけど、これしか無いと俺は小さな瑠衣を見て。


「.....すまん」


「.....え?」


瑠衣を硬く、抱きしめる。

まさかの事に瑠衣は真っ赤に赤面して、俺を突っぱねた。


「.....何を.....私は.....もう恋人じゃ無いのに!」


「.....お前を落ち着かせる方法が思い付かなかった。方法がこれしか無いと思ったからだ。ごめんな.....」


「.....!」


ごめんな、俺も涙が止まらないんだ。

申し訳無い気持ちとかいっぱいで涙が止まらない。


「.....えっと、その.....兄妹同士のハグは問題無いと思う.....から!そ、そういう事にしておいてあげる.....から!」


「.....ああ。そういう事にしておいてくれ」


じゃ、じゃあと真っ赤でドタドタと部屋を飛び出して行く、瑠衣を見送り、俺はベッドに横になった。

これで良いんだよな、好。

俺はその様に思いながら、だ。

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