第8話 目覚めたが

状況を纏めて見てみる。

好が悪性の脳腫瘍で倒れてしまい。

この状況で瑠衣が俺と付き合うのは.....と言ってきた。


この状況は男として、絶対に何かをしないといけないと思う。

まるで、神様が俺に天罰を与えている様な感覚に。

俺は神様に怒りを覚え、呪ってやろうとも思ってしまい、複雑な思いが身を包む。


何だろうか、俺はどうしたら良いのだろうか。

動く必要が有るのだが、どうしたら良い。

俺はどうすれば?


「.....好がまさか.....ここまで見据えているなんてな.....」


「.....好さん.....かなり心配.....」


俺達は複雑な思いを抱き二人、両親が頑張っている、そして好が頑張っている。

その様に思い、何かせずには居られないと。

学校から真っ先に二人で帰宅して家事をやっていた。


今日は灰色の雨が降っていて、真黒な世界が俺の中で広がる。

絶望な思いが広がる、が、駄目だ。

明るくならないと花は咲かない。


「.....負けちゃ駄目だ.....負けちゃ駄目なんだ.....」


「.....うん。そうだね。好さんは.....私達をきっと心配しながら意識が無くても頑張ってるから.....!」


「.....そうだな.....」


今の状態は相当に最悪だ。

だけどきっと雲がモーゼの様に消え去り、日が照る様に、きっと良い方面に向かって行く筈だと思う。


俺が気になっている女子の好。

そしてとても大切な幼馴染で有る。

俺はそんな大切な幼馴染を助ける為なら悪魔にでも魂を売ってやる。


アイツは何も悪くないんだ、なんでこんな目に遭うんだよ。

って言うか、なんで俺達なんだよ?

何でだ.....!?


「.....か、和樹さん!」


皿洗いの手が止まっていた。

気が付くと、涙が出てきていた様で有る。

ふきんで拭いていた皿を置いて、ハンカチで瑠衣が心配する様に俺の涙を爪先立ちで一生懸命に拭いてくる。


俺は瑠衣に向きながら、可愛い瑠衣の頭に手を乗せた。

それによって茶色の短い髪が揺れる。

良い香りがする。


まさかいつの間にか泣くなんてな。

俺は.....それだけ追い詰められているという事か。

母さんの時以来だな、本当に。


「.....ごめんな。本当にごめんな.....」


「.....うん.....私が居るから.....安心して.....!」


「.....瑠衣.....ごめんな.....」


「謝るより先に好さんだよ。和樹さんにとって大切な人は私にとってとても大切な人だと思うから.....」


瑠衣はその様にして俺に太陽の様な笑顔を見せる。

そうだ、好、だよな。

今、最大で優先すべき事項は、だ。


好の調子が戻って、そしてまた俺達と仲良く出来るまで。

そして全てが戻るまで、絶対に諦めない。

俺は諦めないで.....行くんだ。


「.....和樹さんの表情」


「.....ん?」


「少しだけ表情が戻ったね、和樹さん」


「.....お前のお陰だよ。瑠衣」


満面の笑みの髪の毛をグシャグシャにして俺は前を見据える。

そして、連絡を待つ。

好の意識が戻る連絡だ。


スマホの通話音量は最大に設定してある。

何時でも電話が掛かってきても大丈夫な様に、だ。

好の意識が戻る様に.....祈りながら俺は真剣な顔になった。


「あ、私、洗濯機見てくるね」


「.....おう。宜しく。俺は片付けるからな」


「うん」


瑠衣はその様に話して和かな顔で行った。

俺はその様子を見ながら皿を食洗機に入れながら天候を見つつ動く。

その途中で目を閉じてゆっくり考える。


好、頑張れよ。

と祈りの気持ちも込めて全てに祈った。



簡単に言えば、今、俺が遭遇している状況はおとぎ話の様に感じる。

それが女の子が死ぬおとぎ話なら死んでも御免だがと思いながら複雑な思いを抱きつつ前を見て進んでいた。

何だろうか、白雪姫の様な?


そんな感じと思える。

リンゴが例えるなら脳腫瘍の様な。


家事の全てが終わってから、俺は気晴らしにどうだ。

と、谷に誘われて谷の家でパソコンを使いオンラインゲームをしていた。

午後4時の時刻。


「えい!この!」


「おい!銃の弾って何処にあった!?」


そんな感じで俺達は谷の部屋でベッドに腰掛けて。

なかなか熱中していたが。


俺は複雑なデキモノが取れずに画面の中で争っているどっかの相手を見ていた。

窓の外の空が悪天候のせいか複雑さが取れない。

ハァとため息を吐くと、谷が心配そうに俺を見てきた。


「.....大丈夫か?和樹」


「あ.....ああ。まあ、俺は大丈夫だと思う」


「.....でも好が心配なんだろ?」


「当たり前だろお前」


俺は谷をジッと見る。

谷は、そうか、と言いながら。

複雑な顔付きをしながら真正面のゲームを見たのだが、ゲームは全てゲームオーバーになった。


谷は見開いて、それからため息を吐いてコントローラーをベッドに投げる。

それから後ろに寝っ転がって言い出す。


「.....ったく。何だって.....こんな酷い事をすんのかね。神様ってやつは.....」


「.....もう多分、神なんて居ないんだろ。だから俺は悪魔に願う事にしたわ」


「ああまぁ、それも良いかもな。でもやり過ぎない程度でな」


ったくねぇと言う声が聞こえる。

俺は目の前のゲームオーバーという巨大な赤い表記を見つつため息を吐いた。

それから谷に向く。


「.....今は楽しむしかない。気分が落ち過ぎてもどうしようもないしさ。多分、好も.....楽しめって言う筈だから」


「それもそうだな.....うん.....そうだな」


谷は頷く様に納得した。

それから、俺にニヤッとして向いてくる。

俺はクエスチョンマークを浮かべつつ、谷を見る。


「パ○ドラしよーぜ!」


あれか、協力プレイな。

俺は苦笑してその様に思いながら。

スマホを見ようとした、その時だった。


ピコン


と、一通のメールが俺の元へ届いた。

それは友蔵さんからのメールだ。


俺はまさかの事に画面を見開いて見つめる。

そのメールには、こう書かれていた。


(すまない、ちょっと忙しくてメールにした事を許してほしい。えっと.....好が目覚めんだがまた明日にでも来てほしいから.....頼むよ。和樹くん)


「.....マジか!!!」


その声にどうした?と話して谷がゆっくりと起き上がった。

俺は嬉しくなって谷に大きな声で話す。

涙を浮かべつつ、だ。


「好が目覚めたぞ!」


「.....何!?ま、マジで!?」


スマホをそのまま横取りされてジッと画面を見る、谷。

涙を拭きながら、おい!返せよ!


と笑顔で言いつつ、俺は谷に近付く。

谷はスマホをその額を打つけながら呟いた。


「.....マジかよ.....マジかよ.....やっぱ神じゃない、悪魔が良いんだな。願うのって」


「.....ああ」


俺達は片手でハイタッチして大喜びする。

まるで元旦のお祝いの様に、だ。


のだがその間にスマホのメールの文面を下に谷が下ろしてまさかの事態にゾッとする事になる。

その文面はあまりに衝撃的過ぎた。


(.....そして落ち着いて聞いてくれ。好は.....私達以外の記憶が無い様なんだ)


俺達は唖然として.....そして暫く動けなかった。

何故、その様になるんだ。

嘘だろ、オイ。

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