第6話 終わる世界

俺に顔立ちは幼いが、それでも可愛く大人っぽい恋人が出来た。

元義妹だった俺の恋人は笑顔で俺の事を大好きだと言ってくれて俺は嬉しくて。


だけど、心の中でモヤモヤが取れないでいて俺は自室で悩んでそして頭を抱えて過ごしている様な状況だった。

何故かと言えばそれは簡単、俺が情けないだけだ。


「.....駄目だな。俺は。.....どうしても.....好の事が忘れられないな」


馬鹿野郎だな、俺は、本当に困る。

そして、とてもとても最低な男だと思う。

とても可愛い恋人が居るのに別の女の子を好きで諦められないとか。

本気で馬鹿野郎で有る。


「.....俺は恋人を大切にしないといけない.....から。だから.....良い加減諦めろ。俺」


どうしたら良いんだ。

脅迫的にその事が俺の頭の中を漂っている。

時刻は23時と夜遅かったが俺は好にメッセージを送った。


(俺はどうすれば良い)


たったそれだけでしかも時刻も遅い。

返事が来るかどうかは分からないが来なければ別に明日、と思っていたが思った以上に直ぐに返事が来た。

俺は驚きながらそのメッセージを見ると、文章はこう始まっていた。


(良い加減に諦めて。私の事は.....それでも男?絶対に駄目だよ。二股なんて)


俺達は心の底から通じ合っているんだな。

幼馴染として、だ。

強く説教をする様に好から文章が飛んできていた。

俺はその感じに目を開ける。


(.....そうだよな。ゴメンな.....こんなクソ下らない事で悩んでしまって)


(そうだよ。全く。あのね、瑠衣ちゃんを幸せにしないといけないよ)


(ああ。.....でも、あのさ、ちょっとだけ聞いても良いか?何でお前はここまでしても俺と付き合ってくれなかったんだ?.....ちょっと意味が分からないんだが)


うん.....あ、ああ、それは秘密だよ。

まるで、唇に指に当てる様にメッセージを送ってくる。

俺は首を傾げながら、ため息を吐いてメッセージを送った。


(分かった。.....無理には聞かないよ)


(そうそう。女の子は秘密が多いんだよ?だから駄目だよ)


ヤンデレだと。

そう、思っていたのに本当に良く分からんので聞きたかったのだが、女の子の秘密と言われたら確かに聞けない。

と俺は納得しながら欠伸しつつメッセージを送る。


(.....すまん。あと、眠いから寝る。すまんがおやすみ)


(うん、お休み。.....瑠衣ちゃんに宜しくね。ちゃんと寝なさいよ。休む事は大切だから)


(有難うな。でもお前.....)


(何?)


いや何でも無い、と送る俺。

その事は失礼過ぎるかと思ったからだ。

でもな、オカンかコイツ。


その様に思って笑みながら挨拶をして俺は静かにメッセージアプリを閉じた。

それから、天を仰いでみる。

電気が煌々と光って、俺を照らしている。

俺はそれをボーッと見た。


そのボーッとの中で、彼女が出来たという事を思い出して思いっきり赤面した。

本当に彼女が出来てしまったのだな、俺。

何だろうか、いかん。

好に申し訳無いのに、本当に困る。


「.....ニヤけてしまう.....」


それから瑠衣は心底、本当に可愛いのに俺なんかで本当に良いのだろうか。

その様に俺は思ってしまう。


容姿が路傍の石ころの様な感じだぞ俺。

それ以外にも脳内がエロも有る様な、宜しく無いヤツだ。

本当に良いのだろうか?


「.....」


だけどそれは明日にしよう、今日は本当に眠いな。

俺はその様に思ったので寝る事にした。


部屋を真っ暗にして寝る準備をして。

そして目を閉じた。



「和樹さん。朝だよ」


「ん.....?」


唐突にその声がしてシャッと目の前のカーテンが開けられた。

そして光が差し込んでくる。

俺は眠気まなこを擦りながら目を開けた。


「.....!」


「.....おはよ。和樹さん」


目の前に、天使の様な笑みがあった。

前髪を一部だけ結っている、可愛らしい瑠衣だ。


エプロンに背中に手を回して俺を見つめてきている。

俺はその瑠衣に赤面した。

本当にコイツが俺の彼女だという事が信じられないのだが。

と思いながら、俺は言葉を発する。


「.....すまん。寝過ごしたか?」


「.....ううん。早く起こしたから」


瑠衣は俺に花が咲いた様な笑顔を見せる。

俺と瑠衣は4つ、年が違う。

だけど瑠衣は俺を愛していると言ってくれた。


俺は彼女を心より守りたいと思いながら。

複雑な心境が取れなかった。

相変わらず.....最低だな。


「.....どうしたの?」


「.....大丈夫だ。.....問題は無いよ」


目をパチクリする瑠衣を見ながら俺は答える。

そして俺は立ち上がった。

瑠衣を見ながら、だ。


「じゃあ、準備してね」


「その前に.....えっと、可愛いな」


「またそんな事を.....」


真っ赤になるのも可愛いと思う。

小学生に見えないな。

本当に.....だ。



「行ってきます」


「行ってきまーす」


俺と瑠衣は玄関を開けて外に出る。

少しだけ出る時間が遅い、父さんと春子さんを残して。

俺は瑠衣の小さな手を持って、繋いで出た。


「.....ふふっ」


「.....どうした?瑠衣」


「.....本当に夢みたいって思って.....和樹さんを支えれる事が.....ね」


赤面する様な言葉に俺はそっぽを見た。

そして口元を抑えながら呟く。

その一言を、だ。


「.....俺もお前の事は好きなんだと思う」


「.....うん。有難うね。和樹さん.....」


俺達は幸せな感じで歩いていた。

すると背後から唐突にな、な、な!と震える奴が現れた。

かなり(な)の声を上げて、震えている。


「.....おま.....お前ぇ!?.....妹に手を出したのかぁ!?」


「人聞きが悪いな!谷!」


義妹だぞ!オイ!

これが本当の妹なら俺は近親相姦でマジで終わってるからな!


その様にツッコミながら谷は、な、なんだそうか。

とホッとしていた。

当たり前だ。

義妹なのはお前も知っているだろうよ。


「.....谷さん。私、和樹さんの彼女になりました」


「え?」


まさかだろと、石碑の様にガチンガチンに固まる、谷。

オーバーアクション過ぎる。


と、思っていると谷は俺に手招きをした。

そして訝しげな目で話し出す。


「お前さ、マジでぶっ殺して良い?って言うのも、ロリかよ」


「.....あ?その前に俺がお前を殺すから」


「あんな可愛い.....クッ。このクソペドフィリアが!」


オイ、ペドフィリアじゃねーよ。

何を言ってんだコイツ。

俺はその様に眉を顰めて思っていると。

腰に手を当てて、谷は盛大にため息を吐いて苦笑した。


「.....だが、応援してやる。えっと、好には話したのか?」


「.....話した。んで、応援してくれた」


「マジで?なんて不気味な.....」


その様な、話をしていると背後から声がした。

声の主は好の様で。

俺達は叫び声を上げた。


「誰が不気味なの?」


いつの間にコイツ居たのだ!

俺達は驚愕しながら、青ざめる。

すると、予想通り好はハイライトを消す。


「.....全く。殺すよ?ホルマリン漬けにするよ?」


「.....ワハハ、冗談がキツイ.....」


「うん、冗談じゃ無いよ?あ、特に和樹。.....瑠衣ちゃんを大切にしてね。間違ったら斧で殺すよ」


「.....アハハ.....」


ま、まぁ、冗談じゃ無い様な感じだ。

ちゃんと応えないと殺される。


俺はその様に思いながら苦笑しつつ、好を見た。

黒オーラを放ちながら、ゴゴゴとでも音がなりそうな勢いで有る。

すると、今まで黙っていた瑠衣が俺に向いた。


「和樹さん」


「.....どうした?」


「早く行かないと.....」


困った様な感じの瑠衣。

俺は直ぐに時計を見て、驚愕した。


あ、やべ、早く学校に行かないといけない!

俺はその様に驚きながら慌てて焦り出す。


「みんな、行くぞ!」


「.....うん!」


「うん!」


そして俺達は駆け出した。

俺は、複雑なシコリが取れないまま、だ。


その複雑なシコリは、思いは、直ぐに吹き飛ぶ事になる。

学校に行ってから3時間目。


突然、好がふらつき、床に倒れてしまう。

そして俺は直ぐに病院に行ってその真実を知って青ざめる事になる。

絶望の鎌が俺を襲った。



「非常に言いづらいですが.....悪性の脳腫瘍だと思われます」


その言葉を、水瀬友蔵さん。

つまり、好の父親は脳外科医の医師から宣告されたそうだ。


救急車で運ばれての緊急手術。

俺は愕然として、そして動けずに俯いていた。

ただひたすら、呆然と。


それも本当に呆然として。

因みに俺は学校を抜け出してここまで来たが。

なんでそうなるんだよ.....ちょっと待ってくれよ。


「.....好は.....この数日、言っていたんだ。たまにモノが二重に見えると。心配はしていたんだけど.....放置気味だったんだ。.....私がもう少し.....しっかりしていれば良かったんだ.....父親失格だな.....」


「.....良いですよ。そんな事はもう良いですよ。.....起きてしまったんですから。.....悪性の脳腫瘍って.....嘘でしょ。.....疲労ですよね?間違いですよね!?」


「.....間違いを医者が言うと思うかい?セカンドオピニオンもしたよ。間違いは無いそうだからね.....」


俺は地面に膝を崩した。

そして病院の肌色の地面を落ちていく雫を眺めていた。


神様、これはあんまりだと思う。

俺が好と付き合っていたらこうならなかったってか。

あんまりだ.....!

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