第7話だれも私を知らない世界へ
高校を卒業しても、心を許せる友人は一人もいなかった。
その原因は私にあるので、高校の同級生に関しては何の恨みも感じない。
島を離れた私は、学生寮に入ったこともあり、一から私を知ってもらうという環境になかなか慣れなかった。
体面ではそれなりに会話をするものの、いわゆる「心友」と呼べる存在が三年経っても現れなかった。
今思うと、物足りなさを感じていたのかもしれない。そのことさえ当時の私は微塵も気付かなかった。
私は高校入学と同時に大学のセンター試験対策勉強に明け暮れた。
安田家の誰もが成していない大学進学を実現させ、伯母たちに土下座をさせてやろうと目論んでいた。
机の上の勉強に明け暮れた私は、世間の勉強を怠ったばかりに進学を断念した。
地域一の進学校初、歴代唯一の高卒就職者という肩書を得てしまった。
それ以来、クラスメイトの笑顔を想像できても、自分の顔の筋肉は硬直してしまった。岩が、鋼になった高校の卒業式だった。
私を見送るクラスメイトは、誰もいなかった。
皆、自分のキャンパスライフの想像で手いっぱいだった。
卒業証書さえも持てないほど、夢が口から無限に溢れていた。
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