第53話 竜と共に舞え!星霊姫の少女達!
正直海中での武装がドリルってのには驚いたが、なかなかどうして相性の良さに闘志も
さらにはアイリスの時同様ウィスパが持つ能力を備えたドレッドノートは、海中に於ける必殺武装となり得た。
「アイリスの時もそうだったが、
『さ……流石はマスターになられたお方なのですっ!正にその通り、なのですぅ!さらに言えばウィスパ自身であれば、生命全般に於ける体内の流体支配も含まれるのですぅ!』
アイリスのシンボルである〈星〉は恐らく、全ての基盤となる
言わば龍脈そのものを支配すると言うのが妥当だろう。
けど……全ての
そこまでを思考に描いた時、僅かに引っかかる事象が脳裏を掠める。
アイリスからもまだ語られていないこの
機体搭乗前に感じた命の胎動を、一体化する度に強く感じ取っていた。
しかし今はこの眼前を覆う巨大なる壁——大海の旧神ノーデンスを屠るが先と、奴の駆る神機・ノーデンスを睨め付けた。
「今は一先ずこいつを……!ウィスパ、こいつを海上に向けてブチ抜く!アイリス、俺の射線上へ燃え女と爆風娘を誘い込め!」
『『イエス、マスター!』』
視界に捉える神機・ノーデンス。
さらにその後方——ヒュペルボレオスに取り付き今なお襲撃を敢行する化け蛸。
この
だが聡い奴らに気付かれぬ様事を成すには、最新の注意を払う必要があった。
そこまで作戦を練った所で、ようやく忘れていた重要戦力への通信を飛ばす。
「おいっ、無事かオリエル!ちゃんと上空防衛線は死守できてんだろうなっ!?」
『くっ……
『制空兵装各機を含め、臨時にそれら戦力をまとめて奴らに叩きつけている所だっ!』
「流石に
「アイリスをあんたに預ける!テラーズドレッドと合流して俺の策に乗ってくれ!」
『考えがある様だな……いいだろう!アイリス嬢を率いて、その策とやらに便乗させてもらおう!』
邪神共がこちらの深層心理まで読めない事前提ではあるが、多くを語らず目標座標とタイミングのデータ送信で作戦展開を依頼した。
だがそこは流石の
機体モニターでは名乗りを後回しにし——しかし笑顔で手を振り存在をアピールして来る二人の可愛げなお嬢が映り込む。
言わずと知れたアイリスと同じ存在である
『彼女達は、赤い子が〈火〉のファイアボルト・ラフリートで……紫の子が〈風〉のエクリス・イニーベルなのですっ!二人とも大切な姉妹達なのですぅ!』
「ああ、姉妹紹介ありがとなウィスパ!戦いが終わったらまた二人と……んでもってヒュペルボレオス内にいる二人共ちゃんと話をしよう!」
『ハイ、なのですぅ!』
ウィスパの簡単な紹介を経て、策の遂行をと
己と神機・ノーデンスの位置。
ヒュペルボレオスを穿つ化け蛸共の状況。
神機・クトゥグア……同じくハスターを牽制するテラーズ・ドレッドの姿。
そして——オリエルのメタトロン率いる上空防衛線の戦況全てを思考へと描き、
俺が
浮かぶイメージのまま双眸を閉じ……見開くと共に捉えた神機・ノーデンスの姿を睨め付ける。
「俺について来れるか!?狂気を司る邪神共っ!」
構えた
§ § §
「カカッ!小賢しい……このワシを翻弄するか——
一時を挟み形成が逆転した白翁の巨人を駆る
〈水〉を冠するアクア・ドレッドとの換装からこちら、大海纏う水竜となったそれは先の劣勢が嘘の様に立ち回る。
海洋生物の中には人を貫く強靭且つ鋭い顎を持ち、回遊魚とは思えぬ速度で突撃して海の凶器と化す魚類も存在する。
さしもの大海の巨躯でさえ想定外の攻撃で防戦一方となり——構える
さらには——
「……くっ!?この竜機、我が分身である邪神霊機——その海中運用効率を上回るだと!?この大海を司る我を超えてくるなど……面白いっ!!」
大海の巨躯が豪快に――しかし僅かの焦りを、期待乗せた笑いで吹き飛ばす。
すでに眼前の人類との戦いに、巨躯らしからぬ愉悦を彼は感じていた。
尚も増す突撃速度。
止まらぬ竜機の海中運動性能は、身軽な中小の魚類に相当する機動性能。
転進一つで白翁の巨人との性能差を開きにかかる。
同時にそれは白翁の巨人側の回避の遅れに繋がり——
「ボディがガラ空きだぜっ!髭ジィさんよっ!ウィスパ……打ち合わせ通り、頼むぜ!」
『イエス、なのですぅ!マスター!』
遅れる巨人の回避状況で頃合いと見計らった救世の当主。
さらに速度を上げた旋回の後、一気に潜行深度を下げたかと思えば……白翁の巨人——その背後に位置する海面へと突き進む様に突撃進路を取った。
「草薙流閃武闘術 竜機外式……
それは深海より浮上する水竜の突撃。
あらゆる海流の流れでその身を加速させた機体。
分厚い水圧の壁をも貫く
海流すらカタパルトに変え――天まで貫く加速力を得た水竜が、白翁の巨人目掛け一気に猛撃した。
『ぬぅぅがあぁぁぁぁーーーーっっ!?』
白翁の巨人が
貫く勢いの
しかし回転は止まることなく、その豪腕まで焼き切っていく。
一方——
海上から
『ちょこまかと、こいつら……しかし侮れない!由々しきかな、由々しきかな!』
『おいっ、この燃えカス!ちゃんとこっちもフォローしないか!消し炭に——』
『この後に及んで痴話喧嘩に興じる様では、我ら人類の連携は破れんぞ!邪神とやら!』
『アイリス嬢、ファイアボルト嬢……そしてエクリス嬢はそのまま支援戦闘機でクトゥグアとハスターを引き付けてくれ!制空兵装で私が上空の尖兵を誘い込む!』
「了解です、騎士様!とても久しぶりなところごめんね!?ファイアボルトにエクリス!私達のマスターと騎士様への協力をお願い!」
『ニシシッ!良いって、良いってー!アイリスも素敵なマスターに出会ったものだねーー!』
『ほんとだね~~!じゃあ、作戦開始~~!』
聖霊騎士が二人の
未だに痴話喧嘩の収まらぬ二人のお転婆邪神は、その真意を悟れぬままに海上——水竜が浮上して来る場所へと誘導されてしまった。
『このお転婆共がっ!そこは巻き沿いを喰らうぞっっ!!』
まさに竜が浮上する刹那。
お転婆邪神二人の機体へ通信が飛ぶ。
「なっ……巻き沿いとは!?説明を所望——」
「うっさいよ、ジジィ!こっちも忙しい——」
それに返す二人の言葉が最後まで続く事なく——
水竜の突撃が白翁の巨人を海中より押し出し……高々と打ち上げられた高波ごと、二人のお転婆邪神を機体諸共上空へと弾き飛ばしたのだ。
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