第3章 汎用列車型決戦兵器「疾風怒濤」殺人事件

第34話 今こそりある危機

 好子とサニーは、衝撃のタキシードである美樹と向かい合っていた。

 がたがたと部屋全体が揺れる。部屋の中央にあったシャングリラが落ちそうなほど、左右へ振れた。

 サニーが美樹の突風魔法で吹き飛ばされた。部屋の壁にぶつかる。

 ぐっと変な音を出して、サニーの体が崩れ落ちる。

「先輩!」と好子は駆け寄って、彼女の体を起こした。


 サニーの意識が薄れかかっていた。

「ひどい!」

 好子はそう叫んで、美樹をにらみつけた。ただし、美樹はタキシードを着ていなかった。スーツ姿である。

 美樹も好子たちをにらみ返した。

 そして、こう問いただしたのである。

「ひどいのはどちらかしらね?お前たちがやったんでしょう!さあ、素直に白状はくじょうなさい!」

「――そんな!私たちは何もやってません」と好子はしぼるような声で言い返した。

「ウソおっしゃい!この人殺し!」

 怒った彼女は、攻撃の手をゆるめようとしない。


 目を閉じた好子は、どうしてこんなことになったのかを思い出そうとした。

 話の発端ほったんは、今から約48時間前にさかのぼる。


* * *

 8月に入ると、夏の暑さは厳しさを増してきた。

 ついに、魔法機動隊では、BB団の捜査が許された。

 好子たちは、上司たちに、衝撃のタキシードがルンルン美樹であることを報告していた。警察の上層部から、これらの報告は一般に受け入れがたいので、引き続き調査せよと、命令が下された。

 つまり、証拠を出せということである。

 そこで、好子とサニーは、美樹と花子の身辺しんぺん調査をしたが、結局、何もえられるものはなかった。カモメのセーラーサンの足取りも分からないままである。


 そんなある日、二通の招待状が、第08魔法少女小隊へ届けられた。

 その招待状には、「ジーパン様とサニー様へ」とあて名が書かれたメッセージカードが添えられていた。送り主は「ケニ屋」であった。

 届けられた日の朝、第08小隊の待機室に集まったサニーと黒子の前で、好子が読み上げた。なお、冒頭は難しい漢字があったので、読み飛ばした。



 ジーパン様とサニー様へ


このたび、わが社が開発した汎用はんよう列車型決戦兵器「疾風怒濤しっぷうどとう」の披露ひろうねまして、以下にご案内いたしますとおり、3泊4日で列車の旅行を計画しております。

つきましては、お二人を無料で招待したいと存じております。ふるってご参加くださいますよう心から願っております。



 そこまで読み上げると、しばらく黙読もくどくしていた好子は首をひねった。「明日、金曜日のお昼12時に県警本部前に、迎えの車が来るそうですよ。いったい、どういうつもりなんでしょうか?」

「さあね」とサニーは答えた。「でも、面白そうじゃない。参加してみましょう」

 後から考えれば、このサニーの判断は間違いであった。

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