第29話 禁じられた調べ

 工場消失事件と新幹線爆破未遂みすい事件から数日後、好子とサニーは、町の中を歩きながらパトロールしていた。

 今は昼下がりである。

 彼女たちの学校は夏休みに入っている。クラスメイトは海や山へ旅行するなど、休みを満喫まんきつしている。それなのに、警官である二人には、夏休みなどないのだ。


 夏は異常気象のせいで、かなり暑かった。アスファルトが今にも溶けそうなくらいだ。

 汗をぬぐいながら、好子がサニーに問いかけた。

「なんで、私たち、こんなに暑いのに、パトロール巡回じゅんかいをやらなければならないんですか?事件が起きるまで、私たち魔法機動隊は待機室で待てばいいでしょう」

「同感ね。ジーパン。いくら仕事とはいえ、これじゃ、し風呂にいる気分よ」

 珍しく、サニーと意見が合った。


 どこかのカフェにでも入りたくなったが、金を節約したい好子は、我慢するほかなかった。

 BB団と戦うための資金が必要だった。そのためには、できるだけ、お金をめようということで、サニーと話し合って決めたのである。

 つまり、禁じられているBB団の捜査を、好子たちは、ひそかに続けていた。

 大富豪である衝撃のタキシードは無理でも、部下のセーラーサンはぜひとも、自分たちの手で逮捕したかったのだ。


「――あれから、セーラーサンとタキシードたちは、どこへ行ったのか、わからずじまいなんですか?」と好子は聞いた。

「そうね。あの警部は捜査の進み具合をあたしたちに教えてくれないし。手がかりは工場が言っていた『人類シンデレラガー計画』のキーワードだけね」

「人類シンデレラガー計画?」

 思わず、好子は聞き返した。

 確かに、魂を吹き込まれた廃工場が言ってたような気がする。とはいえ、キーワード一語で、どれだけ、BB団にせまれるのだろうか。


 好子は別の手がかりを検討させたかった。

「もうすこし具体的な手がかりが欲しいですね。例えば、目撃者とか――」

「目撃者ねえ……」とサニーは首をひねる。

「探せば、いるかもしれませんよ。通りすがりのおっさんとか、廃墟はいきょマニアとかいますもん」

「ちょっと待って!」


 サニーが考え込むように言った。「いるかもしれない。……いえ、たしかに一人いた!」

 好子は驚いた。

 サニーの目がさんさんと輝いていた。太陽に負けないくらいにまぶしかった。何かを思い出したらしかった。


「いたのよ!ほら、思い出して。ジーパン。あの廃工場の入口には、見張りの警官がいたの」

 しばらく考えて、好子はようやく思い出した。

 サニーが言っているのは、マジカル身分証明書を見せた、あの婦人警察官だ。あの日、彼女は工場の入口に立っていた。

「ああ、そう言われれば、いましたね」

「ね?彼女なら、だれかを目撃しているかもしれない」とサニーは喜んだ。


 そこで、二人は、あの見張りの警官を探すことに決めた。

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