第26話 武器よ、こんにちは

 サニーは髪をとかし終えて、パジャマからブレザーの制服に着替えた。

 着替えてから、「アームドさんは魔法武器のスペシャリストよ。だから、敵に対抗できる強力な武器をもらおうってわけ。コムラさんにも来てもらうつもり」と好子に言った。

「コムラ先輩には何を頼むつもりなんですか?」

「もちろん、アームドさんの通訳をしてもらうの。わかる?ジーパン」

 好子は、それを聞いて納得した。

「ああ、アームド先輩って、無口ですもんね。ほんとう、何を考えてるんだか――」


 とつぜん、待機室のドアが開いた。

「おっす!みんな、元気でやってるか!」と威勢いせいのよい声が飛び込んだ。コムラこと、ほむら 巴月はづきの声だった。

 髪をひとたばにまとめた大きなポニーテールが目立つ。それ以上に、声がやたら大きくて、遠くからでも聞こえるのだ。

 今日の服は、ボーイッシュな短パンと白のカッターシャツ。日焼けした肌が対照的だった。

 巴月がきょろきょろと部屋を見回す。

「お?17歳さんはいないのか?」

「課長のところへ行っています。コムラ先輩」と好子が答えた。


 巴月はニカッと白い歯を見せて笑った。

「おう、ジーパン。おさげが良く似合ってるぜ。ゴムバンドがピンクでかわいいな」と、巴月は、髪をたばねている好子のゴムバンドをほめた。

 ほめられて、好子も悪い気はしない。

「ありがとうございます。コムラ先輩。あいかわらず元気ですね」

 すると、巴月は「へへっ、元気だけが取りえだよ」と照れ隠しに鼻をこすった。


「こんにちは。コムラ先輩。今日はおりいって、お願いしたいことがあるんです」とサニーはお辞儀をしながら言った。

「なんだ?かわいい後輩の頼みだ。なんでも相談にのってやる」

「強力な魔法の武器が欲しいんです。どんな魔法少女にも勝てるような……」

「ヤブから棒の話だな。なんで、また、そんなのが欲しいんだ?」

 サニーは昨日の戦いについて、事細かくコムラに語った。

 衝撃のタキシードは資産6兆円以上を持つ金持ちであり、どんな魔法も使える。そのせいで負けたのだと話すと、巴月の表情がくもった。


「うーん」と巴月はうなり声を上げた。サニーの頼みに困っているようだ。

 それを見ていたサニーは肩を落とした。

「だめですか?」

「いや、そうじゃないんだ。サニー、いいかい?ファウスト交換の原理によって、金持ちの魔法少女が勝つんだ。金があれば、より強力な魔法を多く使える。それが絶対のことわりだ」

「当然です。でも、魔法道具は、そんなに金がかかりませんから、それを使えば、万に一つ、勝てるかもしれません」

「おいおい、魔法道具の銃で撃たれようが、魔法少女は銃弾じゅうだんをふせげるんだぜ。その衝撃のタキシードってやつは、私たち二人でかかっても勝つのが無理だ。なあ、アームド」

 巴月は、いないはずの麗美れみに声をかけた。

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