第24話 新幹線大爆破せず

 好子の話を聞きながら、黒子はうんうんとあいづちを打ち、「よくやったのだわさ」とろうをねぎらった。

「でも、私、眠ってからの記憶がないんです。いったい、なぜ、こんな所にいるんですか?なにが起こったんです?」

 好子は疑問を黒子へぶつけた。

「それは、順を追って説明した方がよさそうだわさ。まず、昨晩、私がここで残業していたときの事から――」


 黒子の話はこうだった。

 昨日の夜、待機室にいた黒子は、サニーから電話で連絡を受けた。廃工場でワナにかかっており、助けてほしいと言う。さらに、BB団が新幹線を爆破するという企みを知った。

 そこで、黒子は、琴海警部にその計画を知らせると、自分は、パトカーで廃工場へと向かった。

 ところが、向かった先で、思わぬ事態に遭遇そうぐうした。

 あるはずの工場がないではないか。建物そのものが、あとかたもなく消えてしまっていた。

 敵の魔法少女のしわざだと思った。黒子は工場がたっていたはずの更地さらちに入って、サニーと好子を探した。だが、だれも見つからなかった。

 しかたなく、工場の周辺を探していた黒子は、酔っぱらった女たちにからまれているサニーを発見した。

「――で、救い出して、この待機室まで連れてきたのだわさ。話を聞くと、衝撃のタキシードから逃げてきたと言うじゃないの。キスの効果で不幸な目にあっていたのだけど、あの子はね、そばで眠っているあなたを、酔っぱらいから必死で守ろうとしていたのだわさ。サニーに感謝なさい」と黒子は優しい声で言った。


 そうか。サニー先輩が守ってくれたのか。

 案外と、あれはあれで、いい人なのかもしれない


 まだ毛布にくるまって眠っているサニーへ、好子は感謝するつもりで、髪をなでた。


 琴海警部が好子の前に進み出た。

「ジーパンさん、私たち、刑事課も、あなたに感謝しなければならないわ。新幹線爆破計画を未然みぜんに防ぐことができたのは、あなたたちがくれた情報のおかげよ。ありがとう」

「爆弾を見つけることができたんですか?」と好子が聞いた。

「ええ、昨夜、私が黒子から通報を受けてから、すぐに、鉄道各社に連絡を取って、刑事みんなで、夜中に新幹線の総点検をしたの。ダイヤが乱れちゃったけど、高性能爆弾を車両の底から見つけたわ。それで、無事に爆弾を回収して、なにごともなかったかのように、無事に新幹線が走っているのよ」

 つまり、BB団の恐るべき計略は失敗に終わったのだ。

 好子は、ほっと胸をなでおろした。


 一通り、お礼をべると、琴海警部は自分の部署へ帰っていった。

 もちろん、事件はこれで終わりではなかった。まだ、衝撃のタキシードをはじめ、BB団をだれも捕まえていないのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る