第17話 BB団爆本伝

「BB団……ってなんですか?」と、興味深そうに、琴海の話を聞いていたサニーが横からたずねてきた。

 琴海警部は、こほんとからセキをした。

「各国をまたにかけた国際的な犯罪組織、BB団。奴らは、密輸、誘拐、強盗、殺人の請負うけおい、ありとあらゆる凶悪な犯罪に手を染めている。ベルバラという謎の人物を崇拝すうはいしていること以外は、謎のベールに包まれているの。それが日本で活動を始めたとなると、やっかいだわ。――あなたたち、南シナ海の事件を知らない?」

 サニーも好子も首を横に振った。「BB団」という組織すら、初めて聞く名前だというのに。


 琴海警部が説明を続けようとすると、黒子が口をはさんだ。

「……琴海、あの事件は11年前の話だから、まだ、この子たちは生まれてないのだわさ。A国の原子力空母が、たった10分で、7人の魔法少女たちによってしずめられた事件を」

「ええ、そうね。あの事件は世界に衝撃を与えて、世間の魔法少女に対する考え方が変わったわ。その7人は、のちに7大災厄と呼ばれるようになったけど。あれから11年か。お互い、年を取ったわね。黒子」と琴海は、しんみりと昔を思い出す。


「昔のことはいいだわさ。琴海、今はBB団の活動を抑えることが先決だわ」

「それもそうね、黒子」と琴海が我にかえった。「ジーパンさん、ありがと。急いで、捜査本部に戻って、みんなに知らせなきゃ」


 琴海が弾丸だんがんのように走り出して、部屋を出た。

 嵐が去った後で、「本当にバイタリティのある人ですね」とサニーが感心するように言う。

 黒子は、彼女が警察学校の同期だと明かした。「あの子、昔から、ああなのだわさ。魔法が使えない代わりに、口と行動力で、事件を突破していくと言ったらよいのかしらん。――まあ、事件の捜査情報をうちに流してくれるから、ムゲにはできないだわね。敵の正体が明らかになった以上、ゼロハチ小隊も、刑事課の犯罪捜査を応援しなければ……」


 好子は目を輝かせた。

「かっこいい!」

 好子はあのような刑事を目指して、この警察へ入ったのだ。巨大な悪党と戦う正義の警察官。

 しかし、今やっているのは、パソコン相手に四苦八苦している退屈な事務作業である。

 読書感想文が苦手な彼女は、文章そのものを書くという作業が嫌いだった。魔法機動隊を志望したのも、事務が少なく、事件現場に駆けつける実務じつむ部隊だと聞いていたからだ。


 それがどうだ。

 いまや、あわれな奴隷ではないか


 事件が起きない間は、待機室で、サニーにつつかれながら、報告書を書かされる。事件が起きたら、サニーに怒鳴られながら、お金のかかる魔法を使わされる。魔法を使えば、ファウスト交換の原理によって、預金通帳の残高が減るにもかかわらず、だ。

 こんな日常は、もう、うんざりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る