第11話 カモメのセーラーサン

「助かった……」と犯人であるはずの魔法少女が喜ぶ。


 そのまま、サニーのところまで走ってきて、お礼をべた。「ありがとうございました。あやうく、あなたの相棒に殺されるところでした。あなたの魔法のおかげです」

「あんた、名前は?」とサニーが聞くと、彼女は自己紹介を始めた。

「本名は言えませんが……ニックネームは『カモメのセーラーサン』です。今回は、お騒がせしました。大変、申し訳ありません。私が8000万円を欲しかったのは、病気がちの母親を、魔法で治してあげたかったからです。今、目が覚めました。私が間違っていたんです」


 セーラーサンは妙にしおらしく、下手したてに出ていた。

 サニーは身構えた。

「ええと、セーラーサン。あんたがやってきたことを反省してるわけ?」

「そうです」とセーラーサンが神妙しんみょうな顔つきで答えた。

「つまり、魔法で電車を持ち上げたのも、あなたがやったことなのね、セーラーサン」

「私がやりました……」


 ノレンに腕押し、ヌカにクギとはこのことだった。セーラーサンが言われるがまま、犯行を認めていく。

 それを聞いていたサニーがあることに気づいた。


 おかしい。

 さっきから、この子、一度も魔法を使おうとしていない。


 サニーはためらいがちに聞いてみた。

「……ひょっとして、あんた、電車を操る魔法に、自分の全財産を使っちゃったわけ?」

「はい」と中学生のセーラーサンがうつむきながら言った。


 なるほど。

 つまり、現在は、魔法が使えないわけだ。


 そうだとすると、話が早かった。魔法を使えない魔法少女は、ありふれた少女である。刑事たちにセーラーサンを引き渡せば、しかるべき所へ連行してくれるだろう。

 今までの話を聞くと、彼女は自爆するような性格でもないと思われた。

 サニーは刑事たちの姿を目で探した。探そうと、周りを見渡した時、大通りに突風がいた。


 彼女はとっさに、目をつぶった。

 目を開けた次の瞬間しゅんかん、目の前のセーラーサンがどこにもいなくなっていた。

「消えた?まさか――」

 大通りには、人が一人もいなかった。あるのは、赤色灯が光るパトカーが数台だけである。


 サニーは好子の方を向いた。消えたのは彼女が魔法を使ったからではないかと疑ったからだ。

 だが、好子のせいではなかった。

 なぜなら、当の本人は地面に倒れていたからだった。

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