屈辱の日、再び

   皇紀2678年3月16日―いわゆる西暦2018年3月16日



 今日、多くの人々がテレビなり、ラジオなり、ネットの前で落胆したことであろう。


 午後にあった大乱闘国会議員クラッシュターミネーターズの話ではない。


 いや、ここは記憶に残すためにも書いておいた方が良いだろう―例えソレが身内の恥だとしても


 政府は此度の戦争の終結―講和条約も何も結んでいない戦線の硬直に伴う疑似的な休戦ではあるが―を契機に①各地の復興策や②それに付随した中央官庁の再編と③国境線監視強化等を柱とした攻勢の軍事体制から守勢攻勢に優れた柔軟な体制への刷新

の三つを中心とした新たな国家体制を論議するために三日ほど前から臨時国会を召集した。


 事件は今日、午後の委員会で起きた。


 この委員会は新元号の取り決める為、高名な学者先生を招いて開催されたものであったようではあるのだが、参加した議員先生含み多くの人物が生き残るために身体の強化・機械化をしているのが仇になった。


 議論が始まったはいいが、縁起のよさと歴史的なアレコレを踏まえて有力案をださずにのらりくらりと煮え切らない議論を交わしていた学者先生に普段の調子でヤジを飛ばした議員先生。

 

 中でも、とある議員先生と学者先生は大学時代の同門らしく議論はソッチノケにされて互いの悪口合戦は白熱。それを止めようとしていた周りの諸先生方も段々とその熱に浮かされでもしたのか興奮。


 元々、ついこないだまで身近で戦争が起きていたのも悪かったのだろう。誰も彼もが自制心に欠けて血気盛んである。


 カッとなった学者先生が相手に水をぶっかけたことから見事に開戦。


 議場はもうしっちゃかめっちゃかの大混乱。


 椅子は壊れ、テーブルや論壇は潰され、壁に穴は開いて、扉は破られた。


 かくてこの騒乱は衆目の目にリアルタイムで触れ、多くの人の失笑とそして喝采を浴びた。いい退屈しのぎになったのだろう


 ―閑話休題


 問題は今日の午後に伝えられた、皇国の自立と中ロとの和平を議題にした、臨時の国連安全保障理事会の内容だ。

 臨時理事会において常任理事国である米英が主張した、両国が駐留し暫定的に保護している北海道・沖縄と、皇国が実力行使のうえで実効支配した本州・九州をあわせて日本の復興が成ったとし、文化委託政策の終了と中ロとの停戦、そして復興支援を行うべしとの声明に、これはまあ当然として中ロが大反対。


 望みは残された常任理事国のフランスとその他非常任国から出席した東西ヨーロッパから選出の三か国―オーストリア、スウェーデン、イタリアとアジア選出のインドに託された。

 

 しかし、米英に―ひいては皇国に味方したのは、味方になってくれたのはインドのみだった。


 悔しいことに、東西のヨーロッパでは、日本語のキャラクター名と呼ばれる奇怪な名前を貧民に取り入れさせることで国連から補助金を受け取っており、これを貧民保護に役立てているという。もはや政策の一環として取り入れてしまい、これが成果を挙げていることからなんとかこの制度の存続を願っているだろう


 さらに、日本から強奪した文化財や文化遺産を観光名所として活用して観光客を誘致していることもあり、これを手放したくも無いようだ


 結局、日本の文化を守るためだとかいうのは綺麗なお題目の建前に過ぎず、本音は自分たちの国でいかにこれを金に換えるかという獣がごとき欲望だ。


 この世に或る善意や正義といった言葉に泥をかぶせるがごとき行為である。


 そして、今を生きる皇国国民と死んでいった日本国民に対する侮蔑である。


 私は、今日という日の屈辱を忘れることがないだろう。



 

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