とある皇国軍士官の日誌

不破 雷堂

開放記念

      皇紀2678年2月11日―いわゆる西暦2018年2月11日


 栄えある建国記念日に我々皇軍が幾多もの流血と挫折を乗り越え、全九州の開放に成功したという朗報は、電撃的なまでに本州・四国へと遍く知れ渡った。


 これを持ってあの忌々しき国連が要求していた“旧日本領の8割以上を実効支配し国境線を確保する”という課題の達成は成った。


 ついに我々は故国の再興への一歩を踏み出したのだ。


 あの屈辱的な国連による文化委託政策によって、我々は多くのものを失った。

 

 関東大震災と南海トラフ大地震、さらにはそれに伴う富士山の噴火によって悲嘆にくれる我が国から重要な文化遺産や文化財を根こそぎ、文化委託政策の名のもとに強奪していった国連―中でもユネスコとやらの巫山戯た政策と呼ぶも烏滸がましい暴挙に怒りの声を挙げたことは誰の記憶にも新しいだろう。


 そして、我々の抗議の声を理由に国連決議に反すると軍勢を送り込んできた中国とロシアへの憤怒は未だ多くの国民の胸中から消し去れぬだろうことは、この国に住まう誰もが理解しうることだろう。


 我々は我々の国家と文化とそして今までの通りの生活を取り戻すために国会において皇国への移行を決議、国民投票による圧倒的多数の支持を受けて、これを宣言した。

 

 本当に永きに渡る戦いであった。


 老いも若きも多くのものが志願して、その身体を機械化・あるいは遺伝子操作によって強化して戦場へと旅立ち、そして還って来ぬものも多くあった。


 ― ここでいう戦場は実際の戦火に飛び込んだものだけでなく災害からの復興及び

犠牲者の救助に向かった者たちも含む。


 戦いの果てに得たものは今はまだ何もない。強いて言えば荒廃した領土―それも元を正せば我が国の―のみだ


 我が国に巣喰っていた夥しいまでの不正移民どもを送還し、祖国を売り渡そうとしていた売国奴たちを放逐し、そして中ロを中心とした占領軍どもを撃ち払って、ついに我々は旧日本領の大半を取り戻すことに成功した。


 あとは、この戦果を持って臨む外交戦の話である。


 門外漢である軍人たる私が出来るのは、祈ることのみである。 

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