第6話リスライル社、管理責任者(先輩)のお話

【高校生】 斬咲 霧斗


それから1時間かけてついた。

『いやー、リアルの世界は見たことの無い物だらけじゃのう。見てて飽きないのう』

ヘリスはさっきからはしゃいでいる。

みっともないだろうが。落ち着け。

ヘリスと会話出来る理由、それは簡単で電話機能を使い、俺の携帯にかけてきたのだ。

「じゃあ、入るか」

そう言って俺は落ち着かないヘリスを黙らしてリスライル社に入って行った。



「ではこちらの部屋でお待ちください」

そう言って俺は最上階のやけに広い部屋に連れてこられた。

社長室かな?

でも広すぎるような気がする。

『まあ、待てと言われているのだからゆっくり待てば良いのではないか?』

それもそうだ。

という訳で置いてあったお菓子とお茶を(勝手に)頂いて待つ事に。

5分程待つと・・・

「待たせてしまって申し訳ありません。FWO管理責任者が寝ていて起こすに一苦労していました」

俺をここに連れてきた人がそう謝ってきた。いや、管理責任者。呼んだのはそっちなんだから準備しとけよ。

「いや~、待たせてしまって悪かったなー」

本当にそうだよ。もう少し責任者として自覚を持って・・・ん?

この声・・・それにこの口調。まさか!?

すると俺は後ろから抱きつかれた。

!?

え、嘘だろ!?

後ろにいたのは・・・

「今日の生徒総会ぶりやな?キリやん」

俺の通っている高校の現生徒会長の緋颯 月夜先輩がいた。

「何で会長がここに?」

「何でってウチが管理責任者やからに決まっておるやろ?」

ハッハッハッー、月夜会長さん、なかなか面白いジョークを言うねー・・・マジか。

「で、呼んだ理由は分かるやろ?」

「ヘリスの事ですか?」

「そうそう。あの娘がシステムには無い〝奇跡〟を起こした。それがキリやんを呼んだ理由やでー」

やっぱりか。じゃなきゃアミュスギアを持ってこさせた理由が無い。

「やっぱり、バグなんですか?」

FWOで時折確認されている不正プレイヤーによって発生するバグ。

それしか考えられない。

「いんや、それとはちゃうで。今回のはバグじゃないんよ?」

しかし会長は、違うと言った。

え?じゃあ一体・・・。

「さっきも言ったやないか。〝奇跡〟やって」

あ、そうだ。

でもそれってヤバいのでは・・・。

「正直バグと奇跡を見分けるのは難しいや。でも今回の件に関しては奇跡やとウチは思うで?」

会長はそこのところの勘は鋭い。

この人に隠し事なんて出来ない。

「しかしどうするんや?その娘?」

「ん、どうするとは?」

「こっちの世界を色々見たいやろう?」

あー、なるほど。

『ちなみに妾は色々見たいぞ?』

分かった分かった。一応考えておくよ。

「そこでや!ウチの会社が明日新商品を発売するのは知っとるか?」

「ああ、確か【AIペット】でしたっけ?」

【AI搭載型自立稼働式ペットロボット】の事で、発売が発表されたのは3年前なのに注文数が1億に及ぶとか。

どんだけ欲しいんだよ。あ、侑里も欲しがってたっけ?

「そうそう。でな、【OBM】には【次世代型学習自律式AI ヴェブズトザイン】が使われておるんや」

ちょっと待って。なんだその素敵な名前のAIは。

というか先輩が何を言いたいか分かったぞ。

「【AIペット】のAIを【ヴェブズトザイン】に入れ換えるんですね?」

「そう言うことや!いや~キリやんは話が早くてほんま助かるわ~」

なるほど、そうすれば周りの風景に溶け込んで変な目で見られることは無い。

名案だな。

でも・・・

「代償は何ですか?」

この先輩が代償無しでここまでするはずが無い。

「いや~鋭いなー。そりゃあキリやんがウチのモノになってくれれば・・・」

「お断りして良いですか?」

やっぱり。

この人はなんでか知らないけど俺が欲しいようでなにかと条件をつけてくる。

「冗談やからさー、安心しなはれよ」

あんたの言う事が冗談に聞こえないから不安なんだよ。

「仕方ないなー、今度の修学旅行で1日付き合ってくれへん?」

「まあ、それぐらいなら」

俺の通う高校【華呉朱高等学校】は修学旅行が入学してすぐにあるらしい。

ちなみに1週間後に修学旅行だ。

その時に1日付き合えば良いなら良いか。

『お主・・・慣れておるの』

この人のせいでな。

「それじゃアミュスギアを貸してくれへんか?」

俺はアミュスギアを会長に渡した。

「じゃあ四朗やん、後はよろしくなー」

「仰せのままに、お嬢様」

いつの間にか会長の隣にもう一人の人物がいた。

「あ、四朗先輩。居たんですか?」

「フフ、霧斗君。最初からいましたよ?もっと気配を感じられるようにしないと、私を見つけられませんよ?」

彼は影山 四朗先輩。俺の通っている高校の現生徒会長秘書を勤めている。

この人は優しいんだけどたまに襲ってくる。

・・・掘る掘られるとかでは無く、マジで襲ってくる。

学校でも、天井から奇襲されたり、通学路にはワイヤートラップなどが設置されている。

・・・普通に学校に行きたい。

「では、少々お待ちを」

そう言って四朗先輩は姿を消した。

忍者かよ、あの人は・・・。

「実際に四やんは忍者の子孫らしいで?」

会長、ナチュラルに人の心を的確に読むな。

あ、最初この部屋に来てから気になっていた疑問でも聞いてみるか。

「ところで、この部屋ってなんでこんなに広いんです?」

「ああそれはな、こうすると・・・」

そう言って会長はソファーにあったボタンを押した。

すると・・・

壁や天井が全てスクリーンになった。

そこには様々な映像が写し出されていた。

「・・・もしかしてFWOの中をこれで覗いていました?」

「そうそう、ここの下がちょうど管理ルームがあるからついでに配線を伸ばしてもらったんや」

凄い我が儘だな、おい。

でもこれは良いな。今度改めて見せてもらうか。

・・・ん?

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