第4話死神蜘蛛との対話

【無職】 キリア・スレイ


『ほう、お主はなかなか面白い経験をして来たようじゃのう。はっはっはっ』


「面白いというか、酷い目にあってるよ・・・」


この巨大蜘蛛のヘル・グリアスもといへリス(キリサが勝手につけた)とは、話してすぐ意気投合した。話してみると、気さくで良い奴だった。

しかし俺の思い出話もとい黒歴史で大爆笑してる。

Sなのかな?


『いやー、実に良い一時だったぞ。で、どうするのじゃ?』


「何が?」


『戦うか否かという事じゃ』


そう、ここに来たのはこの迷宮を攻略するため。

攻略するためにはへリスを倒さないといけない。

普通のプレイヤーなら、戦力的に諦めるかもしれないが・・・。


「そうだな、やるか」


俺は一度やると決めた事は絶対にやり遂げる主義だ。


『うむ』


へリスも何も言わない。

覚悟を決めた戦士に言葉はいらない。自らの全力で相手を倒す。それが相手に対する礼儀だと俺は思う。


『行くぞ!!』


「来い!!」


そして俺とへリス。二人による戦いが始まった。




『粘着糸!』


蜘蛛特有の糸、普通のプレイヤーならこの糸に一瞬で捕まるのかもしれないが・・・


「楽勝だ!」



俺はそれを自慢のスピードでかわす。

『なら、これはどうじゃ?蜘蛛猛毒!」


これを食らえば一瞬でHPバーが0になるだろうが・・・

「毒はこっちも使えるんだよ!毒龍の一撃!」

毒龍を倒した時に手に入れたスキルの攻撃で相殺する。

三つ首の内一つは相殺するため、使われたが、残り二つの毒龍がへリスを襲う。

さらに、俺は鞭鎌をへリスの体に引っ掻ける事でへリスは常にダメージを受けることになる。

『ぐぬ!!やるではないか、キリサ!!』

「お前もな!!」

俺達はまるで踊るかのように戦っていた。

そんな風にやっていたら何か違和感を感じた。

なんというか体が重い?

その影響か最初に比べて体の動きが鈍っているのだ。

一体なんだ?

『やっと効果が出始めたか・・・。なかなかの防御があるようじゃのう。正直、嫌になる堅さじゃのう』

「一体、何をしたんだ?」

『簡単な話よ。毒の中に麻痺毒と強酸毒を加えておいたのじゃよ。蜘蛛の十八番のトラップじゃ』

クソ、やられた。

まさか戦闘中にそこまで考えていたとは思わなかった。

しかも武器も防具も使い物にならないしな・・・

鞭鎌はへリスに突き刺さったままで先ほど手を離してしまった。

弓矢は全弾撃ち尽くした。

大盾は溶けた。

打つ手無し、これはもう諦めるか・・・

いや、諦めるものか。武器が無くてもまだ戦える。

俺は負けず嫌いだ。しかも・・・

楽しい。圧倒的に不利な状況。だが、いや、だからこそ面白い!!

強い者との戦いが人を成長させる。

俺はそう考えている。

若干戦闘狂が混じっていると自覚している。

「しかし、どう攻撃しようか?」

そう。いくらやる気があっても攻撃出来なければ意味が無い。

そこでふとある考えを思い付いた。

それは普通誰も考える事は無い作戦だ。無謀にも程がある、無茶な作戦。だが俺は・・・

「へリス!!俺は今からお前に最後の攻撃をする。だから本気でかかってこい!!」

敢えてやる。それが必ず通用すると確信して。

『そうか、見せてみろ!!お前の力を!!』

俺とヘリスによる戦い、そのファイナルラウンドが始まった。


【命断蜘蛛】 ヘル・グリアス


へリスは嬉しかった。今まで、そうGM(ゲームマスター)に作られてから初めて、嬉しいと思った。

彼女には意志があった。

彼女だけで無く、FWOに存在する全てのYBMに意志がある。

それは、彼女達はとあるAIのテストヘッドだからだ。

そのAIとは【次世代型学習自律式AI ヴェブズトザイン】。

より人間に近くなるように、感情を持ち、学習していくAIだ。

彼女は今まで、感情が無かった。誰一人来ないため戦う者がいなく、AIが成長しなかったのだ。

だがキリサに出会い、全てが変わった。

濁流の如く流れて来る感情。喜び、怒り、などの感情。しかし、その中に悲しみがあった。

何故?

(何故、妾が悲しいと思うのだ?)

しかしへリスは分かっていた。何故悲しいのか。

(そうか、キリアと会う事が無いからだ。もう、妾には会いに来ないから)

そう考えた。だからこそ、キリアとの最後の思い出を作るため、本気で攻撃する。


【無職】 キリア・スレイ


「鞭、カモン!!」

『え?』

俺は【鞭術】を使い、鞭を呼び戻した。

そう。へリスの背中に突き刺さったままの鞭鎌の持ち手を。

「ハッ!!」

そして俺は、へリスの背中に飛び乗り・・・

「じゃあ、やりますか・・・」

と言うと

いただきます。

――――ガブッ!!

へリスを喰い始めた。

『痛ーーーーー!!!!!?』

予想外過ぎる攻撃にへリスは衝撃を受けた。しかも、再生しないため痛みが無くならない。

そう、食べればOBMの肉体は再生しないのだ。

「吸収出来ないなら、喰ってやる!!!」

ちなみに俺はリアルで、あらゆる大食い料理を総なめにしているフードファイターなのだ。

だからこういうのには慣れてる。

体型は細いのにどこに入るんだろうと我ながら不思議に思っている。

俺は自分のHPバーを見ながら喰い続ける。理由は・・・

「耐性が、ガブガブ、無い属性も、ガブガブあるから、賭けなんだよなーー、ガブガブ」

強酸属性と麻痺属性の耐性を持っていない。だから賭けなのだ。

しかし、ヘリスがみすみす俺にただ喰われるはずが無い。

『ナメるでないわ!!』

「うわっ!!」

へリスに吹き飛ばされ

『受けるが良い!!』

鎌(前足二本)で左手を斬られた。

ぐわっ、ゲームなのにクッソ痛い。まるでリアルそのものだ。

「痛いだろうが!!」

お返しに鎌を喰いちぎってやる。

『まだまだーー!!』

「こっちのセリフだ!!」

肉は飛び散り、血飛沫が舞う。

それはまるで、獣同士が喰っては喰われる、地獄絵図かのようだった。

しかし、何事にも終わりがある。

お互いボロボロ。どちらも同じほどの怪我をしたが倒れたのは。

――――ズーーーン。

ヘリスだった。

『み、見事だ、キリア。妾の、負けじゃ』

「お前は強かった。けど俺の勝ちだ・・・」

体の半分以上を喰われたへリス。しかし、その声は満足そうに聞こえた。

一方俺も無傷では無い。全身傷だらけだし、左手は無くなったままだ。

鎧は見事に消滅してる。

これ、治るのかな?

『楽しかったぞ。・・・キリア・・・』

体が結晶が割れるような音をたてて砕け散った。こうしてOBMの一体、【ヘル・グリアス】は息を引き取った。



《プレイヤー非通知アナウンス》

《〔OBM開発NO.58〕【命断蜘蛛】 ヘル・グリロスの討伐を確認》

《OBM特典『命断大鎌 ヘル・グリアス』を譲渡しました》

《職業が未確定》

《プレイヤー名『キリア・スレイ』のシステム内経験値が限界点に到達》

《システム内における特定行動【■■■■】を確認しました》

《以上の条件を満たした事により職業【ザ・ワン】シリーズを解放》

《職業を選択中・・・》

《職業が確定しました》

《職業【■■】になりました》

《この決定により今後の【■■】の出現はありません》





「良い奴だったな・・・。お、レベルがめっちゃ上がったよ。スキルも増えたし・・・職業は文字が読めないから無視。後、宝箱?」

そう、宝箱だ。宝箱に入っている物といえばドロップアイテムと、相場で決まっている。

「さてさて、何が入っているかな?」

宝箱の中にあったのは・・・

――――――――――――――――――――――――――

『命断大鎌 ヘル・グリアス』

OBM特典 破壊不能 譲渡不能

STR+3000

MND+3000

スキル・・・【死魂復讐】【死亡宣告】

【死神鎧装】

――――――――――――――――――――――――――

「え、マジで?OBM特典?」

OBM特典とは簡単に言うとOBMを倒す事で獲得できる唯一無二のアイテムだ。

そのどれもがチート級の能力を持っているため、持っているプレイヤーは限られる。

そもそも初心者にはとても倒せる相手では無い。

それこそ上位プレイヤーでも1つ持っているかいないかと言われる。

俺、初心者ですけど。

それにしても・・・

「何か、死神的なアイテムだな」

物凄く禍々しいオーラが見える。

しかし、性能はまさにチートだ。俺は我慢できず早速装備する。

「おお!良い感じじゃん!!」

途中考えた鞭と鎌の合体技もできる・・・あ。

「けど、鞭が使えない・・・。いや待てよ。スキルに何かあるかも!」

ただでは転ばない。それが俺だ。

早速ステータスを見ると・・・

――――――――――――――――――――――――――

名前・・・キリア・スレイ

職業【■■】Lv59

ステータス

HP【3000/3000】

MP【3000/3000】

STR【2000】+3000

VIT【5000】

AGI【5000】

MND【2000】+3000

スキル

【ガード】【俊足】【堅牢】【経験値増加】【予測】【幸運】【魔力砲】【隠密】

【加速】【鞭術】【盾術】【鎌術】【弓術】【毒龍】【龍喰らい】【毒無効】【蜘蛛糸】【操糸】【蜘蛛猛毒】【強酸耐性】【付与】

【麻痺耐性】【死神】【恐怖の体現者】

【突撃捕食】【■■■■】【■■■■】

【%@#Ⅹ∞∀】

装備

頭【毒龍の兜】(融解)

体【毒龍の鎧】(大破)

右手【命断大鎌 ヘル・グリアス】

左手【無し】

足【無し】

靴【無し】

装飾品【無し】【無し】【無し】

【無し】【無し】

アイテムボックス

【毛皮】×180【肉】×180【毒龍の鱗】×100

【命断蜘蛛の魂】

――――――――――――――――――――――――――

「・・・え?」

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