第2話まあ、落ち着いてやっていこう

【無職】キリア・スレイ


俺が次に目を開けると、そこは城下町だった。


「おおー、凄いリアルだな」


視覚、嗅覚、聴覚が完璧なまでに再現されている。

まるでリアルそのものだ。

ここがルヴァン王国の首都、ルヴァンなんだろう。


「あの~、すいません」


ん、誰や?

俺が振り向いた先にいたのは、年齢は同じくらいの女子だ。栗色の髪に栗色の瞳、青い装備で身を纏った女子だ。


「もしかして・・・霧斗?」


「えっ、何で知って・・・ってまさか!?」


「当たりー、美妃だよ!!」


俺をこのゲームに誘った張本人の美妃は、日

課のようにこのゲームをやっている。


「しかし・・・やけに似合うな、その格好」


「そうでしょ、大変だったんだよ~、これゲットするの」


「まあ、明らかにレアアイテムだし」


レア度の高いアイテムだろう。かなりの時間、ゲームをやっている証拠でもある。そのせいか、成績はいつも赤点ギリギリらしい。


「ところで、霧斗はどんなステータス構成にしたの?」


「今の名前はキリア・スレイだからな。ええと、俺は防御と速度をガン上げしたんだ」


「ふーん、防御と速度を・・・ってええ!?それを上げちゃったの!?」


え、ヤバいの?


「何かまずいのか?」


「あのね、VITとAGIをガン上げっていうのは、このゲームでは完全にアウト。絶対にやっちゃいけないステータス構成なの」


実際、AGIは密室や屋内では真価を発揮できない。INTは、全体を包囲され魔法やスキルで集中放火されてしまうらしい。

え、そのくらいどうにかならない?


「とりあえず、どれくらい悪いか知らないけど、やってみるよ。じゃ」


「あ、ちょっと」


美妃が何か言いかけたが俺には聞こえなかった。




その後、街の外に出る門に着いた時に1つの事を思い出した。


「狩場がどこにあるか、聞き忘れた・・・」


どうしよう?

と、悩んでいると・・・


「何かお困りですか?」


後ろから声をかけられた。


「え?」


見ると騎士のような出で立ちをした女性がいた。


「ええと、あなたは?」


物凄くキレイな人だ。

金髪で、青い瞳の美少女。そこらへんのアイドルじゃ太刀打ちできない位の美少女だ。


「ああ、申し遅れました。私はルヴァン王国の近衛騎士団筆頭騎士のミーティア・レン・グリスです」


なんと、この人はヒュミナか。

ヒュミナとは、要はNPCの事だ。

運営曰く、人と同じ位の思考能力があるんだとか。

しかし、マジで人と同じだな。


「俺はキリア・スレイです。ここに来たのが初めてで、狩場がどこか分からなくて」


「ああ、そうでしたか。狩場は、この門を出てすぐの所に【ジールス大森林】という場所があります。そこに、モンスターがいますのでちょうど良いかと」


おお、ありがたい。


「ありがとうございます。さっそく行ってみます」


「いえいえ、困った時はお互い様ですよ。あ、そうだ!連絡先を交換しませんか?何かあったらお知らせください」


親切な人だなー、この人。

さぞかし人気なヒュミナなんだろうな。


「はい、そうしますか」


そう言って俺はミーティアさんと連絡先を交換して、街を出たのだ。








「さて、このゲーム初のバトルでもしようかな?モンスター、出て来てくださいなーー」


しばらく走り回っていると・・・


「お、モンスター見っけ」


ウサギに角が生えたモンスターが現れた。


「かなり可愛いんだけど、モンスターだから倒さないと・・・」


「キューーー」


「って、突っ込んで来たーー!?」


―――ドガ!!


「ぐ、痛・・・く無い?」


防御ガン上げのおかげで痛みは無い。


「全然痛くない。どちらかというと、マッサージを受けている感じかな」


全くダメージは無いが、倒さないと終わらないので鞭を一振りした。

鞭術のおかげでどう使えば良いか簡単に分かった。

というか体が覚えた。たぶん、リアルでもできるかも。

まあ、ウサギもまだ死なないだろう。

と思ったがしかし・・・


「キュー・・・」


ウサギには強すぎたようだ。


「ウサギーー!!」


『スキル【予測】を獲得しました』


「スキル獲得早くない?まあ、役に立つなら良いけどね」


スキル獲得が早いのは経験値増加のスキルのおかげだろう。


「武器も全部確かめないとな。まず、鎌から」


数分後、俺は自分の武器を全て試した。結果、鞭は敵を拘束し、そのまま斬殺する事が可能で、遠くのアイテムを取るのに役立つ。


「先に鎌をくくりつけると鎖鎌(鞭鎌?)になるし、大助かりだ」


これは使い方を間違えているので、良い子は真似してはいけません。


「さて、いろいろ殺しちゃったな。ごめんよ、モンスター達・・・」


そう、いろいろな実験をするにあたり、多くのモンスター達が犠牲となった。それはもう、俺を中心に半径100メートルほどが辺り一面が血の海になるぐらいに。


「特に毒龍のおかげで、かなり良いスキルがゲットできたよ」


さらに、多くのモンスターを倒した結果レベルも上がり、スキルも増えた。


――――――――――――――――――――――――――

名前・・・キリア・スレイ Lv19

ステータス

HP【180/180】

MP【180/180】

STR【100】

VIT【400】

AGI【400】

MND【100】

スキル

【鞭術】【ガード】【俊足】【堅牢】

【経験値増加】【予測】【幸運】【魔力砲】【隠密】【加速】

【盾術】【鎌術】【弓術】【毒龍】

【龍喰らい】【毒無効】【%@#Ⅹ∞∀】

装備

頭【毒龍の兜】

体【毒龍の鎧】

右手【初心者の鞭】

左手【初心者の鎌】

足【無し】

靴【無し】

装飾品【無し】【無し】【無し】【無し】 【無し】

アイテムボックス

【初心者の大盾】【初心者の長弓】【毛皮】×180【肉】×180【毒龍の鱗】×100

――――――――――――――――――――――――――


いやー、成長したね、マジで。

スキル【%@#Ⅹ∞∀】は良く分からんけど、デメリットは無いからまあ良いか。

【%@#Ⅹ∞∀】は俺が毒龍を倒した時にゲットした。


「じゃあ、あそこ行くか・・・」


そう、毒龍を倒した森の奥に洞窟があったのだ。


「たぶんダンジョンじゃないかな?」


FWOには二種類のダンジョンがある。

まず運営によって造られたオリジナルダンジョン。

これは

【モンスターが一定の感覚でポップする】

【必ずステージに合わせたモンスターがいる】

【モンスターが外に出ない】

が特徴らしい。

次にいつの間にか誕生したナチュラルダンジョン。

これはまさに自然そのもので、どんなイレギュラーがあるか分からないのが特徴らしい。

今回のは多分オリジナルだろう。


「レベルもステータスも、スキルも上がったし楽勝でしょ!!」


俺はなんとも楽観的にそう言いながら、そのダンジョンに入った。

この時の俺は知らなかった。

この迷宮は【S級ダンジョン 死神の祭壇】と呼ばれる初見殺しのダンジョンだと言う事を。

そして、このゲームにそれぞれ一体しか存在しないOBM(オンリー・ボス・モンスター)の一体である【命断蜘蛛 ヘル・グリアス】が存在する事を。

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