第13話 タンデム

ヴェスパが来て、美生みおけいはまたバイクで一緒に出かけるようになった。


だが、100ccのヴェスパと 48ccのモトムでは性能差がありすぎて、佳は美生について行くのが難しいようだった。もちろん美生は常に後ろの佳を気にしているのだが、ふとしたはずみで離れてしまう。


しばらくすると、佳は美生と2人乗りがしたいと言い出した。美生が免許を取って1年が過ぎたこともあって、2人はヴェスパでタンデムして出かけるようになった。


佳は、モトムに乗らなくなった。美生の背中につかまっている方がいいと言う。美生もタンデムしていると、後ろの佳の鼓動や温もりが伝わってくるような気がして心地良かった。モトムは美生が月に1度ほどエンジンをかけて、少し走らせる。


ヴェスパは2人乗りでもまだ余裕があったので、今までより遠くまで出かけるようになった。朝早く出かけて日が暮れる頃、戻ってくるようなツーリング。


その年の年末には、佳を静岡県の実家までヴェスパで送り届けた。途中、熱海の旅館で1泊して2人での初めての泊りがけの旅行となった。佳の実家では、佳が彼氏を連れてバイクで帰って来たと大騒ぎになったが、美生が女性であると佳が説明して誤解が解けると大歓迎された。


正月を母1人だけにするのも申し訳なかったので、美生は大晦日に東京に帰った。佳も美生に会えないのは寂しいからと、1月3日には戻ってきた。


もう、このままでいいかな、と美生が思い始めた頃、バイク屋の店主から電話があった。


「クッチョロが直りました。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る