第8話 カフェラテ

美生みおは、ブルーノ・マットソンのソファでうたた寝をしていた。


コトン、とローテーブルに何かが置かれる音に気づいて、目を開けるとしなやかな腕が首に巻きついてきた。ふわりと花の匂いがして、頬ずりされる。柔らかい頬が気持ち良い。


「美生、カフェラテ入れたよ。」甘い声がする。


「ありがとう、けい。」


美生はカフェラテの入ったマグカップを持つと、一口飲んで言った。


「おいしいよ、佳。」


佳と呼ばれた女性は、嬉しそうに微笑むと美生の隣に座って、自分のカップのカフェラテを飲み始めた。


「う〜ん、自分で言うのもなんだけど、美味しい。」


小柄で童顔、黒髪のショートヘアに黒縁のメガネ、地味だがよく見ると可愛い系。佳はそんな女性だった。


佳は大学の正門の前の高級マンションに住んでいて、美生は授業の空き時間や授業が終わった後は、大体、佳の部屋で過ごしている。土曜日や日曜日もよく来ていた。佳からは合鍵をもらっていて、いつでも好きな時に来ていいと言われている。


「クーちゃん、いいな。私も乗ってみたいな。」佳は歌うように言った。


一度、佳をクッチョロに跨らせてみたことがあったが、足が地面に届かなかった。


「今度、一緒にバイク屋さんへ行ってみる?」


美生は、自分に安らぎをもたらしてくれる唯一の存在に優しく言うのだった。

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