第7話 トレーニング

バイク屋は軽トラにクッチョロを積んでやって来た。クッチョロを下ろしながら言う。


「タイヤとチューブは新品に換えました。それ以外は特に問題ありませんでしたね。」


バイク屋は家の前で、美生にエンジンのかけ方から、走り方まで説明すると、新しい登録書類を美生に渡して帰って行った。


美生は、ガレージの中にクッチョロをしまって家に戻る。


「一体どういうことなのかしら?」


母の不機嫌な声が響いた。


「おじいちゃんの形見だから、ちょっと乗ってみたいと思って、、、」


美生はたどたどしく答えた。母は心底、嫌そうな目で美生を睨んだが、それ以上は何も言わなかった。


次の日から、美生は家の前でクッチョロに乗る練習を始めた。車は家の軽自動車に乗っているが、バイクに乗るのは久しぶりだった。エンジンはすぐかけられるようになったが、発進のクラッチミートが難しかった。それでも根気よく練習しているうちにスムーズに発進できるようになった。ギヤチェンジもできるようになり、家の周りならスムーズに走れる自信がついた。


そして、ちょっと遠くまで走らせてみようと思った。行き先は決まっている。


大学の同級生である、けいの住んでいるマンション。


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