第4話 イタリア


バイク屋は気にする風でもなく、美生みおに説明を始めた。


「この3台は、みんなイタリアの旧いバイクです。好きな人はいるので、そのうちには売れますが右から左という訳にはいかなくて。」


「みんな、うちで買っていただいた車両です。おじいさんには、随分贔屓ずいぶんひいきにしていただきました。」


そうだった。美生の祖父はバイクが好きで、子どもの頃はよく後ろに乗せてもらった。このガレージにもよく行ってた気がする。思春期になってから、祖父とはあまり口をきかなくなった。


バイク屋は、3台のバイクをガレージから出して並べた。みんな小さいバイクなのだが、さらに大・中・小と別れているような感じだった。


「お嬢さんは、免許は持っていないんですか?」唐突にバイク屋が尋ねた。


「一応小型は持ってます。祖父がバイクの免許も取るなら、自動車の免許の費用を出してくれると言ったので。」美生は答える。


祖父は美生と一緒にバイクに乗りたいと思っていたのだろうか?


残念なことに、それが叶う前に亡くなってしまった。


バイク屋は、一番小さな赤いバイクを指差して言った。


「これは、ドゥカティのクッチョロというバイクです。あなたが乗りませんか?」

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