白い敵が現れる日9
僕が佳折に話した機械への共感というのは灘見の弓狐に対して感じたものだ。
彼の弓狐の残骸は立川基地まで輸送ヘリに吊るして運ばれ、そこでトレーラに寝かせて相模原の工場まで移動した。普通なら大破した機体は機密に関わらない部分だけ残して放棄するか、そうでなければ軍の基地で分解してしまう。灘見機の場合には取り出さなければならないデータがたくさんあったのでメーカの工場に戻されることになったわけだ。上から幌を被せ、人目の気にならない夜間に作業を済ませた。僕も先導車に同乗した。
到着後に倉庫の明るい照明の下で見ると、それは十分に追及の力を持っていた。他でもなく僕が責められるのを感じた。僕の撃ったうちの一発は左の脇腹から入ってコクピットの上扉まで貫通していた。手前の弾痕は円形の穿孔になって周囲の炭素樹脂がナイロン箒みたいにささくれ、鞘針弾による穿孔特有の十字形が重なっていた。穴から奥の天井が見えた。焦げた樹脂に触ってみると予想よりも温度がなくて、うっすらと悲しかった。不気味だった。コクピットは開いたままで、覗き込むと消毒液と血液の匂いが混ざって酷い感じになっていた。やはりそこも僕の知っている弓狐のコクピットではなかった。
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