第138話 幸せな一時
3人でメイドごっこをした。
メイちゃんの「モエモエキュンですう」を受け、僕は3回程キュン死した後、凛ちゃんの「キモすぎる……いい加減にしろ!」、という怒りの突っ込みを受け残念ながらメイド遊びを終了した。
その後僕達3人はキッチンでメイドごっこで作った凛ちゃんの手作りオムライスを一緒に食べた。
そして二人はメイド服を着替えるついでに仲良く一緒にお風呂に入る。
風呂から上がると、そのまま3人でテレビを見ながらまったりとしていた。
「えっと、お兄ちゃんはおねえちゃんのかれしなんですか?」
「え!?」
「いつも一緒にいるです、このあいだもおうちにいたし、違うんですか?」
お風呂上がりで全身から子供特有の甘い香りを発しながら、ミイちゃんは僕の膝の上に座りミカンを一つ口に入れた。
僕の隣で凛ちゃんがクスクスと笑っている。
ちなみにだけど今日はミイちゃんと一緒に入っていないからね!
ミイちゃんは凛ちゃんと二人きりでお風呂に入ったんだからね!
僕は凛ちゃんに縛られ泣きながら二人を待ってたんだからね!
がっかりなんてしてないんだからね!
「えっと……と、友達、友達だからかな?」
「そうなんですか? でもだんじょのともだちはせいりつしないって言ってました」
「だ、だだだ誰が?」
「なっちが言ってました!」
「なっち?」
「はいです、うちのクラスで一番人気のなっちです」
「へーー」
「でもなっちはちょっとこわいです」
「へーー……」
こんな頃から既にクラスカーストが存在する。
僕はミイちゃんの頭を撫でた。
「どう怖いの?」
「うーーん、おとなしいこにちょっかい出すとおとこのこでもようしゃしないです!」
「へーー!」
「でもおとこのこはおんなこと友達になりたいからちょっかい出すってみっちょんが言うです、そしたらなっちは、だんじょに友達はせいりつしないって言いました」
「へーー」
「ぷ、クスクス、あはははは」
隣で黙って聞いていた凛ちゃんが遂に堪えきれなく成り立ち大きな声で笑い出す。
「な、なんだよ」
「いーーえ別に~~」
髪をとかしながら凛ちゃんは澄ました顔で僕達から目を反らす。
「はい、お兄ちゃん剥けました、あーーん」
「あ、うん、あーーん」
ミイちゃんの手からミカンを食べさせて貰う。
さっきの話はどうなった? とばかりにミイちゃんはまたテレビに夢中なって
いる。
子供ってこうなの? 突然話始めて突然興味を失う。
まあでもその辺を(僕と凛ちゃんの関係を)はっきりさせない事に僕は少しホッとした。
それにしてもなんだろうかこの幸福感は……自分のお腹に伝わるミイちゃんの暖かい体温、そして二人から香るシャンプーの香り……なんだかこれが家族団欒って言うのだろうか? そんな暖かさを感じる。
もし、もしもお母さんが生きていたら、父さんの仕事が忙しくなければ……こんな感じになったのかな? って想像してしまう。
僕も凛ちゃんも家族に恵まれなかった……、いや僕と比べるのは凛ちゃんに申し訳ない。
凛ちゃんに比べれば僕は恵まれている。
今僕には義母さんも父さんも居る。そして義妹も……。
一人きりで暮らす凛ちゃんとは比べ物にならない。
ずっと一人でいじけていた僕と一緒になんてされたくないだろう。
だけど、やっぱり僕と凛ちゃんはどこか似ている気がする。
そんな事を考えながら窓の外をふと見ると、外はすっかり暗くなっていた
「あ、もうこんな時間だ!」
「「え!?」」
二人の声が揃った。
「お兄ちゃん帰っちゃうんですか?」
「え、あ、うん」
「いやです! 今日も一緒に寝てください!」
「ご、ごめんね」
今日は帰らなければ……さすがに現状凛ちゃんの家に泊まるのは……家には泉と愛真が待っているし……明日は泉の教育の番だし。
「いやですう」
ミイちゃんは振り返ると僕の首に抱きついてくる。
「ほら、ミイ困らせちゃ駄目でしょ?」
凛ちゃんはミイちゃんを後ろから抱き上げると、自分の胸に引き寄せた。
ミイちゃんが凛ちゃんにしがみつくと、凛ちゃんの身体が一瞬震えた。
でも、それでも凛ちゃんはミイちゃんを離さずしっかりと抱き締めた。
「だ、大丈夫?」
僕がそう言うと凛ちゃんは少し間を置き確かめる様にミイちゃんの身体を頭を擦った。
そして僕に向かってニッコリと微笑む。
「うん……真君のおかげでね」
「……そか」
「…………そ、そうよ、真君とミイを一緒に寝かせたり、お風呂に入ったりしたら、ミイの貞操の危機でしょ!?」
「え! ええええ?!」
「だから……大丈夫、今日はミイと二人で……ね?」
凛ちゃんはミイちゃんの頭を撫でながら僕にそう言った。
「……うん」
なんかその姿に僕は胸が熱くなる。
なんだかんだ言ってやはり二人は姉妹なのだ。
兄妹、兄弟、姉妹……その関係は一生涯続く。
仲違いする兄弟達も勿論いるだろう、それでも変わる事の無い関係。
そう思った時、僕は泉の事が頭に浮かんだ。
変えられない関係……泉はそれを求めていた。
一生涯続く関係を……泉は恐らく求めていたのだろう。
僕とのそんな関係を……泉は……。
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