第133話 話し合いの結果
部屋に戻った僕はそのままベットに潜り込み布団を被った。
ブルブルと震える身体は寒さなのか怖さなのかわからない。
扉に耳を当てれば微かに聞こえるのだろうけど、この間のお風呂の事もあって、それは出来なかった。
一体三人は何を話しているのだろうか?
これが漫画や小説の世界で、三人称のや一人称視点が切り替わって、それが読めれば良いんだけど、残念ながらここはそんな世界ではない……ないんです。
皆の心が読めれば……一人称視点が変えられる物語だったら……。
おっと、なんか初期プロットをミスった作家みたいな気持ちになってしまった。
でも、改めて考えてみれば、僕があんな勘違いするなんて、今まで絶対になかった。
昔の僕なら告白なんてされたら間違いなく虐めだって思っていただろう。
もしくはドッキリ? もしくは宗教や英会話教材の勧誘? って思っていただろう。
そんな僕がはっきり告白されたわけでも無いのに……誰と付き合えば良いのか? ど、の、こ、に、しようかなあ~~なんて事を考え………………うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ。
恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしいいいいい。
また思い出してしまった……恥ずかしいいいいい!!!
「…………はあ、はあ、はあ……」
あまりの恥ずかしさに体温が急上昇してきた……死にたく、もとい、暑くなってきた僕はのそりとベットから起き上がる。
「とりあえず……落ち着こう……」
あの三人が僕に対して好意を持って接してくれているのは間違い無いんだ。
普通の男子なら当然勘違いする……のか?
「わからない……普通が僕にはわからない……」
そうなのだ……僕は今まで女子どころか、男子とも殆ど接点はない。
そんな僕があんな態度で接して貰ったら勘違いするに決まっている。
普通の男子ならあれくらいで勘違いしないのかも知れないが……。
それにしても……さっきも言ったように以前の僕なら絶対に勘違いしなかった筈。
なのに僕は勘違いしてしまった。
これはどういう事なのか……。
三人の話し合いが終わるまで考察してみる。
やはり一番は泉が僕の妹になった事が大きい……あの泉が
僕の憧れの旧姓薬師丸泉が、大好き立った泉が僕の家族になった。
泉が常に一緒にいる……クラスカースト頂点の泉と普通に会話が出来るようになって、僕も少しはカースト順位が上がったようなそんな気になったのかも知れない……まあ、それも勘違いなんだろうけど……。
そして次に凛ちゃんっていう友達が出来た事だ。
泉と兄妹になって他人と、女の子と話せるようになったのが、凛ちゃんと友達になれた最大の要因だろう……決して凛ちゃんがミカンちゃんって事を隠している弱味につけこんだわけではない……多分……。
まあ、それにしたって昔の僕が人の弱味につけこむなんて事は出来なかっただろう……結果オーライだね……。
そして僕の最大のトラウマだった、僕が再び自分の殻に閉じ籠ってしまった最大の原因だった愛真が帰ってきた事もかなりの要因だ。
僕はのそのそとベッドから這い出ると、スマホを開き自撮りモードで自分の顔を目を見た。
「……いつからだろう」
僕はいつからこんな目になっていたんだろうか? あの死んだような目……何も見ていない目、いや見えては、見てはいた。
僕は見えない振りをしていたのだ。
周りの人間は全員同じ顔に、同じ姿に見えていた。
顔の無い世界……周囲の顔は、僕と僕以外の二種類に見えていた。
その灰色で顔の無い世界にある日突然色が付いた、ある日灰色の世界に真っ白な色が……泉が着ていた中学の制服の色……多分あれから僕は変わった、変わり始めたのだろう。
これからも……ゆっくりと変わっていく……色んな事が……。
「真ちゃ~~ん、降りてきてえぇ~~」
既に一時間余りの時間が過ぎていた。
一体何を話し合ったのか? 僕は恐る恐る階段を降り、三人の待つリビングに入る。
リビングには、たった一時間でここまでかってくらいに変わり果て、疲れ果てた姿の三人がいた。
三人は皆同様に、ソファーの背もたれに寄っ掛かり、ぐったりとしている。
「こんなになるまで何を……って僕の事だよね……」
なんか本当……ごめんなさい。
「……お兄様」
何か呆れたような表情をした泉が一番始めに起き上がり、この状態から復帰する。
「つ、疲れた……」
次に学校にメイド喫茶にと、普段パワフルに活動している凛ちゃんが、顔をしかめながら泉に続いてゆっくりと身体を起こした。
「はああぁ……この一時間で真ちゃんの事を知ろうって皆で色々話し合ったの……そうしたら相当だってわかってしまって……」
ため息を吐きながら愛真だけはそのままの姿勢で僕を薄目で見ながらそう言った。
「ええええ! ぼ、僕ってそんななの?!」
「……とりあえずお兄様、お友達を作ると言って凛さんと友達になったのは良いとして、そのやり方は私……妹として容認出来ません!」
「……あ!」
「あ! じゃないでしょ? 脅すって何? 真ちゃん最低~~」
大きな胸のせいで起き上がるのが遅かったのか、愛真がようやく身体を起こす。
「いや、そ、それは」
そう言われ……僕は凛ちゃんを睨む、何で言っちゃうんだって! 僕は秘密にしていたのにって、でも凛ちゃんは僕のそんなメッセージを受けとる事なく、プイッっと横を向く。
「それが駄目だって言ってるんです! お兄様!」
「ごごご、ごめんなさい!?」
泉にまた怒られた!? こ、怖いよおおぉ……。
「まあ、他にも色々と情報交換したら、まあ、出てくる出てくる」
「ぼ、僕……そんなに?!」
「愛真さんの胸にご執心なんだってねえ」
プイッと横を向いた凛ちゃんがじとっした目で僕を見ながら言った。
「ああああ、愛真!!」
「えーー私はまだいいよ、泉さんはお尻迄叩かれたって」
「たたたた、叩いて無い! 無いよね? い、いずみいい!」
「そうでしたっけ?」
「そうだって、確か……今、
「とーーーにーーーかーーーーくーーーー! 真ちゃんが駄目人間だって事はわかったの!」
「だ、駄目……人間」
透明人間の次は駄目人間?!
「まあ……屑だよねえ……」
いつになく辛辣な凛ちゃん……ひ、酷い……。
「でも……大丈夫ですお兄様」
「い、いずみいい」
やっぱり泉は天使だった。
「大丈夫ですお兄様、私達はお兄様の事を見捨てたりしません!」
「泉いいいい」
「だから話し合った結果、私達はお兄様を芯から鍛えようって決めました!」
「……へ?」
「私達三人がお兄様を鍛え上げ、私達以外の女性から、認められる様にします」
「まあ、屑を捨てたら駄目だよねえ? 屑はちゃんとゴミ箱にね」
可愛らしい顔で何て事を……酷い凛ちゃん。
「私達以外から認められる様な存在になれば、それは私達も真ちゃんをもう一度ちゃんと見直すって事だからね」
「…………はい」
もう何も言えない……言い返せない……。
「真ちゃん!」
「お兄様」
「屑ちゃん」
「「「頑張ろうね」」」
三人はキラキラとした目で、まるでお母さんの様な目で僕を見ていた。
ああ、これってある意味僕の夢が一つ叶ったのかなあ?
どうでもいいけどとりあえず凛ちゃんの僕の呼び名だけは速攻変えて貰おう……まぢで……立ち直れない……。
【あとがき】
斜め下の結果でしたねえ(笑)
これで完全に初期プロットから離れて行ってしまった(。´Д⊂)ピエン
でも最初から読んでる人はわかると思うけど、この主人公って相当だよねえ?www
ちょっと休んでこの物語を考えている間にそんな事を思ってしまった(笑)
こんな主人公が簡単にこの三人の誰かとなんて……読者が許しても作者が許さない!(笑)
お仕置きだべえええ(O゜皿゜O)グハハ
まあ、でも、それも彼には、ご褒美になってしまうのが……悔しい(笑)
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