天使は妹か? 恋人か?
第99話 泉が迫って来るんだけど……どうすれば良いんですか?
凛ちゃんの家で寝たのに、やっぱり自分のベットじゃなかったせいか? それとも隣に凛ちゃんが居たからなのか? 勿論ミイちゃんのせいでは全く無い筈。
ふと目が覚めると、部屋の中は既に真っ暗だった。
カーテンの隙間から外灯の明かりが細く入り、うっすらと部屋を照らしている。
今の季節は日が沈むのも早い……。
ふと何時だろうと枕元のスマホを見ようとした瞬間……何やら人の気配が……ベットの脇に誰か居る様な気がしたので、寝起きで半開きの目を凝らして気配が感じた方を見ると……。
「おはようございますお兄様!」
「うわわわわわ!」
僕は慌てて飛び起きると、泉とは反対側の壁の方に後退りをした。
見た瞬間泉とわかったけど、どんなに暗くてもあの可愛い美しい顔を間違える筈はないけれど、僕は驚いてしまった。
だって僕の顔のすぐ横で、カーテンの隙間から入る明かりに照らされた泉がこっちをじっと見ていたから……いや、いくら好きな人でも……こ、こわいよ!
「どうしたのですか? お兄様」
「いや、えっと……泉こそ、そこで何をしてるの?」
「何をって……そんなの愛しい人の顔を眺めていたに決まっています」
「……決まっていますって……えっと……ずっと居たの?」
「はい!」
「どのくらい?」
「そうですねえ、夕方くらいから?」
「夕方……えっと、ちなみに今、何時」
「9時ですね」
「……は?」
ちょっと待って、確か寝たのは昼前……つまり僕は十時間以上も寝ていたって事? って言うかそれより……。
「つまり……夕方から……今までずっとそこに?」
「はい!」
「……ずっと僕を見てたの?」
「はい! 可愛いお兄様の寝顔を拝見してたらあっという間に時間が過ぎてしまいました」
泉はぽーっと赤くなった両頬を押さえながらイヤンイヤンと首を降る。
「…………」
夕方から……まあ6時だとして3時間もそこで?
僕大丈夫かな、変な寝言とか言わなかったかな? いやいや違う……そうじゃない……。
「お兄様、ご飯の用意をしたのですが、お兄様がぐっすりと眠って居たので起こすのが可哀想と思いこちらで待たせて頂きました。 直ぐに温め直して用意しますので少々お持ち下さい」
泉はそう言って僕の部屋を後にする。
何かスキップでもするかの様に、凄く嬉しそうに、凄く楽しそうに部屋を出ていく泉。
僕が泉を押し倒したショックなぞ微塵も感じていないのを見て、ほんの少し安心するが……直ぐにそれ以上の不安がのし掛かって来る。
そしてその不安は……的中する。
ご飯の準備が整ったと言われダイニングに向かうと、テーブルには泉の作った手料理が並べられていた……今日はうなぎ料理ととろろ芋……そして何故だかエナジードリンクが数種類。
「えっと……なんか……」
オヤジ臭いと言うかなんと言うか……。
いつもは僕の好きなハンバーグやらカレーやら肉料理やらが中心のメニュー、そして肉だけじゃ偏ると野菜もふんだんに用意している泉、野菜も炒め物や煮物やサラダとバリエーションも多く、サラダに至っては、ドレッシングが僕の好みに合わせた手作りで、少し苦手だった僕でも美味しく食べられる様に作ってくれていた。
しかし……今日はなんだか、父さんの晩酌と言うか……その……精力増進と言うか……。
「さあお兄様どんどん召し上がって下さいね!」
泉はそう言ってニコニコとご飯をよそう……ご飯も何か豆が入っていて……いかにも蛋白質が一杯摂れそうな……。
色々と思う所はあるが……折角作ってくれたご飯を断る事なんて出来ない、別に嫌いなメニューでもないので僕はそれを全部平らげた。
ご飯を食べ終わるとリビングでテレビを見ながら寛ぐ、いつも泉が食後のコーヒーも用意してくれている。砂糖もミルクも僕の好みに合わせて……くれているんだけど……今日はいつもよりコーヒーが濃い気がする……昼寝ちゃったし夜寝れるかなあ? 等と思いながらテレビを見ていると、いつもよりも早く泉がリビングに入ってくる。
いつもは片付けを終えてからリビングに来るのだが、今日はやけに早い……まだ5分と経っていない。
「お兄様……お隣宜しいですか?」
泉はそう言って僕が座っているソファーを指差す。
いつもはテーブルを挟んで向かい側に座るのだが……。
「あ、うん……」
「うふふふ……ありがとうございます」
泉は嬉しそうにそう言うと僕の隣に腰を下ろす……ち、近い!
僕に密着するように泉が隣に座った……そしてさっき食べていた時はエプロンをしていて気が付かなかったけど、泉は胸元が大きく開いたノースリーブのニットにミニスカート姿……勿論生足だ。
「えっと……片付けは終わったの? まだだったら僕が……」
僕は泉の胸から視線を外す為にそう言ってキッチンを見た。なんならたまには僕が片付けをしようかな? と思いながら、しかし泉は離さないとばかりに僕の腕を自分の腕と絡めた。
「行っちゃ駄目です! お兄様と二人きりの時間を増やす為にさっきお兄様がお休みの間に食器洗い機を入れて貰いました」
「……は? 買ったって事?」
「はい! でも大丈夫です!お兄様のお茶碗だけは私が心を込めて磨きますので!」
「いや……えっと」
「うふふふ、おにいさまあぁ」
そう言いながら泉は、僕の腕をさらにぎゅうぎゅうと抱き締め、胸の谷間に押し付ける。
「いや……えっと……ちょっと……」
断らなければ離れなければいけない、このままじゃ理性が持たない……。
もう僕は二度とあんな事はしないと誓った……のに……まさか泉からこうもグイグイ来るなんて……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます