第31話 お兄様は前から好きだったんですか?
自宅で夕飯を食べながら僕は今日の余韻に浸っていた。
楽しかった、本当に楽しかった。
あの後はみんなで食事をしたり買い物をしたり乗り物に乗ったりした。
今日は僕の人生での中で一番楽しい出来事だったのかも知れない。
友達皆で遊ぶのって、こんなに楽しかったんだ。
そして……良かった、僕の勘違いだった。
泉と凛ちゃん……良かった、本当に良かった……
ん? あれ? 今、僕……泉と……凛ちゃんって……あれ? 僕はどっちに対して良かったって思ってるんだ?
しかも良かったって、何が良かったんだ? あの二人が相思相愛じゃなかった事が? 泉の思い人が凛ちゃんじゃなかった事が? 凛ちゃんが泉とくっつかなかった事が?
妹であり、中学の時からの僕の思い人、泉に対して?
高校に入って初めての友達であり、僕の憧れの人ミカンちゃんこと一萬田凛ちゃんに対して?
当然……泉だよね……あれ? でも僕と泉は兄妹になったんだから……僕はもう諦めて、え? あれ?
僕はどっちに対してホッとしたんだろう? あれ?
「お兄様? どうかなされました?」
「え? な、何でもないよ!」
「でも、あまり食事が進んでいらっしゃらないので……お口に合いませんでしたか?」
今日の泉の手料理はビーフストロガノフとポテトサラダ、今日は出掛けて時間が無かったのでと謝られた……何について謝られたのか分からない程美味しい。
「ううん、いつも通りで美味しいよ! あ、でもほら、遊園地でちょっと食べ過ぎちゃったからかな?」
「そうですね……お兄様とっても楽しそうで……はしゃいでましたし……」
「うん、凄く楽しかった!」
「そ、そうですか……」
「うん! ジェットコースターに初めて乗ったけどあんなに面白いとは、それに皆と遊ぶってのも初めてで、スッゴク楽しくて…………あれ? どうしたの?」
「い、いえ……お兄様が楽しんでらっしゃたのなら……」
「え? え? 僕何か変な事言った?」
「いえ…………ただ……」
「ただ?」
「いえ……私と一緒の時よりずっと楽しそうだったので……」
「え? ああ、うん、泉と一緒の時も楽しいけど、皆と一緒に遊ぶってもっと楽しいよね、泉が友達作れって言った理由が良くわかったよ」
「いえ、あれはそういう意味では……」
なんだろう? 今日の泉は歯切れが悪いと言うか、いつもと違う……
「えっと、どうかした?」
僕がそう聞くと泉は僕を見て真剣な顔で言った。
「お、お兄様は、その……委員長……いえ、一萬田さんの事、どう思っているんですか?」
「え? みか、凛ちゃんの事?」
「凛…………」
なんだろう、やっぱり泉は凛ちゃんの事、いや、それは今日完全に否定したし、凛ちゃんもバカって……つまりこれはどういう事で聞いているんだ?
僕は考える、この間みたいな勘違いを二度としないように、今度は間違えない様に考える……泉は何が聞きたいのかを…………
「…………お兄様、お兄様は一萬田さんの事が、その……前から好きだったんですか? だから友達作れって言った時……真っ先に一萬田さんに……」
「え? ええええええええええ!」
な、何で泉は知ってるんだ? 僕が凛ちゃんのファンって事を! 僕が前からミカンちゃんの事大好きって事を!
おかしい、隠してたのに、そう言えば今日凛ちゃんメガネしてなかったから、ひょっとしてバレた?
「し、知ってたの?」
「はい、今日なんとなく……」
「そうなんだ……」
まずい、まずいよ凛ちゃん、バレちゃったよ、どうしよう……
「お兄様……あの……」
「ごめん泉! この事は皆に、特にクラスの人には言わないで欲しいんだけど!」
「え? それは別に、言いふらす事ではないですけど……本当なんですね?」
「うん……実はそうなんだ……僕もこの間気付いてびっくりしちゃって」
「お兄様も知らなかった……私が煽ったばかりに……」
「煽る? ああ、そうだね、そのお陰で僕は凛ちゃんと」
「そ、そうですか、お、おめでとうございますお兄様……妹としては喜ばないとですね……」
「あ、うん、ありがとう」
僕が憧れの凛ちゃんと友達になれたのは泉のお陰なんだ、ありがとう泉!
「いいえ……」
あれ? あまり喜んでいない? 何でだろう? 友達作れって言ったのは泉なのに……ああ、そうか皆に言わないでって頼んだからかな?
「凛ちゃんと相談して、皆に言うか決めるから、それまでだから、ね?」
「発表!」
「うん、別に悪い事じゃないし」
アイドルだよアイドル、メイドアイドルってそんなに悪い事じゃないと思うんだよね?
「そ、そうですね、私にとってはとても悪い事ですが……」
泉にとっては悪い? あーーそうか、学園のアイドルが泉から、凛ちゃんに変わってしまうからか……でも泉の地位は変わらないと思うけど……
「気にしなくても大丈夫だと思うけどな~~」
「気にならないわけ! も、もう結構です、私は妹ですからね!」
「え? う、うん」
泉は妹だけど、そもそも最初に自分から妹だって言っておいて……何で今さら、それおま言う? って感じなんだけど?
「早く食べて下さい、冷めちゃってますよ!」
「あ、うん」
なんだか怒っている?……こんな状態では残す事も出来ないので、僕は急いで食べると、泉は皿を奪い取るようにシンクに持っていき、僕に背を向けてさっさと洗い始めた。
うーーん? 何か怒ってる様な? 何でだろう? 僕はそう思うも泉の背中からにじみ出ている話しかけるなオーラのせいで、何も聞けなかった。
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