第46話 待ち伏せ

 更に俺とカナレは、地下に降りて行く。

 ここも上の階と同じように真ん中に廊下があり、両側に部屋がある。同じようにそれらの部屋を調べるが、ここはどうやら倉庫になっているようであり、食料や生活に必要な消耗品が置いてある。

 そして、また1階降りるとここは広い1つの部屋になっている。そして、そこは機械室になっており、今は停止している空調機があった。

「ご主人さま、人の息が聞こえます。1,2,3,4,5、5人です。5人の人が潜んでいます」

 カナレが念話で伝えてくる。

「バシュ」

 鈍い光が見えたと思った瞬間、俺に弾が当たるが、防御の能力で弾は弾かれて床に落ちる。


「カナレ!」

 俺が叫ぶと同時に俺とカナレは左右に飛ぶ。

 すると、俺とカナレが居た場所を目掛けて弾が飛んでくる。

「バシュ」

「バシュ」

「バシュ」

「バシュ」

「バシュ」

 5人がサイレンサー付きのピストルを持っているのだろう。5つの光が見える。

 俺とカナレはその光がした方に走って行くが、男たちは俺とカナレの方に向かってピストルを撃ってくる。

 どうやら、暗視カメラを使っているのだろう。俺は念話でカナレに指示する。

「カナレ、強い光を出す事が出来ないか」

「出来ます。合図しますので、その時は目を閉じて下さい。3,2,1,0」

 俺は0と同時に目を閉じたが、閉じた瞬間、瞼の向こうに明るく光る物を見た。

「ギャー」

「目、目が…」

「ぐぇっ」


 再び暗くなった部屋で、俺は一人の男の正面から顔を殴った。すると男はピストルを乱射し出した。

「バシュ、バシュ、バシュ」

「ギャー」

「こら、撃つな。同士討ちになるぞ」

 そう言っても、目が見えなくなったら、恐怖心しかない。手に武器があるなら、それを使ってしまうのは人間の心理だ。

「バシュ、バシュ、バシュ」

 また、一人の男が乱射し出した。俺とカナレはそれを見て、その部屋を後にして、更に1階下へ続く階段を降りて行く。

 きっと最後に残った一人は、凄惨な現場に立ち会う事になるのだろう。


 地下5階に来た。ここは地下3階までと同じように真ん中に廊下があり、その両側に部屋がある。

 その部屋も同じように調査するが、ここはどうやら研究室のようだ。試験管やらビーカーが置いてあり、中学の時の理科実験室のようだ。

 ただ、置いてある測定器なんかは中学では見た事がないようなばかりで、素人目にも高額なのが分かる。

 ここでもカナレの聴力で罠を確認するが、ここには誰もいないようだ。

「ご主人さま、ここは誰もいないようです」

 罠があるかと思えば無く、罠が無いかと思えばあるのは、心理的に良くない。

 遊園地のお化け屋敷のようにドキドキしてしまう。


 俺とカナレは、また1階階段を降りていくが、もう地下何階なのか分からない。

 地下6階、いや7階だろうか?

「カナレ、今地下何階だっけ?」

「えっと、…」

「地下6階よ」

 女神さまが答えてくれた。

「女神さま、ありがとうございます」


 地下6階も上の階と同様に何かの研究室のようだ。

「ここにも誰も居ないようですね」

「そうだな、次の階に行こうか」

 そう言った瞬間、「シュー」という音が聞こえてきた。

「な、何だ?」

 そう言ったが、だんだん意識が朦朧としてきた。

「ご主人さま」

 朦朧としたきた意識の中にカナレの声が響いた。

 カナレが俺に抱き着いてキスをして来る。そして、俺の口の中に空気を送り込んできた。

 意識がだんだん正常に戻ってくる。

 俺はカナレに抱きかかえられるようにして、部屋の外に出て、階段室に戻ってきた。

「毒ガスか?」

「いえ、炭酸ガスです。恐らく消火用の物でしょう」

 炭酸ガス消火設備だろう。停電になっているからてっきり動作しないと思っていたが、動作させる方法があったようだ。

「ご主人さま、ちょっと休みましょう」

 俺の意識もかなり回復してきたが、それでもまだ足元が振らつく。


「カナレ、さっきはありがとう。カナレのキスがなかったら危ないところだった。

 だが、カナレは大丈夫なのか?」

「ええ、私は防御の能力が強力なので大丈夫でした」

 カナレはそう言うが、カナレの声が震えているのが気になった。

「しかし、狐も手を変え、品を変えいろいろとやってくれるな」

「ええ、この先、何をやってくるのか不安です」

「だが、行かなければ」

「はい、ご主人さま」


 俺とカナレは、また1階下へ続く階段を降りて行く。

「ここは地下7階か。ここも何か仕掛けてあるかな?」

「そう、思った方がいいでしょう。私が先に行きましょう」

 カナレはそう言うと、俺の前を歩いて行く。

 カナレは地下7階に続く、扉を開けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る