第4話

「わっ。」

何か冷たい物が頬に当たり僕は学校の中庭にあるベンチから転げ落ちた。

「なにしてるの…?」

冷たい缶ジュースを持った君が冷ややかな目線を僕に送る。

「なに…も…。」

目の前にいるのは、あの日死んだ君だった。紛れもなく君だった。その笑顔。声。間違えるはずない。

「生きてる…。」

「は?なに言ってんの。頭で打ったわけ?」

「生きてる。生きてるよな?死んでないよな?」

「なにさっきから、気持ち悪いんだけど。私を勝手に殺さないでくれる?ただ飲みもの買ってくるだけで死なないから。。」

君がそう言いながら、持ってきたお弁当を食べ始めた。

「あぁ、ごめん。」

「別にーいいけど。」

時計を見るとちょうど午後1時になるところで、高校の昼休みの時間だった。

「おっまたせー。」

君の親友が君に飛びかかるような勢いで走ってきた。そうだ。高校の時はいつも一緒にいたんだ。君と君の親友と僕と僕の親友。いつも4人で固まってた。

「ごめんごめん。購買混んでてよ。」

そう言って僕の親友がやってきた。

そうそう、いつも笑ってた。楽しかった。夢みたいだ。いや、本当に夢なのかもしれない。こんな日々が戻ってくるなんて思わなかった。君がいなくなってから、みんな笑わなくなった。集まらなくなった。逆に君がいた頃が夢だったようにも感じられた。嬉しくかった。ただ、普通の君がいる日常が景色が、こんなにも良かったんだと改めて気づかせてくれた。

自然と涙が溢れそうになったけど、君達が心配するから必死に堪えて、母が作ってくれた弁当を食べた。

その日の放課後4人で一緒に帰った。

いつもの分かれ道で二手に分かれる。君と僕と。君と僕の親友同士。別れを行って、家に帰る。僕の記憶通りだと、明日君が僕に何かを言いかける。明日を絶対に失敗しないように僕は意気込んでから寝た。


目覚まし時計が鳴り響く部屋で、僕は眠気に耐えきれず二度寝をした。

再び目を覚ますと、遅刻ぎりぎりの時間だった。あー。そうだよ。この日こんな感じで二度寝して、遅刻して、生活指導の先生に見つかって怒られるんだ。君に会って、頭がいっぱいいっぱいで、忘れていた。

「やっば。」

急いで家を出て、自転車を漕ぐ。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛。」

精一杯漕いだものも虚しく生活指導の先生に捕まり、これ以上ないくらいに怒られた。。

「あーぁ。遅刻してやんの。」

教室で前の席に座る君がからかうように僕に言う。自転車で全力疾走してきた僕には言い合う体力なんてなく、うるせぇよ。と息を切らしながら、君に言った。僕ってこの時から体力なかったのかよ…。

次の時間は体育だった。男女別なので、僕は僕の親友と2人で体育館に向かう。

向かっている最中に見知らぬ先生らしき人とすれ違った。

「なぁ、あんな先生いたっけ?」

「あぁ~、青柳先生だろ。1ヶ月前くらいに新しくきたじゃんか。」

僕の質問に僕の親友は答えた。

「そうだっけ?」

「おいおい。まぁ、でもお前選択科目違うしな。無理もないか。」

5年も前のことなんて、君の自殺の件で頭がいっぱいだったし、あまり覚えてない。それに、授業を持ってもらったこともない先生を一々覚えちゃいない。君は僕の親友と同じ選択科目だったからあの先生は君の自殺の理由を知っているかもしれない。

そう、僕は思った。その先生をじっと見ていると僕の親友が僕に向かって、お前そっちの毛あんの?と聞くから、僕は何言ってんの?と若干引きつって返した。顔も多分相当引きつってたと思う。親友がすごい気まずそうに僕に謝ったからだ。そんな顔をなかなか見ないので、少し面白かった。

授業開始のチャイムがなった。僕達は慌てて体育館へと向かった。

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