第2話

小さな1匹の黒猫を見つけた。

必然と目が合った。ついてきて。と言っているように黒猫は小さくミャー。と鳴く。

その声に導かれ僕は猫についていってしまった。

お墓の周りを囲む小さな森に入っていくその猫は今まで見た黒猫よりも優雅で美しかった。

赤い首輪に金色の鈴。

まるで不思議な世界に飛び込むそんな感じがした。

森を抜けると高台のような場所があった。

ちょうど日暮れが近づいていたせいかすごく幻想的な場所だった。その場所だけは黒猫と僕以外誰もいない世界だった。


チリン。


そうまた音の鳴った方を見ると黒猫がベンチにちょこんと座っていた。

尻尾をくるっと降り、ここへおいで。とまた僕は誘われた。

僕は黒猫の隣に座る。しばらく静寂が辺りを包み込み、僕は夕日をじっと眺めていた。5分ほどたったくらいだろうか、鈴の音とともに少年のような微かな声が聞こえた。


「やあ。」


はっと僕は声のした方を見る。

そこには黒猫の姿があった。だけど僕は必然と驚かなかったのだ。その黒猫にあった時から何か不思議に感じていたのだ。だからその声が黒猫から発せられたとわかった時も何一つ疑問に思わなかったのだ。

しかし、猫が喋るのはおかしな話で、この世界では猫が喋るなんてきいたことはない。そんな僕を見透かしたようにその声はこう続けるのだ。

「この世界には、誰もが考えつかないようなことが起こることだってあるんだよ。現に君はこうして僕の声が聞こえてるじゃないか。あそこのお墓には何か悩みや不安を抱えた人が大勢来るんだ。君もそのひとりだろ。」

黒猫は楽しげに僕に話しかける。

僕はその黒猫の声は聞こえてはいるもののその黒猫に返答をしなかった。全てを見透かされているような気がしたのだ。君のことも。あの日のことも。だから怖かったのだ。黒猫が君のことを言い出すんじゃないかと思って。

ひとりと1匹しかいないその空間は、まるで時間が止まっているように錯覚するほど異様な空間だった。

僕の返事待っているのか、黒猫は喋らない。

「あいつが死んだんだ。」

僕は自然と口を開いていた。

「自殺だった。もし、あの時に戻れたら話を聞いてあげたらあいつは死ななかったかもしれない。あの日、あいつは僕に何か言おうとしたんだ。でも僕はその日友達と遊ぶ約束をしていて、話を聞いてあげなかった。きっとあれはあいつの最後のSOSだったのかもしれないのに…」

僕はあの日の後悔を愚痴のようにこぼしていた。

ふと黒猫を見ると僕はその愚痴のようにこぼしたことを後悔した。

だって、黒猫は今までにない屈託のない笑顔で楽しそうに僕を見ていたのだから。






何かがざわついた。

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