DAY3:唸れゴールデンビームブレード

「う…うわああああああ」


 朽ち果てた巨大な女の人の石像の周りに寝そべっていた巨大陰茎たちが亀頭を持ち上げ私達の方へ鈴口を向けてから、攻撃態勢に入るまでの時間は長いわけがなく、のたっとしていた巨大陰茎たちはすぐさま体中に青筋を立てて固くなった身体をそそり立たせると、ドシーンととても響く着地音を立てて石像の真ん前に降りてきた私達に向かって睾丸の部分を動かして突撃してきた。

 

『なにをしている!

 リハビリといっただろう?最古の陰茎であり、こいつらの本体真羅マラーを開放するためには、世界に散らばった中陰茎ちゅういんけいたちを減らさなければならないんだ』


「そんなこと言ったって!無理無理無理!勝てるわけないよ」


どういう仕組みになってるかわからないけど、猛り狂った巨大陰茎を見た途端逃げ出したくなって私が手足をじたばたさせてつい走り出そうとすると、ツインゴールデンボウルはくるりと巨大陰茎に背を向けて走り出した。

 文句を言いながらも私の思う通りに動いてるってことを考えると、多分自分でもある程度の移動は出来るけど、基本的な操作は私の行動とか感情が優先されるんだと思う。


―警告。

―目的地からの退避は許可されていません

―このまま目的地から離れる行為は命令違反と見なします


「上等上等!死ぬよりマシってもんよ」


―警告。

―命令違反による罰則内容の開示

―対巨大陰茎掃討作戦特別部隊規約第53条

―内容:従事者の家族の投獄・拷問


「は?なんでだよ!」


―警告。

―カウント以内に目的地へ向かわない場合目的地からの退避・命令違反と見なし罰則を実施します


「わーかったよ。

 クソ…卑怯な連中。ツインはそう思わないの?」


『私は目的を果たせればそれでいい。

 運用者の人格は問題ではない』


 機械的な音声に文句を言っても仕方ないと愚痴るものの、ツインゴールデンボウルにもつれない反応をされ、思わず舌打ちが出る。

 母がひどい目に遭うのは嫌だった。だから、やるしかない。

 私はワイヤーを勢い良く引っ張るように腕を引き寄せてファイティングポーズを取ると、さっきまでいた大きな女の石像の方へとツインゴールデンボウルと共に向かった。

 

 敵を追い払ったと思い込んでいたのか、ゆっくりと日向ぼっこを再開するかのように寝そべっていた巨大陰茎たちは私達の姿が再び見えると慌てたように亀頭を持ち上げてこちらを再び威嚇しはじめた。


「どうすればいい?」


『私の頭に一対の出っ張りがあっただろう?

 それを使うんだ』


 ツインゴールデンボウルの言う通りに、私は頭にある細長い出っ張りを取るために腕を動かす。

 腕を自分の頭上に動かし、頭上から出てきた棒のようなものを私が握ると、ツインゴールデンボウルは自分の頭の細長い出っ張りを掴んだ。

 掴んだ2本のそれを剣のように構えると、ツインゴールデンボウルも2本の鮮やかな黄色の光を放つ剣を構える。


 襲いかかってくる巨大陰茎たちの亀頭に向かって左手を薙ぐように動かすと、肉を切る手応えと共に少し焦げた切り口が露出し、切り口から赤い人と同じ色の液体を吹き出しながら数匹の亀頭たちは地面の上に横たわった。

 

―ピィィィィィィィィィィ


 仲間の異変に気付いたのか、まだ石像の足元で横たわっていた残りの巨大陰茎たちが身体を硬化させ、身体に青筋を浮かべながら亀頭を振り回して特徴的な高くて鋭い音をその鈴口から響かせ、こちらへと突進してくる。


「頼むぜツイン…」


『私達ならこんな雑魚掃除、すぐに終わるさ。

 言っただろう?こんなものはリハビリだと』

 

 単調な動きの体当たりを躱して、右手の剣を振り下ろし一匹の巨大陰茎の亀頭を切り落とし、そのまま回転をして左手を捻ると体当たりをしようとしていたもう一匹の巨大陰茎の身体の真ん中を竿部分を切断する。

 右に影が見えたので右腕を向けて棒についているトリガーを引くと予想していたとおり、鈍い音と共にツインゴールデンボウルの手の甲からなにか発射されて巨大陰茎の身体に大きな穴がいくつも開き、離れた場所にいた巨大陰茎が赤い体液を流しながら動かなくなるのが見えた。


 こんなもの操れるわけ無いと思っていたけれど、面白いくらいどうすればいいのかわかる。

 まるで昔から知っている自分の体みたい。

 踊るように跳ねて、回って振り回して…踵についているジェットを起動した移動は人より遥かに大きいこんな見た目だけど、人よりも巨大陰茎よりもずっと速く動ける。


『勘は戻ってきたみたいだな。どうだ?私の身体は自分の体みたいだろう?』


「わかんない!けど…これなら世界中の巨大陰茎の体液で地面を真っ赤に染めるのも簡単な気がしてきた」


『まずはそれでいい。それでこそ私の知っているだ』


 夥しい数だった巨大陰茎たちも目視で数えられる程度の数になってきた。

 これであの偉そうなヒゲモジャにも大きな顔ができる気がする。

 

 身体を折り曲げてその反動で高く飛んできた巨大陰茎を手に持っていたゴールデンビームブレードで串刺しにして地面に叩きつけ、呑気なことを考えていると、私の足元が大きく揺れた…気がした。

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