第73話 虚無

 何もないことを知る。

 心を遠くへ飛ばして他人事のように自分の今を見る。


 単純作業に従事していると、昔の事を思い出す。

 彼女とカニ獲りに行って…それが楽しかったと言っていたこと…

 自分が裏切ってしまったくせに、今は、彼女の事を想い涙が溢れる。


 仕事中に涙が溢れる。


 罪には罰が宛がわれる。


 どれほど心を遠くに飛ばしても…罰からは逃げられない。


 あのまま一緒に暮らしていたら…幸せだったのだろうか…

 後悔しか感じられない、それが僕の人生なのだろうか…

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