第67話 飛行機の夢

 その飛行機は飛ばなかった。

 僕は、飛行機を降りた。

 窓から見ていた景色は全て作り物で、僕は、飛行機が飛んでいると思っていた。


 足元に散らばる模型のような家を踏みつけて、僕は飛行機から離れる。

 僕に続いて、何人かは飛行機を降り、残りはそのまま機内に残っている。

(まだ、飛んでいると信じているのだろう)


 クシャッ…クシャッと踏みつけられて潰れる街並みは、まるで怪獣映画のセットのようであった。

 ひどくチープな作り物だと思った。


 窓から見ているときには気付かなかった…

 降りて見ないと解らない。


 僕は、飛んでいると思っていたのに…

 飛行機は丘の上に置いてあるだけ…

 今にも折れそうな翼、古めかしいプロペラ機

 あの中に何人いたのだろう?


 僕は飛んでなどいなかった。

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