第62話 その声が

「あのタバコください」

 電話の向こうから彼女の声…

 さよならを告げた風俗嬢の声…

「はい」

 ホテルの清掃員として働く僕、風俗嬢としてソコに呼ばれる彼女…

「あの部屋、寿司取るし、花束置いてあるし凄いですよね、風俗嬢になんて金使って媚びたってねぇ」

「そうだね…」

(彼女は寿司は食べないし、花束なんて欲しがらない、どうせ置いてくか捨てるか…)

 僕なら…

 彼女の誕生日のお祝いのつもりなんだろう…

(バーカ…何にも知らないくせに…彼女のことなんて…オマエ達なんかが…)


 長時間呼ばれた後に、監視カメラに彼女が映る…

 髪を短くしたんだね…


 とても綺麗だよ…もう僕が見ることはないけれど…


 彼女の声が耳に残る…染み入るとは良く言ったものだ。

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