第16話 渇き

 喉が渇く

 水を飲んでも…飲んでも…

 派遣なんて、契約社員の鬱憤の捌け口でしかない。

 立場上、理不尽な叱責に「はい、すいません」しか言えない。


 それで構わない。


 ただ、言葉を飲みこんだ分

 あるいは心を殺した分


 喉が渇く

 水を飲んでも…飲んでも…


 癒されない渇き

 きっと喉なんて渇いていない


 この渇きは?


 怒り

 絶望

 渇望


 もう自分でも感情が解らなくなっている。

 僕は何を感じている?

 何も感じないフリをして自分を誤魔化している?


 許されるなら…彼女に逢いたい。


 抜け落ちた足の爪、その痛みは誰のせい?

 僕は僕でいたくない。


 誰でもない誰かになりたい。

 過去はいらない。

 未来も…

 今も…

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