グラフィティ〈最後の一葉〉を巡る狂騒
緯糸ひつじ
ジョン・H・ワトソン博士の回顧録、その翻刻。
三四五九マイルは遠すぎる
一九〇七年のことだ。
サウスプトンからニューヨークへ。
大西洋を渡る。
私は、
オー・ヘンリーの短編集〈手入れの良いランプ〉だ。簡潔かつ捻りの利いた一編一編に唸らされ、無駄なく哀歌を伝える手腕に嫉妬する。どうにか私自身の文章に活かせないだろうか。
シャーロック・ホームズも引退して、探偵業から離れた今では、事件を記録することは無くなってしまった。だが、一度習慣にしてしまうと文章を書くことへの気持ちはなかなか薄れない。
今回は、ぽっかりとできた余暇に、自分を主役に据え、記録を綴ろうと思う。
目覚ましい発展を遂げ、世界一の大都市になるであろうニューヨーク、マンハッタン。その場所をこの瞳で見てみたい。つい先日、そんな衝動が駆け巡った。私は外套を着て、旅行鞄を持ち 外へ出た。
アフガニスタンで野営生活を経験したせいか、旅行の準備だけは手際よく出来る。
どこを観光するのが、お奨めだろうか。
白熱灯に照らされ昼夜明るいタイムズスクエアか。
それとも、世界一高い建築がそびえるパーク・ロウか。
ガイドブックを開けば、そんなところだろう。
しかし、私には一つだけ、絶対に観たいモノがあった。
──傑作の壁画〈最後の一葉〉。
向かうはボヘミアンの首都、グリニッジ・ヴィレッジ。オー・ヘンリーの短編〈最後の一葉〉の舞台であり、壁画〈最後の一葉〉が鑑賞できる唯一の場所だ。
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