第3話
流行を知らないといけないので、時間のある時はネットサーフィンをする。
東北のさくら祭りや夏祭りについて執筆したいけれども、今年の行事を満喫してからコラムを書くと、雑誌の七月号にさくら祭りの記事が載ってしまったりする。
私は去年の記憶を頼りに季節の祭りを書く事もある。
これから季節は夏になる。初秋の記事を、考える。
会社では事務仕事をしている。
新商品の量産前の段階で発生するトラブル対応を担当している。設計部と製造部の板挟み状態になる。
よく遊ぶ友達は、市内に住んでいる麻里江ちゃんだ。麻里江ちゃんは、占いが出来る。未来が見えてしまう。本当に当たるので、怖くて自分の未来は聞かないようにしている。
○●
九月になり、冷暖房のいらない過ごしやすい時季になった。
編集部から、ラジオならどうか? と話が来た。
私の書いているコラムは変わらず人気で、作者の素顔が明かされない謎が更に世間の興味を引いているようだった。
テレビ局から時々インタビューのオファーが来ていたようだが、顔を出す気は一切無かったので全てお断りしていた。
ラジオか……。声と話し方で私だと気づかれる確率も低いだろうから、私はラジオ出演に承諾した。
それに、ちょっと好きなお笑い芸人のラジオ番組だったのだ。心の中で、ジャンプしたい程喜んだ。
収録は東京だった。日程は、私のスケジュールに合わせてくれた。
東京に着いてそのまま編集部に行き、夕方にラジオ局に行った。
楽屋というより、待合室のような所に数分待機しただけですぐに呼ばれた。
待合室で出されたお茶を、一気に飲み干した。
収録現場は、テレビで見た事のあるようなセットだった。
パーソナリティのお笑い芸人がいた。
軽く挨拶をして、すぐに本番だった。録音なので幾分気持ちが楽だった。
本番で初対面なのかと思ったら、少し気が抜けた。
お互い「初めまして」などと云って番組がスタートする。こういう感じなのか。
収録はスムーズに進んだ。事前にリスナーから募集していた私への質問が主な話題だった。
質問の中で一番多かったのが「青山秋さんは、どういうお顔をしているのですか」だった。青山秋は、私のペンネームだ。東北の県の頭文字を使った。
パーソナリティのお笑い芸人が「僕が青山さんを見た印象を、そのまま喋ります」と云っていた。
さすが雪国の人、色白ですとか、上手い事を云っていた。
歌手の○○さんに、ちょっと似ていると云われたのが嬉しかった。
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