第2話
連載しているファッション誌は、OLや大人女子を対象とした雑誌だ。「そろそろ年齢に見合った格好をしようかな」と思い始める二十代後半からの女性読者が多い。毎月有名な女優が表紙を飾る。
自分が執筆している作品が載っている以上、雑誌全体から見たバランスも気にする為に、毎月一通り目を通している。
私の私服とはあんまり近くはないが、ちょっと憧れている。
ふんわりしたスカートや、襟の形が綺麗なブラウスは華やかだ。女性に生まれたからには最大限魅力をアピールしようとする気概が感じられる。
私が気にするファッション要素は、明るい色を着るようにするという事。【色】だけでも思い切り着る。
本当はファッション誌に載っているような女子力高めの服を着てみたいけれども、何故だか躊躇してしまう。
恐らく理由はこうだ。
実家に住んでいた時に、何をしていても親にいちいち文句を云われる生活を送っていたので、トラウマのようになっているのだろう。多少派手な服を着たら何を云われるか解らない。
文句を浴びる事が普通になってしまった。何も云われないと、本当に? このあと倍で嫌な事を云われる? などと思うようになってしまった。いわゆる毒親というやつだ。
実家に住んでいた時は、何をしても心から愉しめなかった。
夜遊びをして帰りが遅くなると文句を云われ、音楽を聴いているとうるさいと云われる。親の視界に入った途端、何をしていても文句を云われる。
居間にいると【何か云われる】という恐怖心と緊張感から、私は自分の部屋に閉じこもるようになった。
私は、何をしていても、誰かの目を気にするようになってしまった。
誰かというか、親の目を。常に自信が無い。
○
一人暮らしをして少しマシになったとは思うけれども、長年浴びせられてきた呪文が消える事は無い。私はまだ呪縛されている。
一人暮らしを始めた当初は家事に追われて考える時間が無かったけれども、近頃は余裕が出てきた。自分の事を考える余裕が。
お笑いや音楽が好きになった。これらの事を想っている時、自分が確立する。
ファッション誌の影響か、コレクションなんかも気にするようになった。美術館にも行くようになった。こうしてオシャレや芸術も、生きる上で糧になっている。
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