第23転 買い物の1日
「おはようお母さん」
「おはようルル 今日は何時もより早いわね 何かあるの?」
「今日はウィルフと買い物予定なんだ~」
「たしかエルフの子よね 良かったら今度お母さんにも紹介してね」
「うん ウィルフが時間ある時連れてくるね」
「楽しみにしてるわ さっ朝御飯にしましょう」
「はーい」
強火で煮込んだ野菜スープに隠し味で赤目鳥のツメで目が覚めるピリ辛感を出したスープにパンスティック。水分も忘れずに魔ネラルウォーター。
スープにパンを付けてひょいひょいと口に運び辛さが蓄積してきた頃に水をゴクゴクと飲む。
「うん いい食べっぷりね」
「えへへ 美味しいもん」
「帰りは遅くなる?」
「どうだろう ウィルフはハッキリとした性格だから多分悩まずに即断即決しそう」
「それじゃあ早く帰宅するかもしれないなら一応ウィルフちゃんの分も作っておこうかしら 何が好みなのかしらね わかる?」
「うーん 聞いたことはないけど この前はお肉食べてて私の麺にも興味示してたし好き嫌い余り無さそうな感じかも」
「そう わかったわ」
ソニアは食事を取りながら既に晩御飯の献立を考えているようだ。
「じゃあ支度して行ってくるね」
「気をつけてね 楽しんでらっしゃい」
「はーい」
ルルンは部屋に戻りお気に入りの白と黒色のワンピースを着ると待ち合わせしている通学路へと急いだ。
「時間より大分早いわねルルン」
「あれ ウィルフこそ私より先に来てるってどのくらい前に来てたの?」
ウィルフは実は買い物をとても楽しみにしていた。いつも一人で研究分析をする日々にルルンと過ごす日々がとても新鮮かつ心地よかったのだ。
「さーて行っちゃいましょう~」
「うんうん何から見に行こっか」
二人は目的を定めずとりあえず大型魔道具店へと足を運んだ。移動はクル家に貸してもらった魔馬車で快適に。
「うわっこれなんてなんに使うんだろう」
「あぁそれは簡単に言うと武器の鞘などに取り付けるホルダーだな その鉤爪を引っ掻けてだなぁ」
「これはこれは」
「それは天井などにいる虫を潰さずに捕獲するスライムを撃ち込む機械で」
「これは~」
「それは広範囲に自分の魔力をばらまくシャワーだね但し攻撃性とかは皆無だから子供の玩具ね」
二人の会話が途切れることなく弾んでいく。説明の件もかなり割合を占めたが。
「わぁ~これなんてウィルフに似合いそう」
短めの丈で薄い緑色にスカート部分には沢山の星が描かれているワンピースだった。
「そうか?随分と子供っぽいような気もするが着るだけ着てみようかな」
笑顔で試着室からひょこりと半分身体を出し
「どうだルルン 私は少し子供っぽいと重ねて思ったんだけども」
「えーそんなことないよ本当に可愛いよ」
ウィルフは耳を真っ赤にして
「まぁたまには自分以外の感性を取り入れることも重要だからな」
「じゃーん これウィルフに着てほしい服集めて来ちゃった」
ウィルフは山盛りに積まれた商品を見て
「これ全部……か?」
満面の笑顔で頷くルルンに断りきれず次々と試着をこなしていく。だが着替えど着替えど終わらない試着についには耐えかねて
「ル……ルルンこの辺にしとこう」
「えーこれもいいしこれなんかもいいのになぁー」
「私は最初に選んでくれたワンピースに決めたわ」
「うん 本当に可愛くて素敵だよ」
見えない耳を真っ赤にして会計に向かいながらブツブツと
「まぁ私位になると結局なに着ても似合ってしまうんだな」
バインッ
ドサッ
「キャッ」
ウィルフが商品を放さずに尻餅をついた。
「あーら お嬢ちゃんしっかり前を向いて歩かないとだめよー」
ウィルフに手を差しのべながら言った。
綺麗な赤色の髪が腰までさらりと流れ、大きく空いた胸元が主張しすぎてそちらにばかり目を奪われるが実に上品な立ち振舞いであった。
ウィルフは差し伸べられた手を横に振り
「厚意には感謝する だが良く見て発言してほしいものだわね だれがお嬢ちゃんですって?」
「ごめんなさいね背伸びしたい年頃だものねお姉さんが悪かったわ」
ピキピキ ウィルフは思わず魔法を発動させたい衝動に駆られたがルルンが割って入って
「すいません次から気を付けます」
「ふふっ いいのよお互い様だから気にしないでね それではごきげんよう」
そう言い切ると売り場から去っていった。
「なーにがごきげんようだ こっちは楽しい気持ちに水どころか熱湯かけられた気分だわ」
「まぁまぁウィルフ落ち着いて会計済ませてもう行こう」
ルルンの言葉と表情に冷静さを取り戻したウィルフは足早に会計に向かった。最も魔星カードを出した後でお決まりの確認が入ったので多少の時間はかかった。
「ところでルルンさっきの女の属性コピーは可能か?」
「うん多分平気だと思うよ」
「どうしたの?」
「いやルルンは見ただけで相手の属性やら能力果ては見た目までコピー出来るのだから戦闘に置いても恋愛に置いても恐ろしい能力だと感心してね」
ルルンは少し考えこんでから
「戦いはそれで良いのかなって思うんだけどね 恋愛はどうなのかなって……私は私何だし誰かを真似て好きになってもらっても嬉しいのかなって……」
ウィルフは少しうつむき目を閉じてから言葉を選んで
「個人の考え方は其々だからね 小さい頃憧れたアイドルや今尚輝くその道のプロ達を見て可愛くなりたいと化粧したり服装を変えてみたりと女の子は皆が努力するんじゃないかな」
「ウィルフが言ってくれてること私にも分かるよ でもね私の能力は努力って言えないよね……」
「私からするとねルルン 出来るのにやらないってのは出来ないことを放置しているのと同じ位いけないことだと思うの 皆が同じなんて訳ないから其々が自分に出来ることを自分なりに探していくと思うの ルルンの変換はもうルルンの個性であってなんら恥じることはないわよ雰囲気や属性が変わってもルルンってことは変わらないんだもの」
ルルンはそれを聞いて胸の霧が晴れたかののような清々しさを感じた。
「ありがとうウィルフ 何だろうクル家の公募が出されたときはショックと動揺しかなかったけどこうしてウィルフに会えたのも公募のお陰かと思うととても穏やかな気持ちになれるの」
「ははっ いいんだぞ何時でもお姉さんと呼んで私の胸に飛び込んで」
「あはは 流石にそれはないかなぁ~」
「な なにを~」
二人の笑い声が周囲の人々の歩みを一瞬止める。そして笑顔で話してる二人を見て又静かに歩き出して行く。
「そうだお母さんがねウィルフに会いたいってお家に呼んでねって」
「私で良ければご挨拶に伺うとしようか 娘さんを下さいと」
「ちょっと何それ まるでバンプみたい」
「あはは 全くだなこんな冗談はバンプに任せておこう」
二人は顔を合わせて同時に
「帰ろう」「帰ろっか」
とても温かい1日になった二人。口には出さ無かったがお互いが互いをより一層好きになった日であった。
ルルンの転属物語 兄尊<アニソン> @secret3743
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ルルンの転属物語の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます