第17転 親友とミルミル

ウィルフとルルンが仕事をこなしている間にジンユは一人でケイメンに会いに来ていた。


「しかしお見合いだと言うのに流れ作業感が凄いな」


「ジンユがそう感じるならきっとそうなんだろうな」


こんなやり取りを庭樹苑でしている二人。円卓に座りケイメンに魔力変換したときのコツや操作のイメージを聞いていた。

その間にジスより説明を受けて幾人か円卓まで足を運ぶが皆口々にまた伺いますと挨拶をバンプとジスにしては帰っていった。


「いつからお見合いってのはこんな簡単な面会わせだけになったんだぃ それにケイメンは瞑想とは言ってるけど目を閉じてるだけで普通に俺と会話してるし」


「ははっ いつぞやの9時間瞑想で帰っていった婦人達が魔通信サイトにでも上げたのであろうよ 庭園でのお見合いには気を付けるべしとでもな」


ジンユは笑いながら話すケイメンから悪意や軽視が無いのを感じていたから皮肉にも聞こえるような言い回しが出来た。


「そりゃあんた どこの世界にお互いを知るために会う予定を合わせて ようやく会えたかと思ったら9時間瞑想してるのでその様子をご覧くださいって有り得ないでしょ」


突っ込み気味に笑いながら言うジンユ。


「俺はわがままなんだろうな 自分の生活を曲げてまで女性と楽しい時間を作りたいとは思えないんだ」


「それはそうなんじゃないかな そのうち気の合う人が現れて恋に落ちたらそこからは魔馬車より速い勢いで結婚しちゃうんじゃないのかな」


ケイメンはジンユの言葉を聞く度に考えさせられる部分を感じていた。


「ジンユそもそも恋に落ちると言うがそれはどういうことなんだ 落ちると言うのだから這い上がる恋や登っていく恋もあるのか?」


「いやいやケイメンそれは表現の問題だと俺は思うぞ 落ちるってのはどちらかと言うとマイナスイメージ寄りだと思うのに恋するってことは素晴らしいイメージに満ち溢れている まぁケイメンがもし結婚したいと思える人が現れたならそれは恋に落ちるではなくて恋をした なのかもしれないな 家を省みずその女性とならばクル家さえどうなってもいいとまで思ったなら恋に落ちたで正しいと俺は思うんだが」


ケイメンはジンユの説明を受けて概ね理解出来たと自分で思った。それと同時に自分にとって何が大切なのかと優先順位が入れ替わることなく強固に成っていくのを認識した。


「それでジンユは恋に落ちたことはあるのか?」


「実は俺も良く解らないんだ 本当はいつも恋に落ちてるって軽口叩き込みたかったんだけどケイメンは突っ込んでくれないだろうからさ 本音で言ってしまったぜ」


ケイメンはそれを聞いて微笑む。ジンユはそんなケイメンにルルンとは最近会ってるのかと聞こうとした時に


「ケイメン 全ての水やり終わりましたわ」


「ありがとうミル座ってお茶にしよう」


「あら まだお見合い最中では?」


「構わないよ 3人4人で会っても解らないのに二人っきりで会って解る訳がないさ」


その言動にジンユとミルミルは目を合わせて笑いだした。


「ん 俺が変なこと言ったか?」


「いえ実にケイメンらしいと改めて思い直したところですわ」


ジンユはこりゃまだまだ先は長そうだなと思いながら二人を見て


「ところでミルはいつもここに居るように見えるんだけど気のせいかな?たまたま俺が来るときに居るのかな」


「こちらの庭樹苑のお世話をさせて頂いておりますの 初めてここに来たときに大木が水分不足だったので少量の魔力を込めて給水したのですが其れをみた執事さんが紹介してくださりまして」


「そうだったんだ 道理で良く見かけるなと思ったよ」


ケイメンが話しの区切りを見てバンプに


「ジンユは明日は用事あるか?無いようならちょっと付き合わないか?」


「ん 特に何もないけどもどこに?」


「庭にもう少し多くの種を増やしたく思ってさ谷の方へ行ってみたいと思うんだ モンスターも出るし適度な特訓になるぞ」


「え 大丈夫なのか?引率も無しに危なくないか?」


「クル家執事で戦闘を得意とする者を2名連れていくし ミルも同行してくれるそうだ」


「お それなら安心安心…ってミルも?」


それを聞いたミルはニコリと笑顔で


「お怪我なされましても私が回復させますのでご安心を 例え砂漠でも華麗な水術を披露するつもりですわ」


いや砂漠じゃなくて谷だからね むしろ水あまってんじゃね?と心の中で突っ込むジンユだった。


「そー言うことだ 決まりだな」


ケイメンがまとめる。ジンユはまだ俺行くって行ってないよね?完全に行く流れじゃん?ケイメンって何て言うかそー言う所あるよね?勿論心の中で呟いた。


「決まりですわね」


「決められましたよっと」


待ち合わせを翌朝に決めてジンユは執事に連れられてその場から帰ることにした。去り際のすれ違い様にお見合い参加者数名とすれ違ったがジンユの頭の中は魔力変換のイメージで一杯だったので然程興味を引かれることは無かった。


「よかったのケイメン?本当は森深く入るおつもりだったのでしょう?」


「そのつもりだったがジンユにはまだ早いだろうし谷での経験が何かしらのきっかけになってくれればと思ってな」


ミルミルは納得したと同時にその様な気遣いは出来るのねと考え、一人うんうんと頷いた。

その後数名の参加者と軽く会話しながら食事を取ったところでケイメンの一日が終わった。




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